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42. 厄災の銀狼

 

「で、再結成した『犬の肉球』は、350年振りにムササビ自治国家に、何しに来たのじゃ?」


 ブリジアは、少し不思議そうに尋ねる。


 そう、エリスとシャンティーは、今迄、ムササビ自治国家を避けてきた。

 まあ、ガブリエルが統治してると言っても過言じゃないので、当然と言えば当然なのだが、それにしても、ムササビ自治国家に訪れるのは久しぶり過ぎるのだ。

 ブリジアが、疑問に思うのも当然と言えば当然なのである。


「発注してるムネオの大盾を、ドワーフ王国直営店、ムササビ支部に取りに来たのです!」


 借りてきたネコ状態のシャンティーが、再び地面に平伏して、ブリジアに答える。


「ならば、ウルフデパートに行くのじゃな?

 それならば、ゆっくり見て存分に楽しんでくるといい。財布の紐は、緩めてのう!」


 なんか、ブリジアが上機嫌になった。


「ハイ! 存分に、色々買わせて頂きます!」


 シャンティーが、地面に頭を擦りつけて平伏すると、ブリジアは何が楽しいのか、鼻歌を歌いながら去っていった。


「オイ! ウルフデパートって、何だ?」


 ブリジアが見えなくなると、塩太郎は、シャンティーに質問する。


「ハイハイ。知りたがり屋さんに、説明すればいいのね。

 ウルフデパートは、この世界最大にして最高の老舗何でも屋さんね!

 CEOはブリジア様。因みに、大手ギルド、シルバーウルフを作ったのもブリジア様よ!

 現在は、冒険者ギルド本部長の役職に付いてるから、シルバーウルフは引退して身を引いてるけど、南の大陸ではガブリエルを越える最重要人物と言われてるわね!

 これはオフレコなんだけど、ブリジア様の正体は、この世界の創成に関わると言われている始まりの魔女様のペットで、1300年前、この世界を壊滅寸前にまで追い込んだ事がある、伝説の神獣『銀の厄災』だと言われてるわ」


「あのエロそうな銀髪ネーチャン、そんなにヤバイ奴なのか?」


 塩太郎は、首を捻る。偉そうには見えるけど、塩太郎的には常識人に見えたのだ。

 ガブリエルのような、狂気的な所も無いし。初対面で、隕石落とさなかったし。


「ヤバイわね。もう何千年も、ブリジア様は本気を出されてないのだけれど、本来の姿、九尾の銀狼になられれば、ガブリエルのペット、ケルベロスのペロと同等の実力じゃないかと言われてるぐらいよ!

 まあ、『銀の厄災』の話は、1300年も前の話だから、余っ程の長寿種じゃなければ忘れられてる話なんだけどね」


 シャンティーが、ブリジアについて端折って説明してくれた。


「『犬の肉球』が、南の大陸で忘れられてるようにか?

 さっきから、黒いエルフとか、耳が尖ってる長寿種ぽい種族の奴らは、エリスとシャンティーを見て驚いた顔するけど、それ以外の奴らは、完全スルーだもんな……。本当に『犬の肉球』は、伝説の冒険者パーティーなのかよ……疑わしくなってきたぜ?」


 塩太郎は、疑問を口にし、シャンティーを見やる。


「仕方が無いでしょ! 350年間、殆ど『犬の肉球』は、南の大陸で活動してないんだから!

 だけれども、長寿種のブリジア様のような大物に知られてるんだから、私達は本物なの!」


 なんか、シャンティーさんは御立腹。

 どうやら、『犬の肉球』が、南の大陸で忘れられてるんじゃないかという、塩太郎の指摘に苛立ちを感じているようである。


「じゃあ、何も知らない若い奴らにも、『犬の肉球』の凄まじさを分からせねーといけねーな!」


 塩太郎は、シャンティーを見て、ニヤリと笑う。


「フフフフフ。アンタ、やっぱり、分かってんわね!アンタのそういう考え好きよ!」


『犬の肉球』を、再び有名にする計画を立てているのか、シャンティーも、塩太郎と同じくニヤリと笑った。

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