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アグリニオン戦記  作者: 田丸 彬禰
第二十八章 滅びの道を選択する者たち
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厄災

 いわゆる「フランベーニュの三大厄災」と言われるものは、「大海賊の宴」によってフランベーニュ海軍が崩壊した「第二次タルノス海戦」と、陸軍だけなくフランベーニュ王国の英雄で宝でもあったアポロン・ボナールと彼が率いる四十万の将兵が失われ、対魔族戦の分岐点となった「クペル平原会戦」、そして、これから始まるフランベーニュという国の崩壊劇となる。


 ただし、これから起こる最後の厄災については、その期間をこれ以前から始まっていたと主張する専門家も多い。

 そして、その始点は大きく分けてふたつとなる。


 ひとつは魔族軍の小麦畑の焼き打ちがその始まりとする説で、実際これ以降フランベーニュは常に食料事情が逼迫し、その後に起こるすべてのことに影響を与えていたのは事実であるので簡単に否定はできない。


 もうひとつはブリターニャによるフランベーニュ侵攻がその始まりだとする説である。

 だが、この戦いではフランベーニュ軍はブリターニャ軍を撃退し、侵攻してきたブリターニャ軍は百万以上の将兵を失っているのに対し、フランベーニュ軍の損害はその十分の一ほどなのだから、勝利と誇れることはあっても凋落の始まりというのは無理がありそうに思える。

 しかし、それは両軍の損害だけを見たものであり、フランベーニュ軍は賠償金こそ受け取ったものの領地の獲得はなく、さらにブリターニャ軍の食料略奪時に起こった虐殺行為により二百万人にも及ぶ非戦闘員の犠牲者を出している。

 しかも、フランベーニュはブリターニャからの賠償金を軍の褒美と戦いに協力したアリターナとアグリニオンの商人たちへの商船の賃料で使い切り、彼らにたいした見舞金を出すことができなかった。

 これが国民の不満の根幹にあるというその根拠は正しいものといえる。


 議論百出。

 だが、結局、前述したようにフランベーニュでは「アリスト・ブリターニャによる厄災宣言」と言った方が通りがいい、「サイレンセスト宣言」がその始まりとなる。

 

 その宣言前と後では国内の情勢が全く違う。

 すなわち、明確に区分ができるというものがその理由となる。


 フランベーニュの大歴史家ショボニー・プラティエの言葉。


「まあ、記録上誰もがわかる期間が必要であるためそう決めただけであり、その根本に辿ればいくらでも遡れる。それこそ魔族との戦いに臨んだところまで。期間などその程度のこと。これを語るうえで大事なのは始まった時期ではなく、そこで起こったことと結果である」


 サイレンセストでおこなわれたアリスト・ブリターニャの宣言。

 その中身の大部分は偽りである。

 だが、父王に対してアリスト自身が説明したようにアリストが邪王アルフレッド・ブリターニャの後継者という話がこの世界の常識となりつつある以上、それを認めたうえ語られたアリストの言葉のみが偽りという主張は相当な努力をしなければ認められない。


