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85. 普通の少女にしか見えない女

 

 ハナが、塩太郎の手をギュッ!と繋いでくる。

 ハナの手の平は、10代の女の子には似つかわしくなく、剣タコでゴツゴツしている。


「相当、鍛錬してるようだな……」


 塩太郎は、思わず声を出す。


「女の子なのに、手がゴツゴツしてるなんて恥ずかしいです……」


 ハナは、恥ずかしかったのか、ボソリと言う。


「別にいいんじゃないのか?剣士なんだから?剣士がツルツルの手だった方が、俺は共感できんしな!」


 塩太郎は思ったまま、そのままの本心を口にする。塩太郎は、剣術については自分に正直なのだ。

 まあ、いつでも言いたい事を、そのまま口に出してる気もするけど。


「そうですよね!」


 何故だか知らないが、ハナの顔が、パッ!と晴れる。


「ところで塩太郎殿! 最初の一戦の小手打ち、とても感服しました!

 あんなに綺麗な小手打ちなんて、私、見た事無かったので!」


「ああ。アレな! あんなの俺達が居た時代じゃ普通だぜ!

 多分、お前の祖先は、俺達の時代よりずっと前の侍なんだろうな。江戸時代初期か、もしかしたら戦国時代頃の侍かもしれんな?

 練習の時、防具も付けないようだし」


 塩太郎は、気になってた事を指摘する。


「防具とは?」


「俺達の時代では、剣の修練をする時、面やら胴やら小手に、布とかを重ねて作ったフカフカの防具を付けて修練すんだよ!

 それによって、立ち会いの時とか連続して攻撃できんだよ!

 致命傷の一撃が入れば、一本! それ以外の軽い斬撃なら、そのまま試合を続ける感じだな!」


「寸止めじゃなくて、そのまま相手に打ち込んでしまうのですか?」


「ん? そうじゃなければ、実戦で役にたたんだろ?寸止めという事は、途中で刀を止めるという事だし」


「なるほど……それで、あの芸術的な小手打ちが生まれたのですか……確かに、私共は小手打ちを狙う時は、必ず寸止めしますし、もし木刀で打ち込んでしまったら、骨が折れるかして試合を止めなければならなくなりますし……」


 どうやら、ハナの疑問が解けたようである。


「兎に角、お前らの祖先の時代よりも、俺達が居た時代の方が、特に対人に対しての戦い方は進化してんだよ!

 無駄に250年間、平和な時代が続いてた訳じゃないんだ。

 その間に、たくさんな流派ができ、剣術の技が道場で進化していったんだな!」


「なるほど!」


 なんか、よく分からんが、ハナとは話が合う。

 まあ、同じ侍だからなんだけど、兎に角、エリスや虎子よりは相性が合うようである。


「アンタ達、いつまで手を繋いでんのよ!

 もう、132階層に着いたわよ!」


 シャンテーが、ニヤニヤしながら指摘してくる。


「アッ! すみません!」


「すまん……」


 塩太郎とハナは、シャンテーに指摘され、パッ! と手を離す。


「アンタ達、イチャイチャするのは勝手だけど、ここからは本番だから気合い入れなさいよ!

 この戦いは、遊びじゃないんだからね!」


 シャンテーが、キツめに注意してくる。


「分かってる」


「分かっています!」


 そう、塩太郎は少しだけフワフワしてたが、ハナにとって、異界の悪魔サルガタナスは、親の仇なのだ。

 ハナは、途端にハラダ家当主の顔に戻る。


「で! ハラ家のアンタ、勿論、同期化させてるマップラー持ってるわよね!」


「ハイ!」


 ハラ家の侍は、シャンテーに言われて自分の魔法の鞄の中から、マップラーを取り出す。


「成程、もう134階層まで進んでるわね!

 スグに、『犬の尻尾Dチーム』と、合流するわよ!」


「ん? 同期化って、何だ?」


 塩太郎は、気になり質問する。


「マップラーを何枚か同期化させとくと、誰かが、歩いた場所が、勝手に同期化されたマップラーに書き込まれるの!

 未攻略ダンジョンを攻略する場合は必須よね!

 攻略済のダンジョンなら、普通に地図が売り出されてるけど、未攻略ダンジョンの場合は、地図作りもしておけば、後で高く売れるしね!

 わざわざ仲間と分担して、地図を全て埋めるのを生業にしてる冒険者パーティーも居るくらいだから」


「便利なんだな」


「ええ。マップラーを同期化さえしとけば、仲間とはぐれた時も、どこに居るか分かるしね!

 ほら、コレ見て! 134階層で、どんどん新しい地図が書き加えられていってるでしょ!

 ここに、『犬の尻尾Dチーム』が、居るって分かるわよね!」


「これ、すげーな……」


 塩太郎は、勝手にマッピングされていく、マップラーをマジマジ見る。


「兎に角、とっとと合流するわよ! 多分、サルガタナスの目的は、強い魔物の捕獲する事だと思うから、サルガタナスがこのダンジョンを攻略して、ラスボスを捕獲する前までに、サルガタナスに追いつかないといけないんだから!」


「ん? 何で、猿型ナスは、強い魔物を捕獲してるんだ?」


 塩太郎は、気になった事を質問する。

 幕末出身である塩太郎は、異世界の事を何も知らないので、質問ばかりしちゃうのだ。


「それは、異界の悪魔が支配してる通称666ダンジョンを強化する為ね!単純に、戦力強化の為よ!」


「他のダンジョンから強い魔物を連れて来て、自分達のダンジョンを強化するって事か?」


「そうよ! それから強い魔物を、魔素濃度が高い666ダンジョンに連れていくと、強い魔物に進化するから一石二鳥だしね!」


「進化?よく分からんが、捕まえて鍛えるって事だな?」


「そんな所よ!」


 シャンテーは、ちょっと違うが、塩太郎の解釈に同意する。

 毎回、説明を求めてくる塩太郎に説明するのが、決して面倒だった訳じゃない。断じてね。


 てな感じで、『犬の尻尾Dチーム』と合流する為、ダンジョンを進む。

 先頭は、ハラダ家とハラ家の侍達、まあ、ハナとスエキチ爺さんとハラ家の若い侍だけなのだけど。


 とはいっても、働いてるのは、ハラ家の若い侍だけ。

 ハラ家の若い侍が、滅茶苦茶強いのだ。


「シャンテー……なんか、あの侍、滅茶苦茶強いんだけど……」


 塩太郎は、シャンテーにヒソヒソ声で質問してみる。


「そんなの当たり前でしょ! Dチームでも『犬の尻尾』を名乗ってんのよ!

 あのガブリエルが、ショボイ奴らに敬愛するゴトウ・サイトが作った『犬の尻尾』を名乗らせる訳ないでしょうが!」


 シャンテーが、アホなのって顔をして塩太郎に指摘する。

 という事は、本物の『犬の尻尾』に所属してるというハラダ・ハナは、どれ程なのだろう。


「一応、確認するけど、ハナは、本物の『犬の肉球』に所属してるんだよな?」


 改めて、塩太郎はシャンテーに質問する。


「そうよ。大魔王ゴトウ・サイトが亡くなってから、初の新規メンバーが、ハラダ・ハナよ!

 それだけ、剣姫ハラダ・ハナが化物だって事ね!」


 シャンテーは、どう見ても普通の少女にしか見えない、剣姫ハラダ・ハナの背中を見ながら答えたのだった。


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