アラン・マイルズ視点
最近両親がうるさい。
結婚しろしろと。そのくせ、私が結婚したいと連れてきた子爵家の娘のアリアナ・ムーディアを婚約者として認めなかった。特に正妻はもってのほかだと。
なにが血筋だ。確かにアリアナの家はまだまだ新しい方で。商人をやっていたアリアナの父の才を認められて男爵の爵位を飛ばして子爵となった。
それのなにが悪い。新興貴族でも、貴族には違いないのに。公爵家という血筋を尊いものだと考える両親。
はぁ、疲れた。
とりあえず、彼らの望むような血筋の令嬢でかつ、私とアリアナとの仲を邪魔しない大人しくていうことを聞きそうな女を探した。
ま、見つかるわけもなかった。
今でもう5人は当たってみたがどの令嬢もふざけるなと顔を赤めて怒った。ま、当然だわな。我ながら笑えてくるよ。
そんな時にいま社交界で噂となっているある令嬢の噂を耳にした。
マドレア・クライス。彼女の父は確か王宮の図書室で司書をしており、母は皇后様と仲がよく王宮によく来ているそうだ。
そして、2人仲良く庭園でお昼を食べるほど仲がいいと聞く。…だが彼女の話だけは聞かない。
どの社交の場にも現れない深窓の姫君とまで言われている。
とりあえずダメ元で当たってみるか。
ちょうど今日は彼女の両親2人とも王宮に来ているみたいだし行くなら今日がいい気がする。
会ってみて驚いた。
まず無礼を承知で手紙なしで訪れたのだから待たされること前提であった。
にもかかわらず、すぐに彼女は現れた。大抵女性は身支度に時間を要するというのに。
彼女は室内用のドレスで堂々と現れた。
普通貴族の女性は外出用と室内用とでドレスを使いわけている。髪であっても束ねているわけでもなく髪飾りをつけるわけでもなく、アクセサリーの一つもつけずに。
ただシンプルな薄いピンクの室内用ドレスを身につけるその上にストールを巻いていた。
かわいい。
ふとそう思ってしまった。彼女の癖っ毛のあるチョコレートのような色の茶色い髪はふわふわと外の風になびき。そこにさらに甘い蜂蜜色の目ときた。
15歳といえど幼い無垢の少女にしか見えない天使のような女性だ。
っ。いけない。私にはアリアナがいる!
自分の目的を忘れるところだった。私は気合を入れて挨拶をすると彼女の見た目と口から出る言葉とのギャップに驚いた。
なにが体の弱い深窓の令嬢だ!めちゃくちゃ元気だぞこいつ。しかも、この私に対して堂々した振る舞いに加え、めんどくさいと顔に書いてある。ていうか、もう帰れと実際に言われている。
…面白い。だったら、私も隠さずに自分の要求を伝えると彼女は満面の笑みを見せて小さく頷き了承した。その笑みは天使としか言いようもなかった。
え?あんなについさっきまで婚約する気がないと言っていたのに。最低な条件出して受け入れるってなんだよ。
なんなんだ。まぁ!いい!
彼女が形式上マイルズ公爵家の妻となってくれたら私は堂々とアリアナを迎え入れることができるっ。
さぁ、早く帰って両親に伝えよう。
マドレア・クライスとの婚約話を進めてくれと。