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私は、マドレア・クライスは前世の記憶を持っている。いわゆる転生ってやつね。
くりくりの蜂蜜色のお目めに、ふわふわの茶髪。
まぁ可愛い系の美少女かな。
え?お世辞じゃなんかじゃないわよ?
本当に可愛いの!異世界転生ってそんなもんなの!!
ちなみに日本人だった頃の私はただのピアノばかって一言がお似合いの大学生だった。
でも大学に入ってすぐ、交通事故で右手の神経が麻痺してから大好きだったピアノが思うように弾けなくなり音大から普通の大学に編入した。
そんな私を家族が励ますためにと行った旅行先で飛行機が転落してそのまま死亡。まだ21歳という若さで私は死んだ。
記憶を取り戻したのは5歳の時。
家にあるピアノの鍵盤に触れた時だった。あの時は涙が止まらなかった。
もう一度弾ける。
私には自由に動く右手と左手がある。…ってね。
当たり前のことだけど嬉しいし、死ぬほど神様に感謝したよな〜。
でもピアノが上手く弾けることなんて私にとって当たり前だけど、それを自慢する気もなかった。なので15歳を迎える今でも私がピアノを上手く弾けることを両親すら知らない。家にあるピアノの部屋はしっかり防音室になってるからね。さすがお貴族様よ。
私が1日中、その部屋にいても誰も気づかない。
ま、うちって結構な放任主義みたいだしね。そこんとこ本当にありがたいわ。
それに転生してから私はのびのびこの人生を楽しんでる。前世の私の両親は音楽家なこともあって、小さい頃から手を痛めないようにとスポーツ なんてやらせてくれなかったし。ボール遊びなんてもってのほかだった。
それに比べて今の私は自由だ。
あぁ。人生がこんなにも輝いてるだなんて。
す、て、き、だわぁ。
一生好きなことだけやってのびのび生きてたいなぁ。ま、結婚後はこうもいかないから今のうちだけでも〜。
…そんな幸せをしみじみと感じていると我が家の前に馬車が止まったのが窓から見てとれた。
だれぇよぉう。
今、お父様もお母様もいないんですけどー。
私もいないってことにしてくれないかなぁ。
コンコン。
「お嬢様、お客様がいらっしゃっています。当主代理としておもてなしをするよう旦那様からことづかっています」
「ふぇーい」
「お嬢様?」
「…。わかりました。すぐに向かいます。サラ、お客様にはロビーではなく今日は天気がいいので庭のテラスの方へ案内してくださる?」
私がしっかり。しーーーっかり猫をかぶり対応するとサラは満足したようで部屋から出てった。
サラは唯一私の本性を知るメイドだ。小さい頃から使えてくれていて、私がピアノを弾けること、大好きなことも知っているのは彼女くらい。
ふぅ。
そろそろ行きますか。お客様がお待ちみたいだし?
あーーぁ、いーきーたーくーなぁいな〜。
お読みいただきありがとうございます。
何かワクワクしてドキドキするようなお話を書けたらいいなと思い書き出しました。