 その対策として一番有効な手は事前にその情報を公表することだったわけなのだが、それを知るグワラニーが握り潰した結果、すでにその手は始まる前から消える。

 そうなれば、濡れ衣を着せられたダニエル・フランベーニュが出来るのはひたすらそれを否定すること。

 だが、それもほんの少し前に類似の情報が流されているうえ、数々の失政があるためダニエルの言葉は簡単には信用されない。

 残りは力による鎮圧しかないわけなのだが、それに対する楔がアリストの言葉にあった。


 フランベーニュ軍の占領地をブリターニャに引き渡す。


 言うまでもなく、これは軍、そして国民に対しての裏切り行為にあたる。

 当然大部分の兵はダニエルに忠誠を誓うことはない。

 そうなってしまえば、たとえこれがアリストの謀略だと見抜いた上級指揮官がいたとしても、肝心の兵は動かない。

 無理に動かせば軍が上下に分断される。

 それを避け軍の組織を維持するためには軍は鎮圧に加わらず暴動を黙認するしかない。


 何重にも張られたアリストの罠の恐ろしさである。

 そして……。


 フランベーニュの王都アヴィニア。

 例の報復合戦のため、多くの間者が狩られたため、他国よりも約一日遅くその情報がダニエルのもとに届く。

 もちろん身に覚えのないダニエルは驚き、怒り狂うものの、現在ブリターニャとは国交断絶状態で抗議ができない。

 だが、何もしないというのは腹の虫が収まらない。

 出来もしないブリターニャへの報復を考え時間を浪費する。

 結果的にこれがダニエルの命取りになる。

 そう。

 一日早く情報を手にしたアリターナやアグリニオン経由で「サイレンセスト宣言」の内容が国内に入ってきたのだ。


「宰相殿下。各地でその……」


「宰相殿下に対する猛烈な抗議運動が起こっております」


 書記兼補佐役であるバティスト・セリウラは王宮へ集まってくる情報を伝える。


「とりあえず現在流れている噂はブリターニャ王国王子アリスト・ブリターニャが我が国の瓦解を狙った流言」


「そのような事実は一切ないので安心しろと発表しろ」


 同じ頃、ミュランジ城ではクロヴィス・リブルヌが顔全体で自身の不機嫌さを表現していた。


「……アリスト王子は本気でフランベーニュを潰す気のようだな」


 その言葉を吐き出した直後、リブルヌが視線を動かしたのは副官で若いながらも上官の相談役もこなすエルヴェ・レスパールだった。


「事前に情報を手に入れ、大抵の事なら対応できるつもりでいたのだが、さすがにブリターニャに留まったままでことを起こされては手の出しようがない」

「……たしかに。ですが……」


「宰相殿下の対応が一手遅かったのも事実。噂が国内に広がってからではどれだけ真実を語ろうが、手遅れの感は否めないです。あれは事前に言ってこそ効果があるというものですから」

「そのとおりだ」


「だが、今さら何を言っても手遅れだ」


「我々は我々の責務を果たすだけだ」


 そう言ったところでリブルヌは大きく息を吐きだす。


「こうなってくるとフィラリオ公爵の判断は素晴らしいものだったと言えるな。今からではもう逃げられない。たとえ逃げられても持ちだせる財産のほぼすべてを持ちだしてアグリニオンに行くなどということは無理だろうから」


 そして、もちろんフランベーニュ軍の最前線で指揮を執るアルサンス・ベルナードにも情報は届く。


「……始まったそうだ」


 状況を知らせる王都からの書状を魔術師長であるアラン・シャンバニュールに渡すとベルナードはため息交じりに言葉を吐き出す。


「王都の連中は我々の足を引っ張ることしかやらない」

「王都の連中?王太子の間違いだろう」


 王族に対する敬意の欠片もない自身の言葉に不機嫌さを滲ませる表情で応じるベルナードを眺めながら、シャンバニュールは言葉を続ける。


「だが、その者たちがいなくなっては、前線にいる我々は根なし草と同じ。食料が届かず敵前で枯れゆくのみ。そもそも王朝が倒れてしまっては戦う意味すらなくなる」


「必要があれば王太子を助けに行かねばなるまい」


「しかも、それが事実ならともかく、ブリターニャの王太子の口から出まかせとなればなおさらだ」

「そのとおり」


「だが、ことが大きくなってから宰相殿下を救助に行った場合、我々が王太子派だと思われ、我々も攻撃対象になる。もちろん棒きれを持った程度の群衆など敵ではないが、そうなることは避けたい」


