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Call my name  作者: 雪白楽
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04

「眼鏡は昨日、壊したばかりだろう。お前のレンズは特殊だから、受け取りは明日のはずだ」

「あー、そっか。じゃあ、ただのサングラスだけでも掛けてくよ……誘導、してくれる?」


 私はこの男が時折見せる、迷い子のような不安気な表情に弱いのだが、こいつが意識してやっているのだとしたら今すぐ露頭に放り出してやりたいとすら思う。そんな事、できるはずもないのだが。


「……誘導してやらねば、お前はすぐに壁だの人だのに、顔から突っ込んで迷惑を掛けるだろう。無駄口を叩いている暇があったら、さっさと身だしなみを整えろ。既に局長を待たせている」

「はぁい」



 間延びした返事とともに、ごそごそと起き出して支度を始めたのを確認し、私も自分自身の支度に移る。街中を歩けば悪目立ちする黒一色の制服を、無心で身につけていく。唯一の利点は、これを着ていれば人が寄って来ないため、歩きやすいことくらいだ。




 魔法犯罪取締局・通称『ケルベロス』


 それが我々の所属する組織であり、一般市民から恐れられ、犯罪組織から蛇蝎のごとく忌み嫌われる警察組織だ。魔法犯罪とは銘打っているが、魔法使いの関わったと思しき事件ならば何でも取り扱っており、我々の所属する特殊犯罪対策課『特課(とっか)』ではその中でも凶悪犯や組織的な犯罪を追っている。


 いわゆるケルベロスの中でもエース級と目される魔法使い集団だが、聞こえが良いだけでかなりの激務だ。さすがに24時間365日いつでも凶悪犯が活動している訳ではないから、我々にも休みはあるが、このところは事件が立て込んでいて息吐く間もなかった。



 昨夜はようやくベッドで寝れたと言うのに、とボヤきながらネクタイをかっちり締め、制服とは別口で私が所属する派閥を示す、蜘蛛を(かたど)った銀色のピンを襟元につける。


 特課はそもそもケルベロスの中でも特殊な扱いで、局長直属の正しく手足のようなものだ。その分様々な特権が与えられており、基本的な捜査一つとっても殆どの手続きはフリーパスで非常に楽ではある。楽ではあるが、いかんせん局長の人使いは鬼のように荒いし、我々二人はとある事情があって更にこき使われているのが現状だ。



 それに、と振り返れば案の定、鏡の前でネクタイと格闘している馬鹿がいる。こいつのお()りがある分、時間外手当を請求したい。ただ、さすがの馬鹿でも『変装』は忘れていなかったようで、短い金髪とブルーの瞳という、この大陸では一般的な色にして、それだけでも大分印象は変わっていたが、中身まで変えてくれるわけではない。



「何年その制服を着ていると思ってる」

「いや、眼鏡がないとよく見えなくて」


「お前は眼鏡があろうとなかろうと、まともにネクタイが結べていた試しがない」



 仕方なくネクタイを結び直してやれば、にへら、とだらしなく顔を緩ませて礼が返ってくる。こんなポヤポヤのアンポンタンが、次世代を率いる天才児として持てはやされているのだから、世も末だと天を仰ぐ。






最後まで楽しんでお付き合い頂ければ幸いです。

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