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#49 聖絶の執行者2

「いいか? 俺の身に起きた事をありのまま話すぜ?」


トリア王国でGSU創設記念式典が行われた2日後、シェフシャ王国の騎士団詰所で、騎士達は ”とある騎士” の話に聞き入っていた。


「お前らが、街で女の尻を眺めながらダベってる頃、俺は国王の護衛でトリアに居た。新築された城は、もうそりゃ立派だったぜ?

んで、新築された城なんて滅多に見れるもんじゃねぇから、此処ぞとばかりに見て回ってた。そんな事してたら、式典自体はあっという間に終わっちまって、ナホカト国ご一行は先に帰っちまったんだ。しばらく待ってたが、国王はアルザスの旦那との会談が長引きそうだってんで、俺達は王妃様と王子、それにvictory orderの幹部を馬車に乗せて、シェフシャに戻る段取りを始めたんだ。

トリアの騎士団にも挨拶しなきゃならねぇしな。

で、トリア城を出発して1時間ぐらい経った頃だ。俺達はストラス王国の国境まで後15kmの距離に居た。

その時だ。突然、目の前が真っ白になったかと思ったら、今度は真っ暗闇になっちまった。そこで、俺の記憶は一旦途切れてる。多分、意識を失ったんだろうな」


……………………………………………………………………………


遡ること2日前。

式典が終わると、加盟国の君主達は早々に解散した。一番早く帰りたがったのはレオノールだ。

地理的に一番遠いというのもあるが、何より、現在も城に軟禁状態のロレーヌを早く自由にしたかったのだろう。


「俺も帰るぜ! 山積みの仕事が待ってるからな」


最初はやる気の無かったザーヒルも、最近は君主業に真摯に取り組んでいる。実に良い傾向だ。

そんな中、唯一アリシオンだけはアルザスと個別会談を行う事になり、その日は滞在する事になったのだ。


「クロエ、すまないが先に帰って、アレクと一休みしといておくれ」


クロエにそう言うと、アリシオンはそのままアルザスと城の中に消えて行った。


「ラー! 私もクロエと一緒にシェフシャに帰るわな! あの馬車、乗り心地最高やから楽なんや!」

「えぇ、では気を付けて」


私はルミナと一緒に帰るのだが、彼女が素晴らしい景色が観れるであろう場所を知っていると言うので、たまには息抜きも必要だろうと思った私は、彼女の提案に乗り、旧東トリア側の小高い山へ向かったのだ。


山の中腹に馬車を停め、私とルミナは山道を歩いた。山道を登り始める前は、いつも通り会話していたのだが、山頂が近付くにつれルミナの口数は減り、やや下を向きながらトボトボ歩きになっていた。

思い当たる事と言えば、素晴らしい景色を観れるかも…… と言っていたので、もし観れなかった時に無駄足になってしまう心配をしているのか、若しくは、単純に疲れてしまったかだ。

私は、予定通りに素晴らしい景色が観れなかったとしても気にはしない。

私が気にするのは、前を向いて歩かないルミナが、何かに躓いて転んでしまわないかという心配だ。


「ルミナ、足元が悪いので私の手を握っておいて下さい」


相変わらず、やや下を向いているルミナは、何も言わずに差し出した手をそっと掴んだ。


山頂に着くと、目の前には移転したてのトリア王都が見えた。それは、眩く光る宝石を散りばめたような、とても素敵な夜景だったのだ。


「綺麗な夜景ですね。それに、この場所は静かでとても心が落ち着きます」


この夜景が見える事を予想していたであろうルミナは、いつもの明るい表情に戻っていた。


「ここはね、どの街からも離れた場所だったの。魔物もいなくて静かで、嫌な事とか、一人で考え事したい時によく来てたわ。

ここにトリアの王都が作られる前は、遠くに東トリアの王都と、ストラス王国が見えて、すっごい遠くにセレウキア王国の街が見えて、天気が良かったら西トリアの端にある小さな街も見えたわ。さすがにサファヴィー公国までは見えないけ……」


ルミナがサファヴィー公国の方を指さした時だ。そのサファヴィー公国の方角から一閃の光が飛来し、地面に接触した瞬間、激しく爆ぜた。


「!? …… ルミナ、魔道砲です!!」

「え…… 何で? 何でこのタイミング…… なの?」


パニックになっているルミナを抱きかかえ、私はvictory order本社へ転移した。

ルミナを本社に送り届け、着弾地点へ急いだのだ。


……………………………………………………………………………


「どのぐらい意識を失ってたかは分からねぇ。でも、10分やそこらだと思う。

俺が気が付いた時、辺り一面、煙と炎でえらい事になってたんだ。

何が起こったのかは分からなかったが、とにかくヤベぇ状況だって事だけは分かったんだ。周りには、一緒に護衛任務に付いてた連中の腕とか足とかが散乱してて、俺も耳が全く聞こえない状態になってた。でも、俺は王妃様を守らなきゃって立ち上がろうとした。でも、無理だった。

なんせ、俺の下半身はイチモツ諸共吹き飛んでたんだからな。

俺は思ったよ。もう誰も生きちゃいねぇし、俺も3分後ぐらいには死んじまってるんだって。

後で聞いたが、色々とおシャカになっちまった原因は、サファヴィー公国のブッ放した魔道砲で、着弾地点は王妃様の乗った馬車だったらしい。

王妃様が乗ってた馬車の残骸が、イヴエの森で発見されるぐれぇ派手にぶっ飛ばされちまったわけだ。

どう考えても生きちゃいねぇって思うだろ? でもな、生きてたんだよ。

俺は確かに見たんだ。煙と炎の中に、青黒い膜みてぇな結界に守られた王妃様と王子、それにvictory orderの幹部の姿を!」


……………………………………………………………………………


« おい、早く終わらせろ!»

