すべては闇の中 Ⅵ
その言葉に続いてフィーネの口から語られたのは昨日、つまり、イペトスートを破壊した後に起きた出来事についてだった。
「おい、アリスト。魔族どもの攻撃はないぞ」
「ああ。もしかして、この辺にはいないのではないのか」
「そうだな。あれだけ余裕があって逃げないということもないだろうから」
いくら待っても来るはずの反撃がないことにファーブたちはブツブツと文句を言い始める。
だが、ファーブたちが考えつくことなど当然アリストはわかっている。
問題はこれが何を意味するかということだ。
退避する時間は十分にあったのだ。
当然イペトスートの住人たちが王都から逃げ出したのはわかる。
だが、王とイペトスートを守るべき軍が監視部隊以外は周辺にいないというのはどういうことか。
考えつくのはガルベイン砦を攻撃しているという魔族軍というのは全兵力ということなのだが、さすがにそれは考えにくいうえ、それでは王都から退避した者たちを守る兵がいなくなる。
では、将来のための兵力温存も兼ねて王都を脱出した者たちの護衛に回ったということなのか?
あり得る話ではある。
だが、それでも自分たち勇者が健在であれば、時間はかかるものの、いずれ狩られる。
結局、どこかで戦わなければならない。
そうであれば、戦場はここになるべきもの。
それにもかかわらず魔族軍が消えたということは、ここよりふさわしい場所があるということになる。
それはいったいどこになる?
アリストは必死に思考を巡らせる。