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「お待ちしておりましたクライス様。私はマイルズ公爵家の総執事、セバスチャンでございます」


公爵邸について馬車から降りようとした際、手を貸してくれた老紳士が丁寧に自己紹介をしてくれた。


へぇ。

意外ね。私なんかのお出迎えで総執事に、たぶんこれ邸中の使用人まで待ち構えてくれているなんて。

さすがにすごい迫力。

しかも公爵邸…うん、でかいわね。邸の中の移動だけでも私にとったらいい運動になりそうね。


ん…あれは。


「皆さん、ご丁寧にお出迎えありがとうございます。これからどうぞよろしくお願いしますね。…ところでセバスチャン、あちらの建物は何ですの?」


出迎えてくれた皆に丁寧にお辞儀をすると皆はふわっと笑って「こちらこそ、よろしくお願い致します奥様」と言ってくれた。

なんとかうまくやっていけそうでホッとしていると。


「奥様、もしよろしければこのままご案内してもよろしいでしょうか?奥様が直接ご覧になられる方がよろしいかと」


私が直接?なぜに?案内する気ないので自分で見高いってことなの⁉︎うそ。私より猫かぶるの上手なセバスチャンめ。


私からスッと冷たい目を向けられたセバスチャンはハッとなり、言葉を付け足す。


「奥様、言葉足らずで申し訳ございません。決して私を含め我々マイルズ家使用人は奥様を蔑ろにするつもりはございません。ただあちらは旦那様が奥様のためにご用意したものでしたので奥様ご自身が確認するのがよろしいかと」


…?

私のために…旦那様が?一体何のために?

なに、公爵家では代々お嫁さんに別邸でもプレゼントすらならわしでもあるのですか。こっわ。公爵家こっわ。


っ!!!

あーーぁ、なるほど。わかりましたわ!!

アリアナ様との仲を邪魔されるのが嫌になったからやっぱり私には別邸で暮らしてほしいと。そーゆーことですよね。


もう、喜んでですわよ。伯爵邸での暮らしもほぼ一人暮らしだったので静かな暮らしには慣れてます!


「なるほど、早とちりして申し訳ありませんでしたわ。ではさっそく向かいましょうか」


私がふふっと微笑むとセバスチャンも笑顔を返してくれた。



…。

嘘でしょ。


なにここ。


扉を開けてから私の口も開きっぱなしになっている。なぜかって?そりゃ誰でもこうなると思います。


まず近づいて気づいたのがここは別邸ではなく温室だったということ。少し別邸にしたら小さいなと思っていたのがそれだった。

かと言って温室にしたら大きいのですけどね。


扉を開けて広がるのは一面の色とりどりの花たち。

奥へと続く道にも綺麗な花が並んでいる。

そしてそこには…1台の真っ白いピアノ。


は?


待って待って待って…。

確かに私はピアノが欲しいとは言いました。言いましたわ。けれどいったい誰が想像できるのよ。建物ごと用意しちゃうなんてっ!とんだばかやろうですわよ。


そして奥へと続く扉の先には、天井から白い天蓋付きの大きな円形のベッド。それを囲むように円形に水辺が作られている。蓮の花らしきものが、浮いていて、さらにそれを囲むのが百合の花々。とにかく幻影的な空間なのだ。


さっきのピアノの部屋といいここといい、旦那様は私を聖女か何かと勘違いしてます?

何でこの温室全体がこうも…神秘的に作ってあるのよっ。それともなに?私はここで神にピアノ捧げてあのベッドで祈りでも捧げてればいいのかしらねっ⁉︎


ここでピアノ弾いてる自分を想像したらなんかちょっと恥ずかしいんですけど!


私が何とも言えない気持ちで温室を見渡していると後ろから見知った声が聞こえた。


「気に入っていただけたでしょうかマドレア」


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