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影の行方  作者: 越入文志
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第3話「今日の話題『扇風機盗難事件の解決』」

こんにちは、越入文志です。


1週間に1話投稿と言ったものの、早速、先週投稿できず...


これはいかん!!と思いながらも、本日何とか1話を投稿しました。


気を引き締めて、平日にも作業を進めたいと思います(今まで休日にしか作業をしていなかった)。


前置きはこのくらいに。


それでは、どうぞ!

 部室に戻ってきた結人と志樹を待っていたのは大きなダンボール箱だった。


 それは扉の前に堂々と置かれていた。


 何の変哲もないただのダンボール箱。

 まるで、配達員でも来て置いていったような、そんな雰囲気を感じさせる。


 ただ一つ懸念点があるとすれば…職員室に向かう前にはなかったものだということだ。


「なにこれ…」


「なんでしょうね、開けてみますか?」


 志樹くんがダンボール箱のふたに恐る恐る手をかける。


 ふたには『ガムテープをはがした跡』があるだけだ。

 ダンボール箱のふたは呆気なく開いた。


「えっ…」


 そこに入っていたのは、傷一つない新品同然の小型扇風機だった。


「これまさか…」


「多分…烏針の扇風機です」


 僕は勢いよく部室の扉を開いた。

 ダンッという音に本を読んでいた良実ちゃんと京介がビクッと体を震わせる。


 薊は案の定、一番奥にある椅子で寝ていた。


「何かあったんですか?」


 京介の言葉にも応えず、寝ている薊の前まで速足で移動する。


 パンと、手を1回大きく叩いた。


 薊が本日2度目、ビクッと体を揺らし、静かに起き上がる。


 こうしてみると、薊の背の高さがよくわかる。

 上から見下ろすように、見下すように薊が僕の瞳を睨む。


「何度言ったら…」


 その言葉を遮り、右手の人差し指で元の位置に置かれたままのダンボール箱を指さす。


「あの扇風機は何?」


 僕の強気な声に少し驚きつつ、指さす方をチラリと見る。

 そして再び僕の瞳をギロリと睨みつけ、不機嫌そうに言った。


「烏針の扇風機。志樹が持ってきてくれたのだろう」


 その言葉は嘘偽りのない薊の正直な言葉だった。

 それを感じ取った僕は、弱弱しくうなだれた。


「そうだよね…」


 部屋が静寂に包まれる。

 全員が首をかしげる中、結人はただ1人、漠然とした不安を抱えていた。

 それを言葉に表すと、


 いったい誰が何のために、このダンボール箱を置いていったのか?だ。




 とりあえず、扇風機が入っているダンボールはふたをガムテープで閉じ、部屋の隅に置いておくことにした。


 良実ちゃんと京介、薊の三人に状況を報告し、全員で狭い部屋の中、中央の机を囲むようにして椅子に座る。

 3人とも驚きはしていたが、すぐに話を飲み込んだ。薊も久々に神妙な顔をしている。


「今日の話題は〝これ〟にしようか」


 薊が言う〝これ〟とは言うまでもない。

「烏針先生の扇風機盗難事件」に関することだ。


 これにしようかどころかこれにしなければいけないほどのことだ。


 今回のことはすでに職員室で騒ぎになっている。

 しかも犯人はオカルト研究部部長、憑間薊。


 時間がない。


 オカルト研究部に先生たちがやってくるのも時間の問題だ。


 肝心の扇風機はここにあるのだから、先生に見つかるのはまずい。

 見つかってしまうと下手をすると停学、最悪の場合退学になる。


 前例がないから何とも言えないけど…。


 そして、もし、薊が犯人として何らかの処遇を受けるとすると、

 オカルト研究部にも飛び火が飛んで来るだろう。


 志樹くんが言っていた廃部の危機に今、直面している。


 この件は早急に解決しなければいけない。と、考え込んでいると薊が目配せをしてきた。

 そろそろ始めるぞ、ということのようだ。


「まずは、この事件の解決方法からだ」


 薊の声は真剣そのもの。


 彼女自身企んでいたことではあるにしても、罪をなすりつけられるのは気に食わないのだろう。

 自分自身のこと、オカルト研究部の危機については考えていないと思うけれど。


「1つ目、証拠を隠滅する」


「いや、いや、いや、いや、いや!」

 全力で否定する。


「私たちは何もしていない。別に問題ないだろう」


 薊は突然立ち上がり棚に置かれていた古い工具箱を開け、ドライバーを取り出した。

 ドライバーを見つめながら不気味な笑みを浮かべる。


 嫌な予感がした。


「扇風機には悪いが、これで終わりだ」


 まさか…


「解体する」


「ちょ、ちょっと待って!いったん落ち着こう」


 薊のドライバーを取り上げようと伸ばした僕の手は、

 薊がドライバーを持つ手を天井にあげた途端、意味をなくした。


 取り上げようにも手が届かない。


 それでもあきらめず手を伸ばし続けているとついに薊が折れ、

 不機嫌そうな顔をしながら渋々工具箱にドライバーをしまう。


 再び椅子に腰を下ろし、相変わらず不機嫌そうに言った。


「なら、影野。君はどうしたいんだ。

 何を言われても無視するか?扇風機が見つかれば終わりだがな。

 扇風機をどこかに移動させるか?それも運んでいるときに誰かに見つかれば終わりだ」


 足と腕を組み、僕を睨みつけてくる。

 僕は見つかってしまう時の心配を薊がしていることに少しホッとしつつ、その目を見つめ返して言った。


「この事件の犯人を見つける。

 なぜ部室の前に扇風機を置いたのか。

