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91. 薩摩を絶対に許さない男

 

「糞ッ!だったら、絶対に避けろ!

 示現流の初撃は、絶対に貰っちゃならねーんだ!」


 幕末最強の人斬り集団であった、新選組の局長、近藤勇も、部下に『薩摩の初太刀は必ず外せ』と言ったと伝えられている。


 それ程、薩摩示現流の初撃の破壊力は、ハンパないのだ。


 塩太郎自身も蛤御門の変で、何人もの薩摩っぽと戦ったが、その初撃は、本当に厄介だったのだ。奴らは、一撃必殺、捨て身の覚悟で、初撃を振り落としてくる。避けられれば良いのだが、数人に囲まれてしまったら、仕方が無く受け止めなければならない事もある。

 その重さと来たら、地面に足が埋まる程。多分、塩太郎が無意識に闘気を使ってなければ、受けた刀ごと、頭が叩き割られていたと想像がつくほどの破壊力だったのだ。


 まあ、実際、刀ごと持ってかれて、頭を割られた奴が何人も居るんだけどね。


 兎に角、薩摩示現流の初撃は、幕末最強の人斬り、佐藤 塩太郎をもってしても、ヤバイと言わしめる攻撃なのである。


 だけれども、


 盾役2人は、塩太郎の言葉を無視して、真正面からタコ侍キングの初撃を、作戦通りに受けてしまう。


 ズダタダダダダダダーーン!!


 塩太郎の予想通り、盾役の盾は真っ二つに割れ、盾役の2人も綺麗に2つに斬れ、合計4人になってしまっていた。


「いわんこっちゃない!」


 塩太郎は急いで、真っ二つに斬られた4人?を担ぎ、少し離れた場所まで移動し、脳ミソがタレ落ちないように注意しながら、ピッタリとズレないように重ね合わせ、エリクサーを掛けてやる。


「アレ?ここは?」


 どうやら、上手くいったようである。4人になっていた盾役は、見事、2人に戻る事が出来た。


「だから、初撃は避けろと、アレほど言っただろ!」


「ん? 何のこと言ってるんだ?」


 盾役2人は、首を捻る。


「もしかして、今、タコ野郎共と戦ってた事、覚えてないのか?」


「タコ野郎?」


「オイオイオイ! タコ野郎とお前ら戦ってただろうが!」


「うん。確かに、タコ侍キングは居るな?」


「ちょっと、塩太郎さん……足元……」


 口うるさい魔法使いの女が、盾役2人の足元を見るように、塩太郎に言う。


「ん? アレは脳ミソ……?」


「そう。脳ミソが、少し垂れ落ちちゃったのよ……だから、記憶が少々……後は、解るでしょ……」


 口うるさい魔法使いの女が、口を濁す。

 どうやら脳ミソが、少しだけ垂れ落ちてしまい、記憶が少々無くなってしまったようである。


「俺のせい? 俺が動かしたから、脳ミソ垂れちゃったのか……」


 塩太郎は動揺し、生暖かい汗が、背筋を伝うように垂れ落ちる。


「アノ場合、仕方が無いわね。そのまま混戦になってたら、多分、その2人助けれなかったと思うから、エリクサーを使うのも鮮度が大事だから、流石に死んでから30分も経つと、生き返らす事ができなくなってしまうし……」


「だよな! 俺のせいじゃないよな!」


「ええ。アンタのせいじゃないわよ。全て、作戦を立てた私のせいね……」


 なんかよく分からないが、口うるさい魔法使いの女が反省してるようだ。だって、声のトーンが小さくなってるし。


「オイ! お前ら、もう大丈夫だよな!」


 塩太郎は、戦意喪失してしまった口うるさい魔法使いが、使いものにならなくなってしまったと判断し、復活した盾役2人に問い掛ける。


「ああ。大丈夫だが、それよりここは何処だ?」


「確かに、知らない場所だな?」


 盾役2人は、不思議そうに頭を捻っている。


「オイオイ、そこから覚えてないのかよ!」


「というか、俺の名前ってなんだっけ?」


「そうそう。俺も自分の名前、思い出せないんだよな」


 盾役2人は、どうやら名前まで忘れてしまったらしい。


「ちょっとヤバイな……というか、俺の名前は覚えてるのかよ?」


「ん? お前は塩太郎だろ?」


「そうそう。塩太郎、確か、ガブリエル様が召喚した異世界勇者だろ?」


「そこは、覚えてるのかよ!」


 塩太郎は、思わず突っ込みを入れてしまう。

 塩太郎的には、塩太郎の名前を覚えて貰えていて嬉しかったが、それより、自分自身の名前を覚えてて欲しかったのだ。


「戦い方とかは、覚えてるのか?」


「それは解る!」


「俺達は、パーティーを守る盾役だ!」


 何故だか知らないが、今現在の状況と、自分の名前以外は、全て覚えてるようである。


「だったら、パーティーを守りながら他の奴らと連携して、タコ野郎共を分断させろ!

 流石の俺でも、一気に纏めて相手をするのはキツい。木刀じゃなければ余裕だったと思うが、想像以上に奴らは手練だ!」


「「心得た!」」


 盾役の2人は、自信満々に言い放つ。そして、


「やーい! やーい! タコ野郎! お前の吸盤気持ち悪いんだよー!」


「口から墨を吐いてみろよ! それでイカスミならぬ、タコスミスパゲティー作って、お前ら自身に食わしてやるからな!」


 まさかの悪口。

 まあ、ハラダ家、ハラ家のアタッカーは離脱してるし、頼りの魔法使いの魔法攻撃は簡単に弾き返されちゃうので、それしか方法はないんだけど。


 しかしながら、効果はてきめん。

 タコ侍キング4匹のうち、2匹が『犬の尻尾Dチーム』に引き寄せられる。


「でかした!」


 塩太郎は、木刀を構え、タコ侍キング2匹に相対する。


「プシュー!」


 どうやら、タコ侍キングもヤル気のようだ。


「悪いが、薩摩示現流を使う奴は、誰であろうと絶対に叩き斬る。

 俺にとって、薩摩の風見鶏野郎共は、仲間の仇だからな!」


 塩太郎は、まるで幕末最強の人斬りの頃に戻ったような、人を全く寄せつけない剣呑な雰囲気を漂わせ、タコ侍キングに言い放つのであった。


 ーーー


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