「そうかと言って、今言って王都を離れろと言っても聞かないだろう。宰相殿下は」

「まあ、そうだろうな。それにそれくらいの覚悟がなければ国を動かすことはできない」

「面倒なことだな」


「まったくだ」


 一方、グワラニーはリブルヌやベルナードより約一日早く情報を手に入れていた。

 アドニア、チェルトーザ、さらにワイバーンからも「サイレンセスト宣言」の詳細とその後サイレンセストで続く歓喜の宴の様子が速報として入ってきていたのだ。

 それに続くのはフランベーニュ各地で起こる反ダニエルの抗議運動について。


 むろん前者についてはフィーネより聞かせられていたとおりであったので驚くことはひとつもなかったのだが、後者についてはグワラニーにとっても想定以上の大きさであった。


「……足元の火消しの前に報復を考えたということでしょう。あきらかに順序を間違えましたね。ダニエル王子は」

「ああ」


「だが、さすがにこのまま見殺しというわけにはいかないだろう。今回の件について彼は完全に無実なのだから」

「ですが、こうなってしまえばフランベーニュ軍は大々的には動けない。そうなると我々が動くしかないでしょう」

「そうだな。それについてはリブルヌ将軍とベルナード将軍に許可を取る。もちろん不可となれば諦める。だが、おそらく了承するだろう」


 翌日、グワラニーは再びリブルヌを呼びつける。

 むろん丁寧な言葉と十分な作法に則って。


「やってきましたね。アリスト王子は」

「ええ」


 挨拶代わりにそのような言葉を交わしたところでグワラニーが問うのはむろんフィラリオ家の国外脱出についてだった。


「フィーネ嬢の家族はどうなりましたか?」

「すべての面で完璧でした。おそらくアグリニオンで現在のフランベーニュの状況を聞いて胸を撫でおろしているでしょう」

「それはよかった。これで私も彼女に殺されずに済む。これは何かお礼をしなければなりませんね」


 実をいえば、これはいわゆる誘い水。

 ある言葉を引き出すための。

 そして、グワラニーの希望通り、それはやってくる。


「そういうことであれば、こちらのお願いをひとつ叶えていただきましょうか」

「さすがに降伏しろと言われてもできません。とりあえず実現可能なものでお願いします」


 リブルヌはわざとらしい咳払いで仕切り直しをした後に口にしたその言葉に対し、グワラニーはそう冗談で応じたが、むろんグワラニーが待っていたのはこの言葉。

 そして、予想どおりそれが示される。


「わかっているとは思いますが、現在フランベーニュ国内は王都で暴動が起きることは避けらない。そして、最終的には宰相殿下の命が失われる」


「本来であれば鎮圧に動く軍も、兵たちがあの噂を信じているので、積極的に動くのは難しい」


「だが、一国の王太子が暴徒に殺される。しかもその王太子は無実。それにもかかわらず、軍はその事実を知りながら動かないとなれば後世の者にフランベーニュ軍のみならずフランベーニュという国そのものも嘲笑されるのは間違いない」


「それだけは避けたいのだ」


 グワラニーは心の中で雄叫びの声を上げるものの、表面上はそれとは対照的な表情をつくる。


「それは結構な話ですが、具体的に我々は何をすれば?」

「軍の代わりに宰相殿下と国王夫妻の安全の確保をしてもらいたいのです」

「なるほど」


 グワラニーはそう言って自身の表情に厳しさを滲ませる。

 そして、これまたつくりものの思案顔で時間を潰す。


 数ドゥア後。


「ちなみに国王陛下も王宮にいらっしゃるのですか?」

「いや。王都から離れた『冬の離宮』と呼ばれる場所におられるが、仕事を受けてくれるのであれば、その場所は案内します」


「保護した後の行き場は?」

「さすがに魔族の国へというわけにはいかない。アリターナかアグリニオンとなるだろう。それについてはこちらが手配するので、保護してもらうそれだけで構わないです」


リブルヌの言葉にグワラニーは頷く。


「もうひとつ」


「この件をベルナード将軍はご存じか?」

「むろん。というより、これはベルナード将軍の指示だ」


「軍が動けない以上、一番信用できる者に頼むしかないだろうと」


 自身の問いに対して返ってきたこの言葉にはさすがのグワラニーも苦笑するしかなかった。


「ありがたいお言葉ですが、さすがにそれは言い過ぎでしょう。とりあえず我々は敵同士ですよ」

「たしかにそれはそうなのですが、ベルナード将軍はあなたに関しては非常に信用している。もちろん実際に戦えば容赦しないでしょうが、それ以外のところでは誰よりもあなたを信用している」


