第8話
こうして泊まる予定の一つ目の町に着いた。
5歳の俺はさすがに気を遣われたのかこの町の領主との面会はなかった。
そして夜。
なーノーレ。聞こえてるー?
『どうしました?』
いや、ノーレは退屈じゃないかなって。
『なぜ?そのようなことを?』
だって話もできないし、体もないだろ?
『なるほど、人間は面倒くさい生き物なのですね。』
辛辣だな!?人が心配してるんだぞー!
『私はそういう感情を抱きません。マスターと会話するときにはすこしの喜びを感じますが、だからといって話せないときに寂しさを感じることもありません。私はマスターの手助けをし、行く末をみるだけで十分なのですから。』
そうか。そういうものなのか。だが面と向かって話せたら楽しいだろうな。体が得られたら、その時はその体に憑依させて話すか。そうだろ?憑依のスキルの存在意義。
『確かに女神がそれを考えていました。当たっていますが、まだ他にもあります。それは、あなたに憑依ができます。』
ふむふむ、つまり操れるということか?俺を?
『そういうことです。でもそんなことはしませんよ。マスター。』
そうか。でもさ、もし夜は野営していて襲われそうになったら起こしてね?
『そうですね。ですが私が憑依して敵を対処することもできます。憑依すればマスターの体だけではなく、スキルも使えますから。』
なら、よろしく。手に負えなかったら遠慮無く起こしてくれ。
『そうですね。わかりました。ですが、あまりそうはならないとおもいますよ?』
なんで?
『スキル超高速演算により、最善の選択をとりながら戦えますので。』
え、それ、俺よりノーレが憑依して戦った方が強いよね。
『そうとも限りません。マスターの直感を極限まで鍛えれば、さらには固有スキルにまでできればまるで未来ざ見えるかのごとく対処できますよ。私のはあくまで今までの経験から演算した予測を元に行動しますので。』
そうか、眠くなってきたな。おやすみ。
『はい、おやすみなさい。マスター。』
こうして俺は異世界の夜をぼんやりと見ながらゆっくりと瞼を閉じたのだった。
三週間後
特に何事もなく、盗賊は泣きながら逃げ出したり、魔物は一瞬で灰になったりしたが、とりあえず王都に到着!!
すぐに屋敷に行くことになった。
そして屋敷に到着!展開早い!
俺の弟か、大丈夫かな?んー。ま、仲良くなるしかないのかな。
王都にある屋敷はやはり王都なのに広かった。土地の値段絶対高いでしょ。どうなってんだよ。目の前にはドデカい門があり、噴水、庭があった。屋敷の玄関前にはめちゃ強面の顔に傷がある老人とその奥さんっぽい老婆が立っていた。
「久しぶりじゃな」
「久しぶりね~、二人とも」
「お久しぶりです。養父様、養母様。」
「お久しぶりです。お父様、お母様。」
「は、初めまして!辺境伯家嫡男れ、レノード・フォン・アイールです!」
やべー、噛んじゃった。でもオーラがすごくて、特に爺さんが怖すぎ!
今のでスキル威圧耐性獲得したよ!?
俺がカミカミながら挨拶すると、もの凄く怖かったおじいさんが花が咲いたように笑顔になった。
「おー!!ま、孫じゃ!あやつとは大違いだのぉー!」
「まー、そうですわね。、、、なるほど。少しあなたの顔が怖かったようですね。」
「なんじゃと!?それは真か!?」
すると先ほどまでの威圧感がなくなり今度は泣きそうな顔になって俺に寄ってきた。
「正直、最初は、、、。」
するとおじいちゃんは膝から崩れそうになった。
俺は慌てて訂正する。
「でも今とても優しそうな方だと改め、思いました。心配させてしまい申し訳ありません。正直に伝える方が信頼してもらえるかと思ったのですが。」
すると今度はものすごい笑顔になって抱きしめてきた。
「わしの孫は天使か!いや、神の使いじゃな!」
それどっちも同じだと思う。
『マスター、この方表情がコロコロ変わりますね。』
それわかってても、言わないの!