「急かすなよ。楽しいピクニックは始まったばっかりだぜ?」


着弾地点には、サファヴィー公国の駐トリア外交官にして ”英雄” 、アドルフィトの姿があった。


«生きている者が居るかも知れないだろ! 警戒を怠るな! アリシオンの死亡確認を最優先だ!»

「生きてる訳ねぇだろうが。もし生きてたとしても、そいつは何時死んでもおかしくねぇ状態だろ? そんな運の無ぇ死に損ないに、トドメの剣を突き刺して回る、訓練も技術も必要ねぇガキでも出来るラクな仕事だ」


アドルフィトは、楽しげに馬車の残骸や人体の一部が散乱する着弾地点を捜索し始めた。

魔道砲のオプションで、長距離通話を可能にする魔道具を片手に徘徊するアドルフィトは、既に死亡している騎士の亡骸にも剣を突き刺して、とてもご満悦だったそうだ。


「ん? 何か動いたか?」

«どうした? まさかと思うが生存者が居たのか!?»


ドガッ!!


アドルフィトが見たのは、大破した馬車の残骸を踏み付け、煙の中から現れる ”侍女(メイド)” の姿だった。


「お父様が言っていた。魔道砲の精密射撃には、正確な座標を伝える斥候が必要だと……

それは、貴様なのだな?」

「こいつは驚いたぜ…… 魔道砲の直撃食らって生きてやがる」


私の娘、最強のシャーロット専属護衛 ”ベル” は生きていた。と言うより、完全に無傷だった。

アドルフィトは何かの冗談だと思ったようだが、現に、目の前には無傷の侍女が居るのだ。最早、信じるしかない。


「シャーロット様と、ご友人を危険に晒したな?」

「アリシオンは乗ってねぇ。乗ってたのは第2王妃とV.Oの幹部だ」

«作戦は失敗だ! 放棄して帰投せよ!»

「…… 戻れる様な状況じゃねぇ。コイツを始末しねぇと大変な事になりそうだ」


結界の外に出たクロエは、シャーロットに問い掛けた。ベルは、シャーロット専属の侍女じゃないのかと。


「そうやで? でも前に言ったやろ? 超強い護衛侍女やって!」


確かに、以前聞いた事があった。

シャーロット曰く、社長の個人レッスンを修了した唯一の人族で、その実力は ”victory order社基準でS+” だと、その辺は聞いていたのだ。

だが、常にシャーロットの傍に控え、礼儀正しく控え目なベルの様子からは、少なくとも戦闘を行うイメージは想像出来なかった。

だが、シャーロットは頻繁に ”私専属の侍女兼、最強護衛やで” と確かに言っていたのだ。


「クロエ、私は怪我した騎士を助けてくるわな! じゃ!」


敵兵が居る状況で、それを気にせずに動き回るシャーロットの姿は異様に見えた。

だが、それはベルの戦力が、明らかに敵兵を上回っている事を意味していたと、そう理解出来るまで時間はかからなかったそうだ。


「おい、若白髪。てめぇはV.Oの幹部か?」

「幹部ではない。シャーロット様専属の護衛。この命の限り、あの方を守る…… それが私の任務だ」



幹部でもない一介の兵士が魔道砲の直撃から同乗者を守り、無傷で生存している事にアドルフィトは困惑した。

最新の魔道砲の威力は、直撃すれば万全の防御体制を整えた英雄と言えども無事では済まない。


(V.O在籍の英雄で確認されてんのは、同僚殺しの殺人鬼が2人だけだったはずだ。なら、コイツは支援型か?)


アドルフィトが考えたのは、目の前に居るのは、防御特化型の無名の英雄である可能性だった。有名な英雄は、揃いも揃って攻撃特化ばかりで、防御や阻害に特化している英雄は、危険度の低さ故にあまり知られていないのだ。

防御特化は厄介だが、時間を掛ければ狩るれる相手という事になる。だが、その護衛を自称する娘が亜空間から取り出したのは 、なんとも扱いづらそうで ”巨大で攻撃的な戦斧” だ。

防御特化と高を括ってはいるが、アドルフィトは油断する事なく備えた。


「…… 私を ”本気” にさせたのは、お父様以来だ」

「そいつは光栄だ。だが、せっかく本気になったとこ悪ぃんだが、お前は早くもくたばる事に……」


馬鹿な事を言い終わる直前、アドルフィトの視界は真っ二つに裂けた。

彼の反応速度を遥かに上回る超神速で、巨大な戦斧が顔から胸にかけて打ち込まれたのだ。

彼は、決して目を逸らしたりはしていないし、何なら瞬きもしてないだろう。


「がっ…… あぁ……」

「貴様の事ではない。私を本気にさせたのは、貴様の属する国家だ!!」

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