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消えゆく王都 Ⅵ
「そもそも人間世界全体のために自国を犠牲にする為政者など安酒場で吟遊詩人が語る英雄譚の中にだけ存在するものであり、現実世界では起こりえない」
「だが、ブリターニャ王カーセル・ブリターニャの判断はあきらかにその起こりえないことだった」
「では、なぜカーセル・ブリターニャはなぜそのよう判断をしてしまったのか?」
「それは、結局のところ、ブリターニャ王カーセル・ブリターニャのアルディーシャ・グワラニーに対する認識と理解が圧倒的足りなかったからといえるだろう」
「そのため、グワラニー軍に包囲された時点で、生きることを諦めてしまった。つまり、停戦の条件を示したグワラニーの言葉を信用していなかった」
「自分たちを騙し、アリストを害させ、その後滅ぼす気だと本気で思っていた。これまでのグワラニーの行動。そして、契約を律儀に守るという魔族の特徴を無視し、相手が自分と同じ行動に出ると考えてしまったのだ」