「もちろん私も。ですから、こうやってここに来ているのですよ」


 この手の話は話半分と考えるべき。

それはグワラニーも十分に承知しているが、それでも戦っている相手にここまで言われて悪い気はしない。

しかも、その気でいたのだ。

流れとしては完璧といえるものといえるだろう。


「わかりました。そこまでは言われては出来るかぎりのことをしなければなりませんね」


「そして、やると決めた以上、相手は三人とも助けたい。具体的な話をしましょうか」


「では、何から……」

「とりあえず、王夫妻が逗留している『冬の離宮』の場所を確認しておきたいです」


 もちろんその場所への移動は転移魔法を利用するわけなのだが、もし、フランベーニュ側にグワラニーを狩る気があれば最大の狙い目が転移直後。

 これがそのための罠でということはほぼないと思っても、用心しすぎということはない。

 なにしろ、そうは見えないが両者は敵同士なのだから。


 当然グワラニーは盛大に保険をかける。

 自身とデルフィンの代わりに配下の魔術師を数人先行させて王宮近くまでの経験を積ませる。

 もちろんリブルヌ配下の魔術師がその導き手になるわけなのだが、そこにリブルヌも同行させるという念の入りようで。

 その際に周囲の警備状況も確認させたことは言うまでもない。

 ただし、それはすべてが余計なひと手間となる。

 なにしろ、リブルヌはグワラニーを討つ気など全くなく、それどころか、フランベーニュ軍はグワラニーに王夫妻を救ってもらわねばならない立場なのだから。


その翌日。


「……その……」


「本当によろしいのですか?離宮の場所まで教えてしまっても……」

「よくはない」


 リブルヌからグワラニーが依頼を承知した旨の報告を持ってきた副官のバスチアン・リューがそう尋ねた相手は不機嫌そうな表情でそれに見合う声色でそう答えた。


「だが、我々が動けない以上、止むを得ない」


「それに相手だって転移直後に狙い撃ちされる危険を冒してまでこちらの要請を受けたのだ」


「こちらも相手を信じるしかない。そうやってお互いを信じてこそうまくいく」

「つまり、ベルナード様はグワラニーという魔族を全面的に信じると?」

「そうだ」


「忠臣ズラした愚か者がいるかもしれないが、ここでハッキリさせておけば……」


「もし、国王陛下救出をおこなおうとしたあの男を騙し撃ちにしようとする者がいたら、魔族がおこなう前に私がその者を八つ裂きにする」


 そう言ったベルナードは薄く笑う。


「私に言わせれば、あの小僧は……」


「こういう時にでも裏切り、騙し討ちがあることを考慮しなければならない人間よりもよほど信用できる」


「ところで……」


「その生意気な小僧から出された宿題だが……」


「おまえはどう考える?」


 ベルナードはそう言って若い副官を見やった。


 実をいえば、ダニエルと王夫妻を保護する仕事を受けるに際し、グワラニーはリブルヌに対してこのような助言をしていた。


「他国、しかも、戦っている国の者が口を挟むことではないのは十分に承知していますが、三人を保護し、他国へ移送した場合、彼らに代わる者を用意しておくべきです」


「そして、その者は王族でない者が望ましいでしょう。本来であれば、貴族も除外すべきでしょうが、そうなると人選が非常に困難になるためそこまでは求めませんが」


 むろん、リブルヌはその場では何も答えず話を流した。

 だが、当然ベルナードにはその話をし、現状で国をまとめ上げられるのは軍人でなければならないとし、ベルナードに臨時の国王になることを要請していたのだが、ベルナードは回答を保留していたのだ。


