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#35 東西トリア紛争3

「早速かよ!!」


上空を見上げたシドは、確かに飛来する火球を確認した。だが、その火球が着弾したのは補給部隊の車列ではなく、西トリアの国境に最も近い東トリアの街だったのだ。


「おい! 何か知らねぇけど、全然見当違いの所に行っちまったぞ!!」


今回、東トリアへ売却された魔道砲は2世代前の古い機種だ。だが、全く見当違いの場所に着弾したのは、それが旧式だからではない。最新の魔道砲では多少改善されているが、何方も付属のモニターの様なものに射程圏内に在る魔力反応が ”点” で表示される。

城など動かない物に対しては、座標を入力し正確に砲撃する事が可能だが、動くものに対しては、モニターに映る魔力反応を頼りに、密集したポイントを ”敵勢力が集結している地点” と信じて撃ち込む雑さなのだ。


「何考えてんだ!? 自分とこの国民を撃ちやがった!!」


正しい使い方は、斥候を敵勢力の拠点近くに送り込み、砲手に座標を伝え、砲手は連射しながら微調整を繰り返し行うものだ。

今回は、不慣れな運用初期に稀に起こる事故で、早い話が単なる人災だ。


そして、この不祥事は数時間後には広く知られる事となった。


……………………………………………………………………………


「東トリア領内の街が攻撃されたとの情報についてお聞かせください!」


どこで手に入れたのかは知らないが、新聞屋は東トリアの街が派手にぶっ飛んだという情報を得ていた。


「我々が入手した情報によれば、東トリアは

魔導兵器を使用し、西トリアとの国境に近いロドスという街を攻撃したようだ」

「東トリアが自国の街を砲撃したという事ですか!?」

「そうだ。東トリアが、西トリアの非人道的な行いを捏造しようと、前代未聞の作戦を開始した可能性が高い。それ以外に自国民を殺傷するメリットは存在しないだろう。

この一件で、東トリアの支配者層は分別ある指導者なのかという部分に疑問符が付いた」


この問題発言は、テオの定例会見を楽しみにしている ”おしゃべり大好きなマダム達” によって瞬く間に拡散された。

当然、東トリアも帝国もストラス国までvictory order社製の魔道具を買いに来ていたので、この報道をお偉いさん方も見ているかも知れない。


「このマヌケ!! 見たぞ!!

お前達がやらかした事故の情報だ!! 尾びれ背びれが付いて大変な事になってる!!」

「い、一体どうすれば……」

「早期に事態を収拾する為に、治安維持の名目で部隊を派遣する!

余計な事は言わずに西の相手だけしとけっ!!」


もし見ていたとしたら、帝国の高官は東トリアの王族を怒鳴り散らし、早急に手を打とうとするだろう。

だが、最早手遅れだ。

真実が靴を履いて玄関を出ようとしている時、嘘は既に世界の半分以上に広がっている。


その翌日、追い討ちをかけるように予期せぬ発言が相次いだ。

勿論、victory order社から派遣されている報道官 テオ の定例会見である。

新聞屋から、今回の紛争に対するストラス国の立場を問われた時の話だ。


「ストラス国は、今回の紛争に関して、何方の肩も持つつもりは無い。ストラス国は、両国の緊張が早期に解消する事を願っており、当事者には多くの真摯な対話と意思疎通を行うよう呼びかけている」

「軍事支援はしないのですね? ゲヴァルテ帝国は戦闘部隊を派遣したという情報もありますが」

「我々の立場は一貫しており、軍事介入や軍事支援といった選択肢はテーブルの上には無い。

東西トリアが抱える背後の事情を解決する事を重要視し、長期的な安定実現の為に我々が行うべき事は当事者を対話の席に着かせることだ。火に油を注ぐ事ではない。

よって、ストラス国は他国の如何なる戦闘部隊の通過も認めない」


テオはそう言い放ち、その発言通りストラス国騎士団は国境を封鎖していた。

大陸の南部に抜けるにはストラス国を経由するしかなく、帝国の部隊は足止めを食うのだ。

勿論、帝国は国境封鎖の決定を不服とし、呼び出したストラス国の外交官に、今回の決定について強烈な不満をぶちまけた。

その日、帝国も報道官を任命し、国家の意見を内外に発信し始めるのだった。


……………………………………………………………………………


「いや〜平和だねぇ。こんなに割のいい仕事が有ったなんて初めて知ったぜ」


エスカーは、輸送中の馬車の上で昼寝をしていた。その進行方向からは、魔道砲から撃ち出された強力な殺傷力を持つ術式が複数飛んで来ているのにだ。


「ちょっと!? 少しは索敵しなさいよ!」


その強力な術式は、今度は正確に補給部隊を捉えているが、着弾直前で全て無力化されていた。

それは、エスカーが良い仕事をしている訳ではなく、魔王ミアの良い仕事だった。

飛来する術式を若干上回る威力の衝撃を叩きつけ相殺しているのだが、その術式の展開速度は並の兵士には認識さえ許さず、あまりのレスポンスの良さに、対魔導兵器用の ”新たな防御術式” か、未知のスキルを備えた ”未確認の英雄” が同行している可能性を示唆させた。


「ルミナちゃん? ラインハートがね、この任務では ”敵勢力の士気” を削ぐだけにしてくださいって言ってたの。どうかしら? 何ならピンポイントで魔導兵器だけ壊すけど」

「ミア様、飛んで来る術式を潰すだけで十分だと思うわ。接近戦闘仕掛けて来る輩も居なくなりましたし」


兵士の能力で劣る東トリアとしては、奥の手である魔導兵器の攻撃が無力化された時点で詰みなのだ。伏兵は粗方捕虜として囚われ、魔道砲の砲撃は霧散してしまっている状況となり、期待していた援軍が到着することも無い。最早、十分絶望的だろう。



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