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アグリニオン戦記  作者: 田丸 彬禰
第九章 マンジューク防衛戦 Ⅱ

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そして、その祭典の幕があがる

 まずこれから起こることを話してしまえば、ドミニク・アンジュレスに率いられたフランベーニュ軍は後続部隊まで巻き込んで壊滅するわけなのだが、その直接的な引き金となった魔族軍の全面後退はあきらかに怪しく、罠の存在は十分に感じさせるものであった。

 それにもかかわらずアンジュレスが前進した理由。


 距離を稼ぎ膠着状態を打破する絶好の機会。


 それがアンジュレスの口にしたものとなる。


 だが、それだけが理由なのかといえばそうではない。

 というよりも、それは表面を薄く取り繕ったものであり、本当の理由ではない。

 では、アンジュレスが前進を決めた理由の核にあるものとは何か?

 その答えとなるものは魔族の将ペパスが口にした言葉に含まれていた。


「我々は、アリターナ王国の休戦条約を結び、その証としてマンジューク銀山を含むこの一帯の鉱山をすべて譲る決定をした。そして、アリターナ軍は現在マンジュークに向けて前進中である」


 さらにその魔族はこうも言った。


「……我々はこの地域を放棄する」


 もちろん、停戦の証として魔族がマンジュークをアリターナに譲り渡すというこの話はどこをどう見てもおかしい。


 たしかに魔族がアリターナと停戦することは、「我々が置かれた状況は二正面作戦どころか多正面作戦だ」と言いたくなるような国土の周囲全体で絶望的な戦闘をおこなっている魔族にとって大きな利があることは事実。

 だが、その代償に自国経済の中核を担う鉱山群を手放すことはあり得るのかといえば、ノーである。

 なぜなら、それをやってしまえば、魔族の国の経済は一挙に崩壊し、戦争継続は困難、いや、不可能となり、アリターナと停戦した利など吹っ飛んでしまうからだ。

 そもそもそれだけ重要だからここまで戦ってきたのだから、鉱山群の金や銀をすべて掘り出したということでも起きないかぎりそれはありえないのである。


 しかし、魔族軍が撤退しているのも厳然たる事実。


 そして、これらの状況を自身に都合よく再構成すると、このような理論も成り立つ。


 自分たちがアリターナより早く到達すれば、無人のマンジュークはフランベーニュのものとなる。


 そうすれば、その功績により三年前に失われたものを取り返すことができるどころか、それ以上のものが手に入るということになる。


 そう。

 口には出さなかったものの、アンジュレスの心の中にそのような思いがあったのだ。


 だが、そのような黒い期待など表面上どこにも表すことなくアンジュレスは大声で指示を出す。


「魔族の言っていることなどすべてが嘘だ。当然罠が用意されている。だが、それさえわかっていれば逆にそれを利用することは可能だ。つまり……」


「罠にかかったフリをして前進する」


「さらに相手の予想以上の速さで進めば迎撃の準備が整っていない相手と戦うことが出来る。乱戦に持ち込みマンジュークまで落とせる」


 そう言って訝しんでいる兵たちを奮い立たせながらアンジュレスはその言葉どおり軍を物凄いスピードで前進させる。

 そして、フランベーニュ軍は何の妨害もなく、「バルクマンコーナー」まで到達するのだが、彼らはそこで出会ってはいけないものを出会う。


 あまりの驚きにアンジュレスの口からうめき声が漏れるほどに。


 フランベーニュ軍とは別ルートからマンジュークを目指していたアリターナ軍。

 アンジュレスたちが「バルクマンコーナー」で見たのは彼らだった。


 では、なぜそのようなことが起こったのか。

 それを説明するためには、時間を少しだけ戻し、舞台も別の場所に移さなければならない。



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