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「ピアノ…ですか?」
「はい、ピアノですわ」
…。何この間。
ピアノってそんなに珍しいわけでもないわよね?四大公爵家のうちのマイルズ公爵家にとってピアノ1台くらい安いものでしょ。ケチケチしてんじゃないわよっ。
「マドレア、君が私に求めるのはピアノ。ただそれだけということですか?」
私は今日1番の笑顔を見せてうなずく。
「はいっ!邸のどこかにピアノがあれば私はそれで構いません。あくまでも無ければ用意していただきたいということですわ」
旦那様はそれを聞くと少し考えたそぶりをして見せた。そして、うむ。と頷いて相変わらずのアルカイックスマイルを作り私に向ける。
相変わらずいーーぃ、お顔ね。
「わかりました。そういう事なら貴方が来週引っ越してくる前に準備を済ませておきます。生憎私の家系はピアノではなくチェロを通して音楽の教養を受けましたので」
ふーーん。チェロねぇ…。
まじかぁぁぁぁ。いやさ!音楽やってる女性あるあるなんだと思うけどね、チェロ弾いてる人ってなんかエロく見えるのよ!!!
チェロってほら、女性の体つきのようにボンッ・キュッ・ボンッ!じゃん⁉︎…そーゆーことよっっ。
うわぁぁ、旦那様がチェロ弾いてるところみたい。めっちゃ見たいですって!ってゆうかもう想像でご飯何倍でもいけるわね。
「…マドレア?どうしたのですか?」
「ふぇっ⁉︎あ、あの。なんでもございませんわ!」
あっぶなぁ。意識飛んでたわね。なんだか顔の体温上がっちゃったわ、これ絶対赤くなってるやつだぁ。
私はパタパタと手で顔を仰ぐ。
「あぁ、今日は外でお茶しながら話すには少し暑かったですね。すみません長々と。では私はもう帰りますね、来週からお待ちしております。これからどうぞよろしくお願いしますねマドレア」
なんか勘違いして気を利かせてくれたみたいだ。バレなくてよかったよかった。チェロに悶える女なんてレッテル貼られたくないもんね!
私が心の中でふぅーーっと思っていると旦那様は流れるように私の手を取り手の甲にキスを落として帰っていった。
…うん、なんか今から旦那様とアリアナ様との同居?生活不安になってきましたわね。
だって、旦那様は息を吐くようにさらっとこーゆーことしちゃうんだよ?
アリアナ様の前では例え形だけであっても今みたいな行動は謹んでいただかなくては。
いくら、タイプじゃなくて興味がなくたって旦那様はちゃーーんとイケメン様だから、私だって不意に来られるとちょっとはドキッとしてしまいます。
そう、全ては”私が!”結婚後に平和に過ごすためにね。