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三三七年
思考に引っ掛かったその年号に、血が沸騰するような感覚を得た。
ロレーヌ家が、襲撃された年。ディアナを、私の唯一を、永遠に失った日だ。
この世で唯一、他者の記憶と精神に干渉できる一族、ロレーヌ家。そんな悪用すれば、文字通り世界を支配できてしまいそうな魔法を、彼らは頑なに善のために使っていた。手を触れれば、人や人の念が籠められたモノに眠る記憶を読み取ることの出来る能力は、どんな証言や自白よりも正確であるため事件の早期解決に貢献したが、犯罪者や後ろ暗いことのある者は彼らを何より恐れ忌み嫌った。実際、ロレーヌ家が滅んだことで犯罪の検挙率、事件の解決率は格段に下がった。この国は、もっとも平和な国の称号を、一夜にして失った。
彼らを襲撃した者達が何者なのか、真相は闇の中で、そして誰もが闇のままにしておきたがった。下手に詮索すれば、次は自分の番だと、本能的に知っていた。それにロレーヌ家は犯罪者達から恨みを買いすぎていて、誰が首謀者かなど特定することなど不可能だった。
それでも私は、私だけは諦めることが出来なかった。ディアナの行方と共に、事件の首謀者が誰かを突き止めるために奔走し続けた。信頼できる者など、誰一人いなかった。師匠にすら相談することは出来なかった。そちらの方は、信頼がないというよりも、危険だからやめろと言われるのが目に見えていたからだ。
意図的に隠されているのではないかと思うほどに、捜査では何一つ分からず、実際隠されているのだと確信した私は警察組織そのものに乗り込むことにした。そうして私は、特課になった。激務に追われながらも、特課に与えられた様々な特権を利用して調べ上げたが、大した成果は上がらなかった。現場に残されていたのは『人間』の武器である拳銃であること、しかしそれがどこにも出回っていない特殊な型であること、だから襲撃の対応が遅れて壊滅したのだろうという推測だけが残った。
何度も期待に裏切られて来た。掴めそうだと思った瞬間に、スルリと逃げられる。今回の件も、ロレーヌ家とは全く何の関係もないことなのかも知れない。ロレーヌ家が滅んでから台頭してきた犯罪組織など星の数ほどある。それでも長年の勘が、アタリだと告げている。確信の元にページを繰っていくと、だいたい一月ごとに『出金』の文字があった。
最後まで楽しんでお付き合い頂ければ幸いです。
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