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77. 虚勢を張る侍

 

 次の日、武器屋の商人から3000万マーブルを受け取ってから、ハラハラの隣町にある、ハラダ家の本拠地ハロハロ城塞都市に向かった。


 ハラハラから歩いて30分の場所にあるハロハロ城塞都市は、ムササビ自治国家の首都から『漆黒の森』の王都モフウフを結ぶ街道上にある為、人の行き来が多く、他の城塞都市より少し大きい。


「おっ!あれが侍の本拠地、ハロハロかよ!やっぱり、日本風の建物が多いな!」


 塩太郎は、ワッシーの背中から、ハロハロ城塞都市を見下ろす。

 ハラハラからハロハロまで、歩いて30分だが、グリフォンに乗れば、たったの3分。メッチャ近いのだ。


 ワッシーとワシ子は、ハロハロ城塞都市の正門付近に、静かに着地する。


 すると、見覚えがある純白の剣道着を来た少女が、塩太郎の元に走り寄ってた。


「塩太郎殿! お待ち申しておりました!」


 純白の剣道着を来た少女、ハラダ・ハナが頭を下げる。


「お……おお」


 突然の事に、塩太郎は動揺する。

 塩太郎的には、ハラダ・ハナは敵だと思っていたのだ。今から剣神の称号を奪う予定の奴だし。

 それなのに、満面の笑顔で話し掛けられるなど思ってもみなかったのである。


「アッ! 自己紹介が、まだでしたね!

 一応、前に会ったんですが、姫様やアリエッタ殿が大暴れしておりましたので、挨拶するタイミングが無かったんです!

 改めまして、塩太郎殿!

 私は、このハロハロ城塞都市を治めるハラダ・ハナです!」


 ハラダ・ハナは、ペコリと頭を下げる。


「お……おお。俺は日本国の長州藩士、佐藤 塩太郎だ!

 一応、俺がいた時代では、伝説の人斬りと言われていた!」


 正体を誰にも知られていなかった伝説の人斬りなのだが、初対面じゃなくて、会うのが2回目の奴に、しかも、今から戦う予定の奴に舐められる訳にはいかないので、塩太郎は虚勢を張る。


「おお! 伝説の人斬りですか! それは凄いです!詳しく、話を聞かせて欲しいです!」


 大きな黒目と、黒髪のポニーテールが特徴的な、よく見ると美少女のハラダ・ハナが、目をクリクリさせて聞いてくる。


「おお! 俺の武勇伝を聞きたいのか!」


「はい! 聞きたいです! 自分は塩太郎殿の事に、とても興味があります!

 だって、本物の現役侍ですもん!

 ハロハロの侍で、塩太郎殿に興味がない者なんておりませんよ!」


 いつの間にか距離を詰めてきていた、ハラダ・ハナは、勝手に塩太郎の両手甲を包み込むように握り締め、目をキラキラさせている。


「おお!」


 塩太郎は、思わず鼻の下を伸ばす。

 どうやら、塩太郎は、異世界に来てからモテ期が到来しているようだ。


「ちょっと! アンタ達、何、イチャついてるのよ!

 私達は、この街に道場破りに来たのよ!

 それなのに、敵の大将にほだされるって、塩太郎、アンタ、ヤル気あんの!」


 シャンティーが、塩太郎に注意する。


「そ……そうだった! もうちょっとで、騙される所だぜ!

 ハラダ・ハナ! 俺がこの街に来たのは、お前が持つ冒険者の称号、剣神の称号を奪いに来たんだ!

 尋常に勝負しやがれ!」


「はい。そうでしたよね。つい、塩太郎殿がおいでになったので、興奮してしまいました。

 それでは、直ぐに道場に向かいましょう!

 みんな、塩太郎殿がおいでになるのを、首を長くしてまっておりましたので!」


 ハラダ・ハナは、すぐに、ハロハロ城塞都市城主の顔になり、塩太郎達をハロハロの侍達が訓練しているという道場に向かう。

 ハラダ・ハナは、どうやらオンとオフの切り替えが早い少女であるようだ。


「アイツが噂の、ガブリエル姫が異世界から召喚させたという、現役の侍か」


「やっぱり、現役の侍は違うな! 纏ってオーラが只者じゃない!」


「なんか格好いいよな! やっぱり、本物の侍は凄いぜ!」


「え~ん! あのお侍さん怖いよぉ~」


 ハロハロ城塞都市の住民の視線が熱い。

 塩太郎は、妙に緊張する。

 どいつもこいつもら実力者ばかりと分かるのだ。

 少し、塩太郎は、異世界の侍を舐めていた。所詮は、現役の侍ではないと。

 しかしながら、南の大陸に住む侍は、ヤバ過ぎる。全員が全員、凄腕と分かるのだ。

 まあ、日本には居ない魔物としょっちゅう戦ってるので、当然と言えば当然なんだけど。


「アンタ、何、殺気を撒き散らしながら歩いてんのよ!」


 シャンティーが、子供がギリギリ気絶しないくらいの殺気を発しながら歩く塩太郎に注意する。


「何、言ってやがんだ! 俺達は敵地に来てるんだぜ!

 殺気を出して、敵を威嚇するのは当然だろうが!

 それに、現役の日本の侍が、侍モドキに舐められる訳、いかねーんだよ!」


 塩太郎は、必死に言い訳する。


「そう? だったらいいけど」


 シャンティーは、塩太郎の言葉に納得する。

 まあ、そもそも道場破りに来たのだし、塩太郎の言葉は間違っていない。


 だけれども、本当は敵地に来たから殺気を発した訳ではなく、何故か、塩太郎に憧れを持ってるハロハロの侍達に応える為に、殺気を発してたのだけど。


 だって、折角、日本の現役侍の塩太郎に好意を持ってくれてるのに、期待を裏切る訳いかないしね!


 塩太郎は、現役の日本の侍が幻滅されないように、必死に努力していたのであった。


 ーーー


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