そんなことを思っていると、奥から母さんと同い年くらいの女性と俺より背が少し小さいのに、横の方はかなり大きい子豚さんが来た。
『マスターも嫌悪の感情を持つ人には毒舌なのですね。』
いや、いちいち報告しなくていいから。なんか嫌だなー!この感覚。
するの女性が話しかけてきた。
「あら、誰かと思えば私の旦那様ではありませんか。私たちを放って何をされていらっしゃたのですか?」
うわ、ほんとにイヤなやつだな。大方この女がなんか言って迷惑かけてほったらかす状況になったんじゃないの?
そこに父さんではなくおじいちゃんが返した。顔を真っ赤にさせて。うわ、コワ。
「おまえが辺境伯領についていかなかったからじゃろうが!?」
「仕方ないではありませんか。王都の暮らしの方が良いに決まっているんですから。あんなド田舎よりはね。」
でも、ド田舎と言うけどアイール領は帝国と王国の間にあって交通量が半端じゃない。なので王都や帝都の次に繁栄している。知らないのか?
んー、言ってもしょうがないから子供対応でいくか!
「うわー!!とってもキレイなお姉さんですね!こんにちは!僕はレノードと言います!」
With キラキラスマイル
「ん?あなたよくわかってるじゃない。レノード?レノード、、、ちっ!」
「そこのおまえ、ぼくと立場をかわれ!」
え、今舌打ちした!?嘘でしょ!?この笑顔に通用しなかった者はいなかったのに!?
なんかクソガキにクソみたいなこと言われたんだが。俺もガキだけどな。
おじいちゃんが憤怒の形相で詰め寄った。
「おい!おまえ、仮にも義理の息子だぞ!?」
「知りませんわ。このガキのせいでクベルクが嫡男になれなかったのですから。」
「もういい。この屋敷から出て行け!子爵風情が!」
「は?あなたたちには恩がありますわよね?先祖の。一番に戦場へ行かせるための援助、いや尻拭いを。」
「それはもう、今ので終わりだ。出て行け。孫を蹴落とした罪。それだけで出てくのには値する。」
「そんなことをしたら王から指名された文官の名が廃りますわよ?そして、王に泥を塗ることになりますわよ?」
そこにおばあちゃんが入る。
「あなた、さすがに早急では?そして、相手の思惑通りの可能性もあります。」
「もういいのだ。レノードがこいつらと一緒にいて、腐ったり傷ついてる姿を考えるとどうしても耐えられん。」
なんかすごいことになってるなー!ふむふむ。よし。そして俺は喋った。冗談っぽく。軽々しく言ってはいけないことを。
だが勝てるはずだ。今まで屋敷にいたぶんズルをするのは困難なはず。子爵は下級貴族なのであまりお金は持っていない。つまり、手切れ金は使えない。こちらは上級貴族でお金はたくさんある。しかもアイール家はかなり儲けている。満足する手切れ金をこの女性の実家は持っていない。
「なるほどー、ではこうしましょうよ。」
そして俺は言う。
「僕とそこの君で決闘しましょう。」
「「「「「「へ?は!?」」」」」」
そして持っていたハンカチをストレス発散に顔面に投げた。
ガキ、いやクベルクと言うらしい。
クベルクは憤怒の形相で即答した。
「いいだろう!受けてやる!」
「では条件は今言った二人の言い分をそれぞれ通す形にします。つまり、こちらが勝てばこの屋敷から出て行く。つまり、婚約解消です。そしてそちらが勝てば嫡男の立場を渡す。どうですか?」
俺はさりげなくこちらが勝った時の要望を増やした。それにすぐ気づいたのだろう、養母のサーシャは止めようとする。
「ちょっと、ま」
「いいだろう!勝てたらだがな!」