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27. 盾の男

 

 塩田郎は、敵陣の中、斬っては投げ、斬っては投げ、推し進む。


 そうこうすると、塩田郎の恐ろしい程の実力に気が付いたのか、敵が、塩田郎の周りから離れるように、退いていく。


「不味いわね……」


「ですな!」


 シャンティーの独り言に、ムネオも頷く。


「何が不味いって! 敵軍の野郎共は、俺の強さに恐れをなして、逃げってたんだろうが!」


 塩田郎は、てやんでえー!とばかりに、胸を張る。


「ムネオ。やれる?」


「シャンティー殿に、やれと言われたらやるしかないですな」


 ムネオは、そう言うと、死亡した敵軍が持っていた盾を、無造作に拾う。

 すると、ほぼ時を同じくして、上空の空高くが青白く光り輝き、魔法陣が展開される。


「嘘だろ! アレッて、ガブリエルが放ってた隕石攻撃なんじゃねーのか!」


 ここに来て、やっと塩田郎も、シャンティーとムネオが言ってた意味が分かった。

 そうこうしてると、魔法陣の中から、真っ赤に燃え盛った、巨大な隕石が現れてくる。


「ちょっと、コレ、不味いんじゃ! アンさんも居ないし!」


 流石の塩田郎も、ビビって足が竦む。

 というか、足が動いたとしても、逃げ場がない。


「ムネオ!」


「承知!!」


 ムネオが気合を入れて返事をすると、体から莫大な魔力が溢れ上がり、ムネオの盾と体を覆い尽くしす。


「塩田郎! ムネオの背中に隠れて!」


「言われなくたって、隠れるって!」


 塩田郎は、急いで、ムネオの背中の後ろで隠れて、丸くなる。


 ズドドドドドドドドドドドーーン!!


 耳をつんざく爆裂音が、辺り一帯に鳴り響く。


「終わったか……? てっ!えぇぇぇーー!!」


 塩田郎は、ムネオを中心として放射線状に抉れた地面を見て、肝を潰す。


「やっぱ。隕石落とし、やべぇ……」


「シャンティー殿。なんとか防御出来ましたが、盾が壊れました……」


 ムネオは、申し訳なさそうに報告する。


「まあ、そうでしょうね!それ、その辺の防具屋に売ってそうな汎用の盾だから、この戦が終わったら、すぐに、アンタ専用の大盾を、ドワーフ王国に発注掛けとくわ!」


「嘘だろ! ムネオさん! 隕石を防御するって!

 ムネオさん……。アンタ、アンさん並みの化け物かよ!」


 塩田郎は、興奮気味に捲し立てる。

 というか、既に、ムネオを尊敬している。

 なにせ、元々尊敬してた、来島又兵衛に雰囲気が似てるから。


「はははははは! アン殿には、流石に劣りますな!

 アン殿なら、この盾も、壊さずに防御してしまいますからな!」


「だけれども、普通、隕石を盾で防御出来ないでしょ!」


「はっはっはっはっはっ!『犬の肉球』で、盾役になるなら、隕石ぐらい防御できなければ、メンバーに選ばれないですからな!」


 なんか、ムネオは余裕綽々で高笑い。


「おい! ムネオさんの体、どうなってんだよ!」


 塩田郎は、シャンティーに聞く。


「一応、勇者の末裔だから、無駄にポテンシャルが高いのよ!

 まあ、末裔と言っても、脳筋で殴り僧侶だった双子の妹の方の末裔だから、剣術の才能は、からっきしだけど……」


「剣術の才能が、からっきしだとしても、隕石止めれる方が、凄いだろ!」


「アンタ、何言ってんの? アンタも、『犬の肉球』のアタッカーなら、隕石ぐらい叩き斬って貰わないといけないのよ?」


「嘘?」


「「本当よ!じゃ!」」


 シャンティーとムネオが、ハモって答えた。


 ーーー


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