 それを犯人から聞き出すんだ。何か理由があるはずだからね」


 薊が驚いたように目を見開く。僕は続ける。


「この扇風機…というかこの扇風機が入ったダンボール箱、僕が職員室に行く前にはなかった。

 ということは僕が職員室に行って戻ってくるまでに置かれたということになる。

 その間に何があったかがわかれば犯人もわかるかもしれない」


「僕らがここで今日の話題を考えている間、部屋の外では何一つ物音がしませんでした」

 京介が言う。


「それを考えると、犯人は部屋の前に静かにダンボール箱を置いたということになる。

 まずは犯人の意図を考えるのが良いと思います」


 僕は京介の言葉にうなずき、薊に問いかけた。


「何か心当たりは?」


「ん?なぜ私に聞く」


「この事件での2人目の被害者は薊だからだよ。

 一番の被害者である烏針先生は薊が犯人だと思っている。

 そういう意味で考えるなら、真犯人は薊に恨みを持つ人物ということになる」


 顎に手をあて、少し考え込んだ後、薊は何かに気づいたようにまっすぐ結人を見て言った。


「わかったぞ」


「え?」


「犯人は…烏針だ!」


 部屋に薊の大きな声が響く。


「それはないですよ」


 そう答えたのは志樹くんだった。


「僕、その間ずっと職員室の前にいましたから、烏針がずっと職員室にいたの知っています」


「しかし、他に考え付かない」


「同学年で考え付かないとしたら…1年生には?前に1年生と揉めてたことあったよね。薊」


「あれはただ喧嘩の仲介に入っただけだ」


「確か…霜御浦しもごうらくんとつじくんの喧嘩ですね」


 京介が落ち着いた静かな声で言う。

 思えば、今落ち着いているのは京介くらいだ。


 薊は落ち着いているようで冷静な考えを持てていないし、

 志樹くんに至ってはずっと貧乏ゆすりをしている。


 良実ちゃんはいつも通り無口だけど…。


「喧嘩の仲介?」


 その揉め事に関して僕が知っているのは一年生の男子2人と薊が先生に呼び出されていることだけだった。

 薊がため息をつき、けだるげに説明をする。


「霜御浦と辻は昔からの後輩でな、

 そいつらがしょうもないことで喧嘩していたから仕方なく仲介に入ったんだ。

 恨みを持たれた覚えはない」


「あの時以来、ファンクラブみたいなものもできたんですよね」


「えぇ?!」


 京介の言葉に思わず声をあげる。

 薊が眉間にくっきりとしわを寄せ、僕を睨む。


「何故君がそんなに驚く」


「い…いや…何故って…ファンクラブがあるなんて全然知らなかったから…」


 ははは…。


 苦笑いを浮かべ、何とか誤魔化す。

 ファンクラブの存在を知らなかったのは本当だ。


 でも今僕が上げた声の意味は他にある。

 もどかしい気持ちを振り切り、話を元に戻す。


「ちょっと話が飛んじゃったけど、つまり一年生からは恨まれてないってことでいいんだよね」


 薊は頷いた。


「後は…」


 考え直そうと腕を組んだその時、京介が口に人差し指を当て、「静かに」のジェスチャーを取った。


 全員が息をのむ。


 京介は危機察知能力が優れているのだ。

 耳をすませば何かが聞こえてくる。


 カツ、カツ、カツ、カツ、


 これは…足音だ。


 カツカツという何かを叩くような音は運動靴ではでない。これは革靴の音だ。


 この学校の生徒で革靴を履く人はいない。

 となると足音の主はわかりきっている。


 この足音は…教師のものだ!


 カツ、カツ、カツ、カツ、

 足音はだんだん大きくなってくる。


 そして、足音は部屋の扉の前で止まった。

 背筋が凍り付くのを感じる。犯人なんてこの際どうでも良かったと、後悔の念がよぎる。

 薊が言っていた証拠隠滅、今では良い案だと思えてくる。


 頭の中に「廃部」という言葉が回る。


 なんだかんだ楽しかったな。


 まるで今から死ぬかのようなセリフだ。


 ガラッ、

 扉が開く。


 外の光が部屋に差し込み、思わず手を目の前にかざす。

 扉の前に立っている人物が逆光で影となりよく見えない。


 そこで初めて部屋が暗かったことに気づいたが、そんなこと今はどうでも良かった。


「ネズミは暗いところを好む」


 影の人物が話す。そのどこか安心する声に聞き覚えがあった。


「烏は頭が良いんだ。こんなとこに隠れてたらいつか食われるぞ…なんてな」


 段々目が慣れてくる。


 影の人物が顔に手を当て、深くため息をつく。


「なんだよ。やっぱお前らなのか?」


 そこに立っていたのはオカルト研究部顧問、優暮健一(やさぐれけんいち)だった。

まずは、最後まで読んでいただき、ありがとうございます!


投稿がなかなか進まないのには訳がありまして、


「時間がない!」...のではなく、


「時間の割り振りが単に下手!」なのです。


いやはや、どうにかバランスを取ろうと日々、改善を図っているのですが、


どうしても休日は適当な時間の使い方をしてしまいます。


というわけで、次は「やりたいように」やります!


もう、策を打ってもダメなら、難しく考えず、本能に従ってみます!


成功を祈って...次回予告のようなものをどうぞ!


次回は、第4話「扇風機盗難事件の解決」です。

絶体絶命のオカルト研究部に現れた男、優暮健一(やさぐれけんいち)

優暮と共に、情報を整理しながら会議を進めるオカルト研究部員たち。

少しずつ謎が明らかになる中、部員ナンバー5、水神良実(みかみらみ)が真の力を発揮する...!


それでは、また次回お会いしましょう!

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