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「マイルズ公爵家から縁談の話が来ている。…が公爵家だって知ったものかい!いつもと同様お断りしてもいいかな」
「そうね、かわいいレアにはずっとここにいてもらいたいもの。それにアラン様は確か子爵家のご令嬢とお付き合いされているとかきいたわ」
私が呼ばれた意味ーーーーーっ。
我が家以上、伯爵家以上からの縁談は一応私も呼び出した上での話し合いが行われるがいつもこうだ。
基本放任主義なくせに2人は私のことが大好きだ。
そう。ただ、お互いがお互いを1番に思い合ってるから私が2の次になるだけ。私もそれを分かっているから捻くれるわけでもなくただ好きかってのびのびさせてもらってる。
あと、レアっていうのは愛称だ。
「お父様、お母様。私この縁談お受けしようと思ってます」
「「…」」
え。
まさかのこの距離で無視?
「あの…?」
次の瞬間。父が涙を流した。
「いやよ!レアは誰にも譲らないんだからっっっ」
母に至っては子供のようにゴネだした。
なにこのカオス。サラーーーー!っと助けてよと後ろに控えるサラに目をやると肩が揺れている。こいつ、面白がってるな。くっ。
「とにかく、私マイルズ家に嫁ぎます。後はよろしくお願いしますね。お父様」
笑顔で強行突破して部屋を出た。
いやいや、いつもいうあの「ここにいてもいいんだよ」発言半分冗談に流してたからびっくりだよ。
ま、今日も何も考えずに防音室に向かいますか〜。
我がいとしの〜ピアノちゃんに会いにっ。
マドレアは知らない。
幼い彼女が人前でピアノを弾くことを酷く躊躇った際に両親がついた1つの嘘を。
そう、この邸に防音室なんて1つもないことを。
今日も今日とて鳴り響くマドレアの演奏を、彼女の両親含め働く皆が耳を済ませてうっとりする。
そして両親の命令で邸で働く者皆が、マドレアが自分で部屋から出てこない限り彼女の演奏を邪魔することを許さなかった。さすがに5時間を超えると部屋の様子を見に入ることは許可されている。
…そうでもしないとマドレアは一日中ピアノの前にいるからである。