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アグリニオン戦記  作者: 田丸 彬禰
第五章 魔都へ
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魔女の副業

 フィーネ。

 勇者チームの一員であり、フルネームはフィーネ・デ・フィラリオという。

 そして、それとは別に彼女には有名なふたつ名があった。


 銀髪の魔女。


 もちろん銀髪はフィーネの長い髪が銀色だったことからつけられたものであるのだが、なぜ彼女が魔女と呼ばれているのか。

 その理由としてまず挙げられるのは、彼女が魔術師であること。

 そして、そこに加わるのが、その強力な魔法によって彼女が挙げた尋常ならざる戦果である。

 といっても、被害を受けているのは、一部の例外を除けばそのすべてが魔族であり、現在はこの世界のどこに行っても通じる「銀髪の魔女」というそのふたつ名の始まりも、勇者討伐のために送り出した虎の子の直属部隊がフィーネの繰り出した魔法によって一瞬で消滅したことを僅かに残った敗残兵から伝えられた魔族軍の将軍カルロ・ベターニアが悔し紛れに発したものだとされている。

 そして、ベターニアの部隊にかぎらず、勇者一行と戦った魔族軍の被害、その大部分はフィーネの魔法によるものだった。

 つまり、フィーネのふたつ名と「銀髪で胸の大きい美女」という容姿だけを知る人間たちが大剣を振るう勇者と彼と一緒に戦う兄弟剣士の功績だとして語る多くの逸話の主役は正しくは三人の剣士ではなくフィーネだったということになる。


 それからもうひとつ。

 それを知る者はこの世に片手の指だけで足りる数しか存在しないのだが、それでもフィーネを語るうえで避けては通れぬものがある。


 それはフィーネが行使するある魔法に関するもの。

 そして、勇者チームのもうひとりの同僚であり、その魔法の名付け親でもあるアリスト・ブリターニャによれば、その魔法はこの世界で唯一フィーネだけが使うことができるものでもある。


 死者蘇生。

 そして、究極の治癒魔法であるそれから派生させた完全再現と完全復元。


 それがその魔法となる。

 もっとも、今挙げた三つの魔法のうち完全再現についてはその所有者であるフィーネはそれを否定する。


「完全再現とは無から有を生み出すとか、土くれから金をつくりだすようなことができるものを言います。私の場合は、金から金貨をつくることはできますが、土から金をつくることができません。不完全再現ですね。私のものは」


 彼女ははこう主張するものの、それとともにこうも言う。


「ですが、便利なものであることはたしかです。なにしろほぼ同類の材料さえ揃えば本来は完成には複雑な工程と長い時間が必要なものであっても一瞬でできあがるのですから」


 そして、フィーネはその魔法を使ってある商売を始めていた。


 その拠点が「ハルワアケボノ亭」であった。

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