マンジュークへ
ホルムは交渉日翌日に武器を持参して再び現れた。
それが何を意味するかは言わずもがなというところであろう。
「弓が一万人分。横弓が一万五千人分。矢がそれぞれに百本ずつ……」
「ノルディアの連中は売れそうな武器がないか王都の隅々まで探したようだな。だが、我々にこれだけ差し出してしまっては王都の守りが不安になるのではないか」
「まったくだ。しかし、この大型の横弓とやらは本当にすごいな」
「ああ。俺はこれが見えたら持ち場をおまえに譲り一目散に逃げることにする。だから、コリチーバよ。その場合は俺の分の手柄も立ててくれ」
「いやいや、俺は慎み深い男。そういうものはすべてウビラタンに譲る」
「そうか。ということは、ウビラタンのひとり勝ちということか。よかったな。ウビラタン」
「ふざけるな。だいたいこんなものを百台も並べられた場所でどうやって手柄を立てるのだ。何もしないうちに串刺しになるだけではないか」
「なるほど。馬鹿なおまえでもそれくらいのことはわかるのか。だが、それはおまえにふさわしい死に様ではないのか」
「バロチナのいうとおり。そういう場面がやってきたら敵味方双方から嘲笑される無様な姿を晒すことを期待しているぞ。ウビラタン」
「ふたりとも絶対に殺す」
届いたそれらを眺めながら、冗談を言い合うグワラニーの側近たち。
「グワラニー様。よろしかったのですか?」
その様子をニヤニヤしながら眺めるグラワニーにバイアが問いかける。
「これを運んできたノルディアの連中は不思議そうな顔をしていましたよ。初めて見るはずなのに使い方の説明は不要などとグワラニー様がおっしゃったものですから」
「ああ。それか」
「やはり形だけでも聞いておけばよかったかな。だが……」
「早くコリチーバやウビラタンに撃たせてみたかったのだよ。それに……」
「彼らよりもあれの扱いに詳しい者がいるのだから仕方がないだろう」
「そうですね」
そう言ったふたりの視線の先にはペパスとプライーヤというふたりの将軍と談笑する実際の年齢よりは遥かに若く見える人間の男がいる。
「タルファ将軍はその扱いかただけではなく、それを効果的に使用する戦術もお持ちでしょうね」
「ああ。そして……。」
「これで、準備はほぼ整った。鉱山労働者たちが、クロスボ……横弓の扱いに慣れたところで……」
「動きますか?」
「ああ。いよいよマンジュークに行くぞ」