王都
「すっげぇぇぇぇぇぇぇえ!」
「凄い?どこがだ?」
「えっ?普通に凄いじゃん!だって王都だよ?異世界に来たら必ず行ってみたい場所じゃん」
「そうなのか?主の世界は、分からない所だな」
「はっ…………つい見惚れてしまったけど、早くギルドに行かなきゃ。その前にカイには、目立つから魔法を掛けるね」
「あぁ。そう言えばそうだったな。頼むぞ」
「任せて。えーとっ…………これでいいか」
「創造魔法!透明化付与!」
「おぉ!」
「これでいいかな。今カイに付与した透明化は、王都に近づいたら自動で掛かる仕組みだからね」
「主には、何度も驚かされてしまうな」
「こんなの普通だよ。みんなだって出来るでしょ?」
[いや………普通は、できないのだが。このわしですら時間制限があるのに…………自分が今まで最強と言われた事が恥ずかしく思えてくる」
「カイ〜何止まってるの?早く行こうよ」
「あぁ。今行く」
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「うげっ!こんなに並ぶのか…………門まであと五十メートルぐらいか。でも、こう言うのがいいよね!今の時間でいろんな人が見れるし」
[人間なら性格上、こう言うのを嫌うはずなのだが…ある意味主は人間ではない…か。化け物の方が正しいのでは?]
「カイ見て見て!あそこに居る人は、冒険者の人かな?俺もあと少しであんな感じになるのかな?あっちの人は、商人かな?凄いねカイ!俺初めて見るよ!」
「そうだな」
[今は、主が嬉しそうにしているだけでいいか……]
シンジは、普通なら退屈な時間を幸せそうに過ごしたとさ。
「次、俺の番かな?緊張する」
「こんな所で緊張するとは、主らしくないな」
「ちょとね……人と話すとなると…………。俺コミュ障だしね」
「こみゅしょー?」
「簡単に言うなら人と話すのが苦手って意味だね。俺さ、前の世界でもみんなに避けられてたんだよね。その影響でね」
「すまない、主」
「別にいいよ。だってここは、異世界だし!」
[主が避けられていたのには、他に理由がありそうだが……]
「次!」
「は、はい!」
「君………………」
「あ、あのどうしたんですか?」
「………」
「すみませーん!」
「はっ!おっとこれはすまない。君は、ここにくるのは初めてかい?」
「はい。そうです」
「では、銀貨二枚くれるかな?」
(銀貨?何だそれ?もしかしてゴブリンが持っていた硬貨のことか?)
「あの、これで足りますか?」
「おっ………ピッタリだね。では、ようこそ私達の王都へ!」
「ありがとうございます!」
俺は、軽い足取りで門を潜っていくのだった。
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ワイワイ キャッキャッ
「凄い賑わいぶりだね」
「これだけいたらギルドまで迷ってしまうぞ」
「カイ。安心して」
「うん?」
「元々、場所なんて分かんないから」
「は?」
「だから今、頑張っていい人そうな人に聞こうとしてるとこ」
「はぁ〜」
「いや、最初はねスキルのマップを使おうと思ったんだけど一度行った場所しか表示されなくて………」
下を向いて目を逸らすシンジ。
「主は、辺な所で抜けてるな」
「そんな事言わないでよー」
「いいじゃないか。わしは、まだ馬鹿と言われたことを忘れてはいないぞ?」
「それは、カイが悪いでしょ!村を壊滅させるから」
「はいはい」
「ちゃんと聞いてるー?」
「聞いてるとも」
そして、時は進む。
「あっ!あの人に聞いてみよう。すみませーん!」
「うん?何だ?」
「あの、ギルドに行きたいんですが場所が分からなくて……………その……もしよろしかったら教えてくれませんか?」
「いいぞ。俺も丁度行ってる最中なんだ。俺の名前はコウ。よろしくな」
(えっと………異世界では、名前を先に言うから…)
「シンジ・アリムラです。シンジでいいです」
!
「?。どうしたんですか?びっくりしたような顔して」
「申し訳ございません!貴族様だとは知らずに……」
「貴族?何の事?」
「と仰いますと?」
「俺は、貴族でも何でもないよ?そこら辺にいる人間だよ?」
[主の場合は、そこら辺の人間とは大分違うがな]
「でも、家名が………」
「家名が何なの?」
「家名があるのは、貴族と王族だけですから」
「あーー、さっきのは無し!本当は、家名なんてないから!」
「ですが………」
「いいの!そう言う事にしといて!」
「分かりました」
「じゃあ、案内してくれる?コウ」
「分かり………分かったよ。シンジ」
俺は道中、コウにこの世界について色々な事を教えてもらった。まず、この世界の名はリスエルと言うらしい。そして、この世界は主に三つの大陸に分かれている。人間が住む人族大陸。魔族が住む魔大陸。エルフが住む森大陸。俺が聞いた所、人族と魔族は戦争はしてないらしい。三百年前に人族の王と魔族の王が意気投合して、それまでの戦争が嘘のように無くなったと言う。そして、エルフは相変わらず中立だそうだ。
「て言うか、シンジお前この世界の住民のくせに.、何にも知らないんだな」
「あはは。ちょとね……」
(言えない。俺がこの世界の人じゃないんだなんて)
「そう言えば、さっきから思ってたけど何か見られてるよね」
「それは、シンジがあれだからだよ」
「あれって?」
「はぁ〜。お前今まで鈍感って言われた事あるか?」
(そう言えば、健もそう言ってたよな?何が鈍感なんだ?)
「はい」
「やっぱり」
「あのコウ。何が鈍感なんだ?」
「知らないのが一番、罪だね〜」
「?」
「まーそれは置いといてほら、ここがギルドだよ」
「凄い」
(想像してたより大きいな)
「じゃあ、俺は、依頼の達成報告してくるから」
「はい!今までありがとうございました!」
「いいって別に。こっちも話し相手がいてよかったし」
「そう言ってもらえると、嬉しいです」
「おう!じゃあな」
「はい!」
(よし!入るか)
「失礼します」
(おっ!酒を飲んでる冒険者がいる!こう言うの憧れてたんだー)
「すいませんっ!冒険者登録がしたいんですが」
「はっ"はい"少々お待ちください"」
(何で顔が、赤くなったんだろう?でも、綺麗な人だったなー)
いつもの事のように鈍感なシンジであった。