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#44 多忙な日々

「お越し頂き有難うございます。ロムロさん」


各国の支社で面接が始まり、ストラス王国の本社でも同様に面接が行われていた。

大量採用なので、それなりの期間を設けているのだが、その期間と面接希望者の多さから、厄介な者を面接する事も珍しくはない。

今日は、南部のセレウキア王国からやって来た貴族を、何故か本社で面接する事となった。

現地の雇用を守る為に、他国の者は事前にお断りしているのだが、このロムロという貴族は、何度も断っているのに執拗く応募してくるのだ。


「トリア王国支社でも言われていると思いますが、今回の募集では、現地の人材を優先的に採用させて戴いております。もし定員割れになった場合は、2次募集を行いますので今暫くお待ち下さい」

「待てないからストラスまで来てんだよ。

大体さ、アンタ社長だけど、どんだけ自分が偉いと思ってんだ? 王族でもなけりゃ貴族でもねぇくせによ」

「仰る通りです。私は社内では立場的に強いですが、外に出れば ”ただの民間人” ですので、特別偉くはありません」

「だったら、外で偉い俺の言う事を素直に聞いといた方が良いだろ?」


まぁ、こんな具合いで ”自分勝手に振舞う” 面倒な輩だった訳だ。

帰れと言っても帰らないし、不採用は確定済だが、私は面接を始める事にした。


「現在のランクは?」

「Aランクだ」

「Aランクですか、お強いのですね。では応募した動機は?」

「目星い奴を、私兵として引き抜く為だ」

「…… 我が社の社員は優秀ですからね。非常に素直な答えをありがとうございます。面接は以上で終わりです、屋敷の方に書類を送っておきますので、ご確認お願いします」

「すぐに届くのか?」

「速達なので、3日以内には届きますよ。では本日はありがとうございました」


やっと猿は帰って行き、私は解放されたのだ。ルミナに不採用通知の送付を指示し、次の面接の前に一息つく事にした。

全く喋らない者もいれば、母親と来る者、さっきの猿の様に、権力と若さを取り除けば何も残らない者もいる。

まったく、くだらない時間を過ごさせてくれる連中だ。


その1週間後、全ての面接が終わり、各国の支社で予定通り2500名を採用する事が出来た。

今後、6ヶ月間の基礎訓練を実施し、適正とランクを考慮した上で配属先を決定していく事になる。勿論、この6ヶ月間の間に音を上げる者もいるだろうが、そんな者は、元々victory order社では生きていくことは出来ないのだ。


…………………………………………………………………………


基礎訓練も始まり、敷地内の訓練施設では、ベテラン社員達の怒号が響き渡っていた。


本社でも同じように怒号が響き渡っているのだが、そんな中、本社の会議室には各国の騎士団長、副騎士団長が集まっていた。

その目的は、彼等を鍛える事だ。


「今日、皆さんに集まって頂いたのは ”間違った認識を正す” 為です」

「間違い?」

「皆さんは、指揮下の騎士に対し役割を与え、それを大凡こなしている様子を見て、君主に報告を上げる。何も言われなければ問題無いと思い込み、事実、何も問題無ければ、現状それで良しとしている節がある。

それは、私から言わせれば大問題なのですよ。

具体的に皆さんが間違っている事というのは、”君主が自国の軍事力に差程関心を持っていない” と感じている点と、指揮下の騎士の、所謂 ”自発的な訓練” によって一定の軍事的な価値を持つ組織を維持できると思っている点です」

「…………」

「今回、皆さんの属する国が、victory order社とパートナー契約を結んだのは、紛れもなく ”君主が、自国の軍事力に関心を持っている” ことを示していて、自国の軍事力を、”望ましい水準” まで引き上げさせるのが目的の一つです。よって、皆さんには2ヶ月間、地獄を見て戴きます」

「しかし、それでは2ヶ月の間、部下の指揮は誰が……」

「心配無用です。騎士団は、今日から2ヶ月間、victory order社の指揮下に入ります。皆さんは、生まれ変わるつもりで訓練を受けていれば良いのです」


彼等は、その殆どがギルド基準ではA+だ。

だが、残念ながら当社の基準で見れば、せいぜいがB-。

そんな彼等は、2ヶ月間の訓練を終えた頃にはA-と認定出来るかどうかという所まで成長したのだ。

彼等の成長ぶりに、各国の君主は大いに喜んだ。

今後、指揮官となる者はvictory order社での2ヶ月間の訓練が義務付けられ、指揮官になった後も、半年に一度、短期間の訓練プログラムを受講しなくてはならなくなったのだ。


……………………………………………………………………………


「密偵の情報では、各国はvictory order社に騎士団長クラスへの戦闘訓練を依頼しているらしい。そのvictory order社だが、半年程前に4つの拠点で、各2500名づつを採用し、大幅に戦力を増強している」

「それは捨て置けん。お仕置が必要だ」

「まぁ待てよ。お仕置も良いが、その前に ”こっち側” に引き込んでみようぜ?

引き込めれば、対魔王軍用の弾除けになるし、反抗的な田舎者共も、てめぇが俺達の犬だって事を思い出すかも知れねぇ」


新規採用した者達への基礎訓練が終わり、クラスに見合った作戦能力を獲得した頃だ。

帝国は、victory order社を引き込む為に、どの程度の待遇を提示出来るか検討に入った。私は、その1ヶ月後に帝都に呼び出されるのだが、提示されたのは ”クソ食らえ” な内容だったなど言うまでもない。

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