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#82 会談

帝国からのお客様が来なくなり、静かに数ヶ月が過ぎた。

新手のお客様が来なくなったとはいえ、捕らえた500名以上の捕虜に何時までもタダ飯を食わせておくわけにはいかない。


「なぁ、何時まで面倒見てやるん?

帝国に食費とか宿泊費の請求出来へんの?

あんだけおると邪魔なんやけど…… 」


シャーロットだけではない。

その他の支社長からも、捕虜の皆さんが実家に帰れるように1日も早く段取りしろと言われているのだ。


今回ターゲットにされたのは、GSU領内とはいえ正規の騎士でも戦闘部隊でもない victory order社で、帝国はGSUの正規軍にはかすり傷1つ損害を与えていない。

だが、非正規とはいえ、我が社の社員達がGSUの防衛に欠かせない戦力として領内で認識されているのは確かだし、何より、GSUの安全保障トップの私が管理している組織だ。


「シャーロット、明日には帝国の担当者に手紙が届くはずです。それから数週間後には、一人残らず国に帰ってもらいますからね」

「ホンマに!?」


……………………………………………………………………………………


「クリストフ!! GSUの雑種から手紙が届いているぞ!! まったくとんでもないヘマをしてくれたもんだ!!」

「メシ食ってる時にうるせぇんだよ。で? ラブレターの内容は? ケツなら要らねぇって言っとけよ?」

「V.Oに対する襲撃事件についてだ!

GSUの領土防衛の一翼を担うV.Oに対する、執拗で非常に危険な襲撃事件について、ゲヴァルテ帝国軍の関与を示す明確な証拠があると言っている!!

魔導師連隊の司令官を含む、現役の将兵500名以上を生け捕りにした結果! 我々の関与を確証するに至ったとある!!

魔道砲をぶち込んで、捕虜になったマヌケ共を全員ぶち殺してやりたいところだが!! ある提案を飲むのであれば! 魔王軍と対峙している現状や、魔の森しか特産品のない属国とその国への物流、それ等と互いの国民感情を鑑みて穏便に済ませてやると書いている!!」

「あ? どんな提案だ?」

「軍部長官である貴様と雑種の個別会談、それに金銭的な賠償だ!!

行ってこい!! 誘い出して魔道砲を誘導しろっ!!」

「行くのは構わねぇが、魔道砲は無しだぜ?

どうせ、クッソ硬ぇ結界を張り合わせまくってるだろ。

通用しねぇ魔道砲より勇者を借りる。

それが参加の条件だ」


ゲヴァルテ帝国軍のトップ、クリストフは快諾し、手紙と共に贈っておいた通信用魔道具を受け取ったのだ。


私は、GSUの高官ではなくvictory order社の代表取締役として、クリストフに連絡をとった。


帝国とシェフシャ王国の国境の何処かに、半径5kmの非武装地帯を設定し、両者で費用を負担して連絡所を建設する。

そこで会談を行うが、その際、随伴する護衛も武装も無し。


この条件をクリストフを快諾し、その日の内に、互いの国から技術者を派遣し、連絡所の建設が始まったのだ。


「なぁライ、どんな無茶な要求を吹っかけるんだ?」

「掛かった経費の請求はしますが…… 要求自体はそれだけです」

「おいおい…… 費用の請求は大事だけどよ、負傷した社員も10や20じゃないんだぜ? 経費とは別に、慰謝料として目ん玉飛び出すぐらいの請求しなきゃケジメが付かねぇぞ?」

「…… それも悪くないんですがね」


エスカーの言うことも一理ある。

だが、それよりも状況を変えなくてはならないのだ。


……………………………………………………………………………………


連絡所の建設は急ピッチで進み、ものの2週間で完成した。

地上には祠程度の建物が建ち、入れば直ぐに階段だ。

その下は、魔道砲の砲撃に耐えられるように地下80mにシェルターの様なものが存在していて、会談の会場となる。

その建物から半径5km以内は、そもそも立ち入り禁止区域となり、何の気配も無い不思議な空間となったのだ。


会場の座標を伝え、後はその日が来るのを待つばかり。


「ラー、ホンマに護衛は要らんの?

ベルめっちゃ着いて行きたそうにしとる」

「心配してくれてありがとうございます。

ですが、大丈夫ですよ。参加者は、武装せず、護衛も付けず会談に臨む約束ですから」

「お父様、シェフシャ支社の戦力は相当な水準に引き上げられております。私は、王国内を警邏し、支社の義務を尽くす彼等を信頼していますわ」

「…………」

「会談中、万が一異常を察知すれば、私は問題を解決する為に、会場或いは帝国へ向かう所存です」

「フフっ、頼もしいですね。問題が発生しないよう立ち回るつもりですが、万が一の時は頼みますね」


ベルとて、帝国に向かえば生きて帰れる保証は無い。寧ろ、死亡する可能性が高い。

厄介な魔道具、無数に配備された最新の魔道砲、在籍する相当な数の英雄、圧倒的な兵力、広大な国土……


そして、勇者。


それ等全てが行く手を阻む。


「では、行ってきます」


約束通り武装はせず、予定時刻の15分前に会場に入った。

座標を伝えてあるので、転移魔法を使えば一瞬だ。

暫くすると、地上の方に気配が現れ、その気配は地下へと降りてくる。


「あ! ラインハートさん! 久しぶりだね」

「…… 咲煌さん、お久しぶりです」

「よぉ、まだ遅刻じゃねぇな? 俺が帝国軍を仕切ってるクリストフだ。よろしく頼むぜ?」


まぁ約束を守るとは思っていなかったが、まさか勇者を護衛として連れて来るなど、夢にも思わなかったわけだ。

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