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2. 幕末から来た男

 

 石の壁。石の床。少しジメジメしてるが、それほど暑くはない。

 辺りは薄暗いが、目を凝らせば、視界は確保できる。


「て……ここは、どこだよ!」


 何故だか知らないが、佐藤 塩田郎は、固い石畳の上で寝ていた。


 確か、俺は、京都は蛤御門に居た筈だ。


 そこで、何してたんだっけ……。

 ぼーっと考えてると、少しづつだが、思考がハッキリしてくる。


 アッ! そうだ! 俺、死んだんだった!

 そして、三人組の悪魔が出てきて、生き返らせてくれる代わりに、異世界で悪魔を殺せと……。


「ていうか、とっととその悪魔とやらを殺して、故郷に帰りてーぜ!

 アホの高杉の仕事を、手伝ってやらないといけねーし。アイツ、俺が守ってやらねーと、簡単に死んじまいそーだしな!」


 幕末を生きていた、佐藤 塩田郎は知らない。

 異世界転移お約束。異世界転移者は、殆ど、元の世界に帰れないという事を……。


「ていうか、ボロボロだった服が直ってやがる! 血もついてねーし!

 あの悪魔野郎、一体、どんなカラクリ使いやがったんだ?

 普通、穴があいた服が、綺麗に直らねーだろ!」


 塩田郎は、綺麗になった服を色々チェックしてると、懐からヒラリと、手紙が落ちてきた。


「何だコレ?」


 塩田郎は、手紙を拾い拡げてみる。


「コリャ、日本語じゃねーな! てか、読めるじゃねーか、コレ!」


 どういう訳だか分からないが、外国語で書かれてる手紙を、塩田郎は理解できてしまう。

 そして、この手紙は、紫の悪魔が書いた手紙であるようだ。


 取り敢えず、塩田郎は、手紙を読んでみる。


『この手紙を読んでるって事は、【全言語理解】スキルが、機能してるって事だね!

 1ヶ月分の水と食料しか上げないと言ったけど、流石に、異世界で言葉が分からなかったら大変だと思ったので、特別に、【言語理解】スキルを、あげちゃうよ!

 それから、服もサービス! それ、アラクネの糸を使って編んだ服だから、洗濯しなくてもいつも綺麗で、しかも防臭!

 そんでもって、1ヶ月分の水と食料は、魔法の鞄に入れておいたんで、夜露死苦ね!


 追伸。

 日本史の教科書と、異世界ものの漫画も数冊入れといたから、異世界の勉強がてら読むといいよ!』


 言葉は読めるが、手紙に書いてある内容が、全く理解できない。


【言語理解】スキル? アラクネの糸?

 そんでもって、この、西洋人が持ってそうな革の肩掛け鞄に、水と食料、1ヶ月分も入ってるって?

 そんなの、こんな小さな鞄に入る訳ねーだろ!


 塩田郎は、どう考えても何も入ってなさそうな、滅茶苦茶軽い革の鞄を、地面に叩きつける。


 しかし、万が一の事も有るので、もう一度拾って、鞄を開き覗き見るが、やはり、鞄の中は空っぽだった。


「あの悪魔野郎! 騙しやがったな!」


 まあ、でも、丈夫そうな鞄だから、貰っとくけど。

 塩田郎は、鞄の造りをチェックする為に、鞄の中に手を突っ込んでみる。


「てっ! なんか入ってやがる! というか、中に、何が入ってるかも分かる……!

 一体全体、どうなってやがるんだ!」


 何度も言うが、塩田郎は、幕末出身。

 令和日本人じゃないので、異世界あるあるを、何も知らないのだ。

 インベントリや、物がたくさん入って、しかも、中の時間が止まる便利な鞄など、勿論、知らない。


 取り敢えず、塩田郎は、鞄に入ってる水を取り出してみる。


「本当に、出てきやがった!てか、メッチャ冷たい!」


 何故か、冷たく、透明な柔らかい入れ物に入った水に、塩田郎は心底驚く。


「というか、これ、どうやって飲むんだ?」


 何度も言うが、塩田郎は、幕末出身。

 ペットボトルなどという便利な物は、勿論、知らない。

 というか、この世界には、そもそもペットボトルなどは存在しないのだが、それはまた、別の話。


 取り敢えず、塩田郎は、試行錯誤の上、なんとかキャップを開け、水を飲む事に成功した。


 なんか、疲れる。というか、肉体的には全く疲れてないが、驚く事が有り過ぎて、精神的に疲れる。


「俺は、異世界でやっていけるのか?

 水を飲むのに、30分もかかった俺が……。

 このままでは、悪魔を殺す前に、過労死しちまうんじゃねーのか?」


 何度も言うが、幕末から来た塩田郎は、異世界の前知識が全くないのである。

 そして、もう一度言うが、ペットボトルは、異世界と全く関係無い。


 二十一世紀の日本からやって来た日本人なら、「ああ、これインベントリ的な鞄ね! 知ってる! 知ってる!」で、済む話だが、塩田郎は、なにもかも初体験。


 因みに、今居る場所がSSSSダンジョンの深層部で、とても危険な場所だという事も、幕末から来た佐藤 塩田郎は、勿論、何も知らなかった。


 ーーー


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