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「はじめまして、クライス嬢。アラン・マイルズです。今日は貴方に会うためとはいえ、突然の訪問となったことをお許しください」
おっふ。なんでだよ。なんで、マイルズ公爵家の御子息様がいるのよ。てかこいつ今さらっと、親の留守狙ってきましたよーーって言ったよね。言ったよねぇ!
性格わっる。
サーーラーー?貴方知っててあえて”お客様”呼びしてたわね。私が仮病で逃げないために!
わざわざ旦那様の留守時は〜とか言っちゃってさっ。
さすがにここまで来て逃げるわけにはいかないわ。
とりあえず、この固まってしまった表情をなんとかしないとね。
「ふふ、驚きましたわ公爵様。私のようなものにどのようなご用件でしょうか?」
マイルズ様は一瞬驚いたように目を目開いたかと思うとまた普段のにこやかな顔に戻した。
ま、当然よね。さっさと用件行って帰ってくださーいって遠回し?にいったんだもん。えへ。
「すまない、クライス嬢といえば王族の主宰の場であっても滅多に見かけることのない美しい深窓の姫君と言われてるほどだからつい不意をついてみました」
ふーーん。ま。確かに私は社交嫌いだから体弱いアピールしまくって引きこもってます。
けど、それがなにか?てか、理由になってないのよ、きた理由に!
「まぁ、では私の顔を見て用件は済まれたようなので、公爵様はそろそろお帰りになられるということなのですね。本日はお会いできてとても楽しかったですわ」
サーーラーー。お客様のお帰りよーーーー。
「くっ。くくっ。怒らせたのであれば申し訳ない。では、こちらも担当直入に言わせてもらうとね。クライス嬢、私と婚約して欲しい」
「お断り致します」
間髪入れずに笑顔には、しっかり笑顔でお返しした。公爵様は私の返答を全く気にせずティーカップを持ち上げ紅茶を飲む。
そして、一息つきゆっくり話し出した。
ちくしょう、絵になるなこのイケメンめ。
「まぁ断ってもらっても構わないんだ。私はただパートナーを探しているだけだからね。今日を狙ったのも正式なものだと君の意思を問わず成り立ってしまうなと思ったからです」
いやらしい男ね。なんか君のためとか言ってなすりつけてきたし。それにわざと人の興味を引くような喋り方。はいはい、乗ってあげますともその見え見えの作戦に。
「ではお優しい公爵様は一体なにを望んでいらっしゃるのですか?」
私の返答に満足したように公爵様は頷いてから話出す。
「私に愛を求めないこと。それさえ守って頂ければ、公爵家での自由な暮らしを約束します」
ま、じ?え、そんなことでいいの?
そんなの喜んで引き受けるに決まってますぅぅ!!
「公爵様。そう言うことでしたらそのお話、謹んでお受けいたします」
「え?」
「え?」
公爵様が驚いて漏らした言葉に私も驚き繰り返した。
…?なに、いきなり?
この回答待ってたんじゃないのこの人。意味分からないのですけど。
さすがの私も戸惑っていると、彼は少し動揺しながらも「では、この話を進めさせていただきますね」といってささっと帰ってしまった。
なんなのだあの人は。自分から言い出したことに私が乗っかると思わなかったと言う顔。じゃー言うなよ!来るなよぉ!
アラン・マイルズ様といえば四大公爵家のうちの一つであり、代々騎士の家系である。先ほどの彼は騎士団長を務めている。燃えるような黒髪にサファイアのような目を持つ美男子だ。
そんな雲の上の人がなーーぜに私を?
疑問に疑問が深まるマドレアであった。