消えゆく王都 Ⅷ
一方、そのような騒ぎにも全く動じず静かに自らの死を待つ者たちもいる。
ブリターニャ王カーセル・ブリターニャをはじめとした王族たち。
そこには「ダワンイワヤ会戦」を生き抜いたアイゼイヤとジェレマイアというふたりの王子も含まれる。
また、宰相アンタイル・カイルウスにより高級文官のうち平民及び下級貴族出身者は全員を連れて王都の脱出し王太子アリスト・ブリターニャとともに王国の復興に従事するように命じられていたのだが、それ以外、つまり爵位持ちの貴族の文官について最後の一瞬を家族とともに過ごせるよう自宅に帰されていた。
カイルウス自身も久しぶりに家族のもとに戻り、これから起こることなど何も知らず自分の回りを走り回る幼い孫たちの笑い声の中で最後の時間を過ごす。
軍人の中には家族とともに自死を選ぶ者も出始め、さらに最後のブリターニャ軍総司令官となるベネディクト・レーンヘッドとともに「勝者の門」を開け魔族の陣地に対する最後の突撃を死に場所に選ぶ者も多かった。
むろん一瞬でケリはついたのだが、同じ死であるものの、敵わぬことを承知で撃って出たのは同じく剣での戦いを最後の舞台に選んだ魔族軍総司令官アンドレ・ガスリンに通じる、剣に生きる者たちだけにしかわからぬものがあるとのかもしれない。