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15. 二つ名が嫌いな男

 

「エリス! 早くアリエッタを呼んで!」


 シャンティーは、ダンジョンから出ると、塩太郎が感動してるのを無視して、すぐにエリスに指示を出す。


「エッ?! アリエッタちゃん?スグ来てくれるかな……」


 エリスは、なんか悩んでいる。


「アンタの危機だと言ったら、すぐに飛んでくるわよ!

 なんてたって、アリエッタは、エリスの魔力の虜なんだから!」


「私の危機?」


 エリスは、首を傾げる。


「そりゃ、そうよ!

 今回の遠征は、この世界で一番早い神獣ペガサスで、南の大陸まで来て、『三日月旅団』とは、このダンジョン前で落ち合ったでしょ!

 だから、行きはガブリエルに見つからなかったけど、帰りはそうは行かないわよ!

 分かってる? ペガちゃんは男嫌いだって?

 絶対に、塩太郎を背中に乗せないわよ!」


「そっか!」


 どうやら、エリスは納得したようだ。


「そっか!じゃない! アンタ、ガブリエルに命狙われてるの分かってんの!」


「だけど、まだ、殺されてないもん!」


「すんでの所で、いつもアンに救われてんでしょ!

 元『犬の肉球』副団長ドラクエルの娘のアンが、『犬の尻尾』の副団長じゃなければ、アンタ、とっくの昔に死んでるんだからね!」


 シャンティーは、ちょっと呆れ気味。

 というか、『犬の肉球』やら、『犬の尻尾』やら、同じような名前で覚えづらい。

 シャンティーに言わせると、『犬の肉球』が本物で、『犬の尻尾』が、二番煎じで偽物らしい。


「また、アンちゃんが助けてくれるよ!」


 なんか知らんが、エリスは楽観的。


「アホ! 今回は、塩太郎も居るっていうの!

 塩太郎は間違いなく、ガブリエルが、アマイモンに命令して、こちらの世界に召喚した勇者候補!

 その塩太郎を強奪しといて、ガブリエルが黙ってると思う?

 アンが止めても、今回は、絶対に殺されるわね」


「ええー! どうしよう! すぐにアリエッタちゃんに連絡する!」


 なんか、エリスが目をつぶり、ブツブツ言い出した。


「おい……大丈夫か? あの娘、なんか1人でブツブツ言ってるけど……」


 塩太郎は怖くなって、シャンティーに質問する。


「あれは、念話してんのよ!

 アリエッタは、エリスの召喚獣じゃないから、直接、召喚して呼び出せないの!」


「あの、紙から妖怪が出て来る奴か?」


「そうそう。エリスは精霊魔法の使い手だから、精霊を使役して戦うの!」


「ふ~ん。物語に出てくる陰陽師みたいなものか……実際、見た事ないけど」


「シャンティーちゃん! アリエッタちゃん、来てくれるって!」


 少し離れた所で念話してたエリスが、シャンティーに向かって大声で叫んでいる。


「おい。あの娘、本当に大丈夫なのか?」


 塩太郎は、心配になってシャンティーに聞いてみる。


「あの娘は、アレがいいのよ! 何せ、本来はお姫様だから少し浮世離れしてるだけ!

 実際、精霊には物凄く人気があって、『精霊アイドル』っていう二つ名まであるんだから!」


「チッ! 二つ名持ちかよ」


 塩太郎は、二つ名持ちが嫌いだ。

 塩太郎と同じ家業の人斬りの中にも、結構

 二つ名持ちがいる。

 人斬り以蔵とか、人斬り半次郎とか。

 しかしながら、余りの手際が良過ぎる塩太郎には、二つ名が無いのだ。


 塩太郎の人斬りの流儀は、何も証拠を残さない事。

 証拠を何も残さなければ、誰にも知られる事もない。

 実際、二つ名持ちの人斬りなど、塩太郎は二流だと思ってる。


 しかも、塩太郎が行った完璧な仕事が、他の有名な二つ名持ちの仕業だと思われる始末。


「二つ名を持ってる奴なんて、どうせ、大した事ない奴らだろ」


 塩太郎は、本当は、少しぐらい有名になりたいと思ってたりする。

 しかしながら、塩太郎の信じる人斬りとしての流儀と、有名になるという事は、相反する事だったのだ。


 てな訳で、塩太郎は、二つ名持ちに並々ならぬ闘志を燃やすのである。


「本当にそうよね。 二つ名なんか、世の中から消えて無くなればいいのに……というか、人の二つ名を考える奴、死ね」


 なんか、シャンティーも、思うところがあるのか、塩太郎の意見に同調してきた。


「だよな!」


「ええ!」


 シャンティーと出会ってから、今日初めて、塩太郎は、シャンティーと心が通じ合えたと思った。


 シャンティーが、塩太郎が嫌いな二つ名持ちとは、露知らずに。


 ーーー


【『犬の肉球』と『犬の尻尾』の解説】


『犬の肉球』は、400年前、元々、勇者だったガリム王国の王子と双子の妹。そして、幼馴染みだったドワーフ王子の3人によって結成された由緒正しい冒険者パーティー。

 それに、後から、エリスとシャンティーが加わる。


『犬の尻尾』は、350年前に、異世界人ゴトウ・サイトと、当時『漆黒の森』の幼姫だったガブリエル・ツゥペシュと、『漆黒の森』の近衛騎士ブリトニー・ロマンチックの3人で結成。少し遅れて、ドワーフ王国の姫、アン・ドラクエルも加わる。

 現在は、死んだゴトウ・サイトの代わりに、ガブリエルが団長を務めている。



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