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55/98

#55 未知

「ラインハート、報告を」


シェフシャ王国から魔王ミアが戻ったので、私は通信用魔導具の相談をしようと、会議室に彼女を呼んだ。

そこで、魔王ミアは私の様子がおかしい事に気が付き、まるで上司と部下だった頃のように余所行きの口調で問い掛けた。


「…… 昨日、人事部長が依頼に訪れました」

「何処の人事部長かしら?」


私は、その圧力に屈し昨日の出来事を話た。

それを聞いた魔王ミアは、一瞬険しい表情になったが、それ以上は何も無かったのだ。


戸惑いながらも、私は本題に入り、一通りの要求を伝えると、魔王ミアは試作品を作ってみるとだけ言い残し部屋に戻っていった。


「ライ、ミア様ってすごいね」

「…… ?」

「肝心なところでは、絶対に自分を出さないよね。本当はすごく優しくて、おっとりしてて、スタイル抜群で、すごくセクシーでキュートで…… ライは、ああいう人どう思う? タイプ?」

「…… あの方は、私の憧れです。上司と部下の関係ではなくなった今、あの方は憧れ以上でも以下でもありません」

「そうだよね。女の私でも、ミア様と目が合ったらドキッてするもん。うん、そうだよね」


昨日に引き続き、今日も不穏な一日になりそうだ。魔王ミアと気まずくなり、その直後にルミナの様子がおかしくなってしまった。

元気がなくなってしまったルミナは、買い物に行くと言い会社を出たが、魔力反応は山の方へ向かっている。嫌な事があった時や、考え事をしたい時に行くと言っていた、旧東トリアの山だ。

悩み事か嫌な事、若しくは両方か…… 。


私は、その状況を更新したくなりルナに相談した。


「スイーツで釣れば? シェフシャ王国で人気のショップが、ストラス王国にも出店したのよ。私の分も買ってきてくれるならオススメを教えてあげるわよ?」


それで機嫌が戻るのなら安いものだ。

私は、ルナに教えてもらったスイーツを買いに出掛けたのだ。


「旦那すまねぇな、今日は売り切れちまったんだ。本店には、まだあるかも知れねぇけど」

「…… そうですか。では本店の方へ伺いましょう」


こんな日は、何かと重なってしまうものだ。この世の中で自分でコントロール出来る事など高が知れていて、天気や風の強さに時間、今日のように ”運” なんてものも、勿論操作出来ない。

だが、それもまた一興と割り切って楽しむべきだと思うし、何なら抗ってみるのも、また一興だ。


「善は急げですね」


私は、転移魔法でシェフシャ王国に移動したのだった。


……………………………………………………………………………


「ライは買い物か? どうでもいい話なんだけどよ、久しぶりにダークドラゴン見たぜ」

「私も見たわ。見付けたら対大型魔獣殺傷術式(ゲオルギオス)ぶち込むことにしてるの」

「何でだよ……」

「当たらないからよ。あんな巨体なのにさ、信じられない動きするでしょ? 修行の励みになるわ」


ドラゴンと呼ばれる魔物は、実はかなりの種類が確認されている。

ゴンドワナ大陸には、全長10m程で分厚い鱗に覆われた地龍や、翼幅6m前後のイエロードラゴンと呼ばれる魔物が生息しているが、それ等は討伐対象だ。

つまり、”倒せる魔物” なのだ。


だが、ダークドラゴンは違う。

巣も卵も発見されていなければ、死骸の発見さえもない。翼幅は目算70~100mという巨体だが、ルナのように魔法を撃ち込んでも、まず当たらない。

超高速で飛行しているダークドラゴンは、100%から減速無しで一気に0%、つまり完全に制止する事もあるし、速度を維持したまま慣性の法則を無視して急旋回を繰り返す。

ダークドラゴンとは、そんな非常識な生き物で、その非常識な生き物を仕留めるべくルナは魔法の特訓を欠かさない。


彼等がドラゴンの話で盛り上がっている頃、私は非常に残念な状況に遭遇していた。

ストラス王国の支店で売り切れていたスイーツを買うために、大急ぎでシェフシャ王国の本店に行ったのだが、店は信じられないほど繁盛していて長蛇の列が出来ていたのだ。


私の前後に並んでいる女性達に、何を買いに来たのか尋ねると、お目当てはルナの言っていた新発売のスイーツだった。

人気なのは分かったが、これだけ並んでいては在庫が心配になる。結局、私は1時間半並んだ挙句、スイーツを買うことが出来ずに帰路についた。


……………………………………………………………………………


行きは転移魔法だったが、帰りは馬車だ。

頼みの綱であるスイーツを買えず、だからといって代案を思い付くだけの引き出しも無い。辺りはすっかり暗くなってしまったが、私は馬車の中で、じっくり解決策を考え続けたのだ。


ストラス王国との国境まで数kmという所で、ふと大陸の南北を隔てる山脈に違和感を感じた。それは、以前 ”謎の長方形” を見た場所だった。

そして目を凝らして見てみると、やはり ”謎の長方形” は存在していたのだ。


「ここまでで結構です」

「え!? 旦那、会社までは歩けば6時間はかかるぜ?」


用事が済めば転移魔法で帰るので問題無い。

私は、この ”謎の長方形” が気になって仕方なかった。昼間には現れず、夜になれば現れるかといえば必ずしも現れるわけではない。

現れたのならば、調査すべきだろう。


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