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#10 初の施設警備

初の施設警備依頼を受けた victory order社。

人目に付かない依頼とあって、ヴィットマンを引き連れ社長自ら現場に入る。

馬鹿な不成者を始末するだけの簡単な依頼かと思われたが、予想外の獲物が釣れてしまう。

「ラインハートよ!!

遂に、俺も任務に参加出来るのか!?」

「えぇ、今回は私も同行します。

大した依頼ではありませんが、久々の娑婆を満喫しましょう!」


コツコツと運送業を営んでいた我々に、遂に施設警備の依頼が舞い込んだのだ。


今回の警備対象は、東トリアの大規模農園。

依頼内容は、畑荒らしを撃退して欲しいという下らないものだ。


依頼主は、農園の主 ボブさん。

売上金の輸送で何度も利用してくれているお得意様だ。


「騎士団には相談したのですが、ギルドに依頼しろと。

仕方無くギルドに依頼を出したのですが、冒険者が返り討ちに遭ってしまいまして」


ボブさん曰く、受注したのはB-のパーティと、C+ランクのパーティが2組。

合計3組15人のパーティで警備をしていたにも関わらず返り討ちにされたという。

そもそも、警備の依頼自体が不人気なのだが、それを聞いた中堅の冒険者パーティは一斉に手を引いたそうだ。


「御社に売上金の護衛を頼んでからというもの、損害は0。

是非、今回の件もお世話になりたいのです」

「お任せ下さい。

では、期間は1ヶ月。

派遣する兵士は5名と少数ですが、ご安心下さい。

精鋭を送り込みます」


今回のメンバーは、私とヴィットマンにルナ、それに索敵が得意なシドとエスカー。

相手は盗賊の類だろうし、手っ取り早く殲滅する為にヒーラーではなく魔導師編成だ。


……………………………………………………………………………


「おい! ラインハートッ!! どういう事なんだ!!?」

「何ですか? 久しぶりに娑婆に出れたんですよ? 怒ってないで楽しんで下さい」

「娑婆に出れたのは嬉しいがな、何で俺達は芋掘ってんだよ!!」

「ながら作業というヤツですよ。

仕事が終わったら、みんなで焼き芋を楽しみましょう」


現場に到着して、10分も経たないうちにヴィットマンは激怒した。

兵士のように敷地内を巡回するとでも思ったのだろうか。ボブからは農作物を適当に持って行ってもいいと言われているので、広い農園を無駄に彷徨くぐらいなら、日持ちする根菜系を収穫して毎月の固定費を圧縮するべきなのだ。


項垂れるヴィットマンだが、彼は熱中し易いタイプだ。

私の予想通り、ヴィットマンはダントツの収穫量で農場長を驚かせた。


辺りは暗くなり、いよいよ狩りの時間だ。


「ライ、西と南から ”マヌケ共” がお出ましだ。

西に10、南に5。

歓迎の挨拶はどうする?」

「派手に殺りたいところですが、何か臭います。

殺さずに、軽くローストして(甚振って)やりましょう」

「ラインハート! 俺は10人の方に行くぞ!!」

「可能な限りで良いので手加減して下さいね」


その僅か数分後、畑荒らしを全員捕縛したのだが、エスカーの能力の一部を見る事が出来た。

彼の能力の一つは、”音を奪う” 能力だったのだ。

音を奪われた畑荒らしは、無音音さえも聞こえない状況に動揺し、硬直した。

被捕食者が至近距離で捕食者に遭遇した場合、死を偽装する者が多い。

それは、自らの意思で行っていない場合が殆どで、強烈な恐怖心が不随意に最終手段を取らせているのだ。

確かな死の可能性も、自分の理解を超えた超常現象も、圧倒的な恐怖になり得るという事だ。


見事に失神している畑荒らし(マヌケ共)を1箇所に集め、水をぶっ掛けて目を覚まさせる。


「マダム達が日課にしてるウォーキング以下の労働だったぜ」

「まぁまぁ。所詮は畑荒らしという事です。

と言いたいとこですが…… シド、彼等に見覚えありませんか?」

「ん”!? コイツら、西トリアの騎士じゃねぇか!!?」


何か臭うと思っていたが、どうやら勘が当たった様だ。

この農園は、帝国から関税の特別優遇措置を受けている。

しかし、此処からの入荷が不安定になれば、別の供給元を探すしかなくなる訳か。


「ライ、こりゃ面倒くせぇぞ?

今夜は何も見なかったし、何も無かった事にした方が良さそうだな」

「エスカー、何を言ってるんですか?

彼等は金になりますよ」

「いや、金じゃねぇよ。

コイツらは疫病神だ。

厄介な事が立て続けに起こるなんてゴメンだぜ」

「大丈夫ですよ」


このまま帰しても、口封じにの為に狙われる可能性が高いのだ。

ならば、報復されないように徹底的に潰してやるべきだ。

私は、録画専用の魔道具を取り出し、捕らえた西トリアの騎士の顔と、その後の遣り取りを撮影した。


「本来なら、挽肉(ミンチ)にして土に還してやるところですが、今日は見逃してあげましょう」

「魔眼!? 貴様! 魔族か!?」

「いいえ、魔族ではありませんが人間でもありません」

「東トリアは魔族を飼っているのか!

ならば、進軍する口実としては申し分無いな!」

「聞こえませんでしたか?

馬の(クソ)の代わりに肥料にしてもいいですし、東トリアの騎士団に突き出して、貴方達が何者なのかケツの中まで調べてもらって良いんですよ?

その判断をするのは私です。

口の利き方には注意して下さいね」

「くっ……」

「国王陛下にお伝え下さい。

明日の午前中に、ストラス国に事務所を構える民間軍事会社の者が会いに行くとね。

この映像が、東トリアに流れるのは面倒でしょう?」


捕らえた騎士を解放し、早速ピクニックの準備だ。

施設警備の報酬は、1ヶ月分を前金で貰っているが、まさか特典まで付いてくるとは思わなかった。

王様に会うのが、今から楽しみで仕方無い。

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