83. 狡い男
塩太郎から、村正を借りる事を綺麗サッパリ諦めたハラダ・スエキチ率いる、ハラダ家、ハラ家の精鋭部隊は、道場に集まる。
とは言っても、既にハラダ家・ハラ家の精鋭達は、『犬の尻尾』Bチーム、Cチーム、Dチームに参加中なので、スエキチ爺さんとハナと、連絡に来たハラ家の若い侍だけなんだけど。
そうこうしてると、ずっと、奥の御屋敷でお茶を飲んでたシャンテー達もやって来た。
「聞いたわよ! サルガタナスが現れたんですって!」
どうやら、シャンテーはサルガタナスを知ってるようだ。
「お前、サルガタナスを知ってるのかよ!」
「知ってるわ。ハラダ家と因縁がある異界の悪魔よね……。そいつに私とエリスは捕まったのだもの……」
「お前らでも、敵わなかったのかよ!」
「ええ。サルガタナスとのファーストインパクトは、350年前。『三日月旅団』が見付けだした、5S級以上と思われた未攻略ダンジョンの調査から始まるわ」
なんか、よく分からんが、シャンティーが語り出す。
「その調査に参加したのが、私達『犬の肉球』と、大魔王ゴトウ・サイト率いる『犬の尻尾』、『三日月旅団』、当時No.1冒険者パーティーだったハラダ・シンタロウ率いる『鷹の爪』だったの。
しかしながら、調査の途中で、『漆黒の森』に北の大魔王ベルフェゴールが攻めてきたという連絡が入り、ゴトウ・サイト達『犬の尻尾』は途中で退いたの。
そして、私達調査団は、そのまま調査を進め、遂に最下層に辿り着いたわ。
そこで最初に出会ったのが、異界の悪魔サルガタナス。
出会うとすぐに、戦闘が始まったわ。
サルガタナスの狙いは、エリス。
異界の悪魔は、天使の仲間で、『静寂の森』に住む白エルフ族を敵視してたの。
簡単に説明すると、異界の悪魔は、『漆黒の森』に住むダークエルフの禍々しい魔力が好き。
一方、天使は、『静寂の森』に住む白エルフの清々しい魔力が好き。
要するに、異界の悪魔からすると、天使の味方の白エルフは、敵という理論。
それが分かり、私達は異界の悪魔サルガタナスと交渉し、私とエリス以外は逃がして貰ったのよ!」
「ん? 話を聞くと、サルガタナスていう異界の悪魔、話が分かる奴じゃん?」
塩太郎は、シャンテーに気になった事を質問する。
「ええ。サルガタナスは、異界の悪魔の中でも話が通じる部類よ。
元々、『漆黒の森』の初代王様に召喚された異界の悪魔だから、『漆黒の森』に古くから仕えるハラダ家とも、元々、物凄く仲が良かったと聞いてるわ!」
シャンテーが、スエキチ爺さんの方を見る。
「確かに、ハラダ家の初代様とサルガタナスは仲が良く、同じ流派の剣術もサルガタナスに教えたのは確かじゃが、今は不倶戴天の敵じゃ!」
スエキチ爺さんは、吐き捨てるように言う。
「まあ、サルガタナスは、本来、私達に好意的であるのは確かよね。
ただ、サルガタナスの直属の上司が問題なのよ。
確か、アスタロトと言ったかしら? その異界の悪魔が、執拗にエリスを狙ってきたのよね!」
「ん? 異界の悪魔は、一枚岩じゃないのか?」
塩太郎は、気になり質問する。
「アンタ、今更、何言ってんの?
アンタをこの世界に連れてきたのも、ガブリエルの部下の異界の悪魔アマイモンでしょうが!
基本、この世界に居る異界の悪魔は、初代『漆黒の森』の王様のガブリエルの祖先が、全員、召喚させたと言われてるわ!
そして、その後の『漆黒の森』の王族が力が無かった為、ベルゼブブ一派が反旗を翻したというか三行半を突き付けて離脱したの」
「ん?でも、今の『漆黒の森』の女王 ガブリエルは、どう考えても力が有るだろ?」
「そうなんだけど、ガブリエルのマスターであるゴトウ・サイトが、ベルゼブブが殺されてしまったのよ……。
ベルゼブブ一派に捕まってしまった、エリスと私を助ける為にね……」
シャンテーは、悲愴な顔をしながら語る。
「え? どういう事だ? ゴトウ・サイト率いる『犬の尻尾』は、北の大魔王の対応の為に、『漆黒の森』に戻ってたんじゃなかったのか?」
塩太郎は、疑問を口にする。
「ええ。戻ってたんだけど、ゴトウ・サイトは私達を助けに来たのよ……。北の大魔王の対応は、ガブリエル達に任せてね……。
そして、ベルゼブブに捕まって殺されてしまったのよ。エリスと私を、しっかりと助けてね……」
「ヤバイな……」
「ヤバイわよ。本当に、格好良すぎるわよね……。
いつもは、ただのロリコンエロ大魔王だった癖に、最後の最後だけ、格好良い所を見せるんだから、本当に、狡いわよね。
今でも、最後に私達を救った後の、やりきったぞ。 ていう、とても清々しい顔をしたゴトウ・サイトの顔を思い出す度に、涙が勝手に溢れちゃうのよね……」
腹黒シャンテーが泣いている。
どうやら、ゴトウ・サイトの事を思い出して泣いているのだろう。
塩太郎は、ゴトウ・サイトの事など全く知らないが、シャンテーやガブリエルを見てると、とても影響力があった人物だという事だけは、少しだけ分かった。
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