「私はリブルヌ将軍の意見に賛成します」


「やはり、ベルナード様が国の頂点に立つべきかと」

「だが、私は前線にいる」


 国王が前線で戦う。

 これは多くの英雄譚に登場する理想的な王の姿であり一見すると望ましく思える。

 だが、これはいわゆる会戦のような一時的な戦いの場合の話で、現在のベルナードのように前線に張りついているような状況ではそれはむしろ好ましいものとはいえなくなる。

 まず、王が前線にいることは、兵士の戦意高揚にはなるが、常に戦死の不安がつきまとう。

王の戦死はどれだけの影響が出るかはいうまでもないこと。

 さらに、前線に張りついていては肝心の国政がおろそかになる。


 国王は王都に留まるべきもの。


 これがベルナードの短い言葉に含まれている意志となる。


「……となると、ロバウ将軍?それとも、リブルヌ将軍ということでしょうか」

「なぜ陸軍に拘る?海軍にもいるだろう。よい人材が」


 むろんベルナードの言葉が誰を示しているかはあきらかだった。


「ロシュフォール提督ですか?」

「陸軍は日々命を削って戦っている中で海軍は船がなくて上も下も港で遊んでいるのだ。こういうときくらい国の役に立つべきだろう」


 もちろん最後の言葉はジョークである。

 だが、その前に言葉は本気。


 つまり、ベルナードが考える臨時国王、その本命はロシュフォール提督。


 これまでの数々の実績。

 それから名声。

 さらにいえば、人格も非常に優れ、軍人にある陸海軍の縄張り意識からも乖離しているという話は何度も聞かされている。


 たしかに「新・フランベーニュの英雄」であるロシュフォールが国の頂点に立てば崩壊しかかっている国の立て直しは可能かもしれない。

 それでも、陸軍に所属し、ベルナードが自身の直接的な上官であるリューにとってそれは残念なことである。

 

「ミュランジ城と王都のロバウ将軍とロシュフォール提督に私の意向を伝えてくれ」


 ベルナードのその言葉によって副官が下がったところで代わりに姿を現したのは魔術師長であるアラン・シャンバニュールと副魔術師長ジェルメーヌ・シャルランジュだった。


「リブルヌ将軍への返答かな」

「ああ。ロシュフォール提督を代わりの国王に推薦しておいた」


「まあ、妥当なところだな」


 シャンバニュールはそう言ったものの、言葉はそこでは終わらなかった。


「てっきり知り合いの魔族を推薦するのかと思った」

「冗談を……」

「冗談を言ったつもりはないし、将軍だって薄々気づいているのだろう」


 実は図星だったのだが、何食わぬ顔でそう言いかけたベルナードの言葉を遮るとシャンバニュールはそのまま言葉を続ける。


「……戦いはもうすぐ終わるというこの世界の流れを」


 そう言ったシャンバニュールの視線はなにか遠いものを見ているようであった。

 そして、その言葉は続く。


「……世界はふたつに集約されつつある」


「アリスト・ブリターニャと彼の護衛。いや、勇者という駒を手に入れたブリターニャ。それから、アルディーシャ・グワラニーという逸材が現れた魔族。このふたつだ」


「そして、そのすべてが驚くべきことに人間であるはずの勇者ではなく、敵であるはずの魔族であるグワラニーのもとに集まった」


「一見すると皆グワラニーに屈服させられ、従属させられたように見えるが、必ずしもそうではない。ただ、その中心にあの男がいるだけ」


「自身にとってより明るい未来はアリスト・ブリターニャが導くブリターニャの栄華に他国が奉仕するものではなく、グワラニーが導く戦いが終わるノルディアと魔族のような関係にあると信じて」


「フランベーニュもそこに加わるべき。私はそう考える。これまで何度もあったその機会を逃してきたが、今度こそ逃してはならない」


「フランベーニュという国家が生き残りたいのであれば」


「ついでに言えば、一時的にでもグワラニーにフランベーニュをそっくり支配させれば相応の形で生き残れるが、そうでなければ残るのは名前だけになるかもしれない。つまり、本当の意味で望ましいのはグワラニーへの従属」


「そして、王太子がすべてを拒否した場合……」


「フランベーニュは完全に終わる」




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