グワラニーの大返し
「終わりましたね」
「ええ」
五人の後姿を眺めながら安堵の表情を浮かべるペパスからやってきた言葉にグワラニーは短い言葉で応じた。
ペパスはさらに言葉を続ける。
「それで、どうでしたか?勇者一行は?というより。アリスト・ブリターニャは?」
「あれは本物の君主ですね」
「ですが、長男であるにもかかわらず次期王位は約束されていないようでしたが?」
「たしかに」
「まあ、その辺の経緯は我々にはわからないし、我々の立場からいえば、あのような人物にブリターニャ王になってもらわぬほうがいい。まあ、目の前に突然現れる冒険者であるのも困りものではありますが」
「まあ、とにかく彼らが引き上げたのですから、彼らについて一旦忘れましょう。今の我々はやるべきことが山積している。まずはミュランジ城。攻略部隊はほぼ壊滅している。一応バイアに兵を預けて進出させているが、結局向こうも相手と交渉し話をつけなければならない。つまらないことからバイアたちが戦闘に巻き込まれぬ前にケリをつけるため主力を連れて今晩中にクペル城に戻りたい。それにあたり、こちらについてはどうしたらよいか、意見が聞きたいのですが」
「そうですね……」
「やはり守備隊は配置すべきでしょう」
「本来であればフランベーニュが手出しせぬようにそれなりの数は置くべきですが、実際のところ我が軍にはそのような余裕がない。とりあえず私が連れてきた二千をこの方面の守備隊としておきましょう」
「指揮は?」
「ウビラタンとバロチナに任せればいいでしょう。彼らはグワラニー殿の意向をよく理解しているのですから軽々しく戦闘に入ることはないでしょうから」
グワラニーその言葉に大きく頷く。
「我々は一刻も早くクペル城に戻る必要がありますので、将軍には残留部隊の編制をお願いしたい。作業が終わり次第戻りますので」
「承知した。そういうことであれば、魔術師長に話をつけ魔術師を手配してもらいましょうか」
その言葉を残して町の中心部に戻っていくペペスの後姿をチラリと眺めたグワラニーは元の世界の歴史にあったある出来事を思い出す。
……ギリギリの交渉で大敵と停戦し崩壊寸前の戦場へ転進する。
……まるで、中国大返しだな。これは。