第6話
5歳になってから数日が経った。最近は、訓練を毎日行い、やる勉強の内容は日々変わる。といっても魔術理論や国語、算術はすでに目標の学院レベルまでできてしまっている。地理と世界史もレベルが低くて数日で勉強を終える。地理はナガール国内の代表的な地名を、世界史は国とその覚えるべき特徴、最近の歴史を覚えるだけだからね。
つまり、後やることは一つ!
貴族の勉強!
腹心術に、舞踏の仕方、領地経営、代表的な貴族の名前把握。もろもろだな。もう少しで5歳になる王女のパーティーに参加するために行くことになる。なので貴族の勉強で最近は大変なのだ。
うそだ。そこまで大変じゃない。暗記は大変だが。まー、スキル感覚適応がすごすぎるのだ。
食事の作法に感覚適応を使えば、数日で無意識にできるようになる。カミカミだったレノードという名前も普通に言える。感覚適応は一般スキルにも影響を与える。主に暗視や遠目、聴覚強化などの感覚系スキルだな。なんと感覚適応によって五感が強化されるのだ!そしてスキルにも反映される。しかもこの感覚適応は好きなように最高の感覚状態を思い出せる。いつもは生活に支障が出ない通常の感覚なのだが、戦闘中などに必要になってくる感覚を思い出せるのだ。戦闘の感とかね。
そして俺は今、父さんと話をしていた。
「父様、なんで僕は黒髪なんですか?先祖と何か関係が?」
ちなみにこの世界には異世界から召喚された勇者がいたらしい。大魔王を聖女と一緒に倒したらしいが。黒の髪に黒目だったらしい。つまり日本人だったのかな?
「いや、おそらく関係はないだろう。うちの家の先祖、というよりレミーナの先祖なのだかな。その先祖は建国時の仲間だったら、昔にはすぐ近くの魔の森からのスタンピードを食い止めたと聞いている。うん、さすがアイール家だな!」
え、レミーナ母さんが子孫なの?てことは婿入りしたって事!?ちなみに魔の森は近くにあって、強大な魔物が蔓延っているという。絶対に入れてもらえないし、行きたくもないな。
「その顔は、、、あー、婿入りしたことか。そうだぞ。俺は元々平民だったがレミーナとは幼馴染みでな。俺はここで育てられたようなものさ。アイール家秘伝もレミーナより俺の方が修得しているんだぜ?だから安心して俺から技を盗め。」
すげーわ、ふつーにすげーわ。
「でも、失礼ですが平民は貴族、それも上級貴族とはさすがに婚約することはできないのでは?」
平民と上位貴族、しかも婚約すればアイール家次期当主になれる令嬢が婚約することが許されるはずがない。
「んー、いや恥ずかしい話になるんだがよ、レノードが生まれるかなり前に1回王都の近くの森でスタンピードが起きてな。未だ原因不明なんだが、俺とレミーナですべて倒したわけよ。そしたら勲章とかなんやらで王国に引き込まれたってわけよ。なんたってドラゴンを一体倒したからな!!ハッハ!でもドラゴンは理知的なはずなんだがな、、、わからん。」
「ド、ドラゴンスレイヤー!」
すげー!かっけーなー!!
俺はこの時わかりやすく子供みたいな目をキラキラさせた反応をしていたと思う。
「おい!それを言うな!はずいだろ!その名をどこで覚えた!?」
父さんは照れくさそうに話していた。
「なるほど、そういうことだったんですね。それで武官として今は王国を守っていると。ちなみにランクは?」
「ん?Sだぞ?」
S!?は!?す、すげー!この世界で数人しかいないはずだぞ!?
「ま、まーそんなことより王都へ行く準備をさっさとしてこい!」
さらっと流した!意外と照れ屋なんだな、強面の大男なのに。そういえば、側室とかいないのかな?貴族は家を存続させるために子供は数人は必要だし、妻も最低2人取らないといけない。日本は重婚だめだったから、何も疑問に思っていなかったな。今聞くか。
「わかりました。ですが一つだけ質問です。側室は取っていないのですか?」
すると、父さんはとてもばつの悪い顔になった。
「取ってはいるが、んーなかなか手に負えん。俺にはもう一人息子がいてな。おまえの弟なんだがな。年は4歳だ。今は王都にレミーナの両親と暮らしている。つまりおまえの爺さん、婆さんだな。だが屋敷の中で話す仲でもないだろうに。あ、俺の両親はすげー小さい頃に他界した。顔も覚えてねーな。だが、ここで生まれ育ったようなものだな!なに、気にすることはないぞ!おまえは聡いから今言っといた!」
俺は今この世で最も呆けた顔をしていた、と思う。え!?弟いるの!?俺に!?てか、今それ言うこと!?
まてまて、全く血がつながっていない孫と住んでいるのか!?でも、父さんはじいちゃん、ばあちゃんからすれば息子のようなものなのか。
とりあえず支度でもするか。
俺は自分の荷物をまとめて、アイテムボックスに放り込んだ。
女神からもらった刀のこと忘れてたわ。
王都に行く間暇だし、その時に見るか。
今は貴族の勉強を完璧にするぞ!あと訓練も!
こうして王都出発日となった。