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成人の罰  作者: AT
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再び目覚めた罪

 長い間眠っていた様だ。目を開けると蛍光灯の灯りに目が痛くなる。俺は見覚えのない床で横になっていた。身体を動かそうにも両手を背後に縛られて、両足もロープで縛られている。それでも必死に周りを見渡すと同じ様になってる人達が何人もいた。見ただけで数十人はいる。


「なんだ……これ」


 身体を起こしたが、状況がわからないまま時間だけが過ぎて行く。目を覚ました者も数人いるが、話を聞くかぎり同じく状況がわからない様だ。聞いても無駄だ。

 そんな事より前で眠ってる女の子がスカートを着ている。この姿勢から見えそうだが足を閉じてるからうまく見えない。もう少し体勢を変えたら、もしかしたら見えるかもしれない。横になって、少しずつ身体を動かしていく。しかしその女の子は急にこちらを振り向いた。かなりビビったが、どうやら寝返りでこちらを向いた様だ。見た瞬間、絶世の美女とはこの事かと思った。容姿端麗なその姿に思わず言葉を失う。短い髪もまたキュート。綺麗過ぎて見惚れてしまう。こんな運命あるんだな。

 考えたら何でここに捕まってるんだと今更ながら思う。何もない部屋、いや学校の教室である事は間違いない。何故なら黒板があるからだ。この日本で黒板があるのは学校ぐらいだ。しかしこの状況、どこかで聞いた様な気がする。

 前の女の子が目を覚ました。よし、ここで彼女の心を掴むアンド何故ここに捕まったか理由を聞く。正に一石二鳥。


「大丈夫ですか? お嬢さん」


「…………」


 黙ってこちらを見ている。そりゃそうだよな。この状況で普通にするのは変だよな。


「……誰?」


「あ……ああ、失礼。俺は星海ほしうみりゅう。カッコいい名前だろ?」


「………」


「……ノーコメントはやめてくれ。俺が名乗ったんだから、君も名前を聞かせてくれ」


「私は……」


 名前を聞こうとした瞬間、奥の扉が開いた。部屋中にいる人の視線がそこに集まっただろう。出てきたのはスーツ姿の男達が数十人。サングラスとマスクを着けて全く顔が見えない。そして最後に出てきたのは仮面を被った髪の長い女だ。そう、女である事は間違いない。何故なら、顔は隠せてもあの胸の大きさは隠せてないからだ。


「皆さん成人おめでとうございます」


 女は深々と頭を下げる。そして顔をあげると満面の笑みで拍手をした。拍手してくれて嬉しいと、思わないなんて初めてだ。女の拍手は鳴り止まない。そんな中で大声を上げる男が一人いた。


「おい! こんな状況で何がおめでとうございますだ! 何だよこれは!?」


 女は拍手を止めてニヤリと笑う。


「勘のいいのは気付いていると思うがなぁ。お前達は国からクズと判定。よって死ね」


「……は?」


「聞こえなかったか? 死ねと言ったのだ」


「はあああ!!?」


 全員驚く。もちろん俺も驚く。何でこんな事になったのかさっぱり、見当もつかない。騒ぎ出す人達の中で大声を出す男、それが俺だ。わからない事は聞くのが一番いい。


「何で俺達が死ななきゃならねえんだ!?」


「成人適正制度。そう言ったらわかるよな?」


 女の言葉で部屋は静まる。聞き間違いではない。それは一年前に起きた事件である。成人式でふざけた奴等を処刑される。政治が考えた無茶苦茶な法律だ。


「そ、それは一年前に禁止になったはずだ!」


「表向きではそうだ。だが今年の成人式で変わらず馬鹿は暴れ、屑は騒いで、間抜けは迷惑をかける。悲しい事に続けて行く事になった」


「そ、そんなの民衆が許されねえだろ!」


「黙れ! もう質問は受け付けない。お前達にはキッチリ罰を受けてもらう。そして死ね。フフフ……ハハハハハ!!」


 女はニヤリと笑い、高笑いをする。正にゲス野郎だ。俺達が死ぬ。そもそも何故俺はここに連れて来られたのか。特に何も問題ないはずだ。頭もいいし、イケメンだ。成人式もピシッと決めたスーツで女性の心を掴んだが、原因じゃないはずだ。それが原因だったら俺は小学生で処刑されるからな。


「て、冗談じゃねえ! 俺が何したんだよ!?」


 ドンと響く音、女は拳銃を俺に向けて撃ったんだ。弾は髪に当たり床にめり込む。撃たれて数秒の間が空く。当たって抜けた髪がひらひらと床に落ちる。


「言ったはずだ。質問は受け付けないと……そして冗談だと思う馬鹿は今すぐに殺すからな」


「………」


 これ以上口を開けるのはやめておこう。顔が見えないがあの女はマジで殺すつもりだ。


「……あんた何者?」


 そんな中、なんとあの可愛いお嬢さんが質問した。こんな空気の中聞いたら即撃ち殺されるに決まってる。


「フ……この状況で聞く勇気に称えて答えてやる。死にゆく馬鹿共! よく覚えておけ! そして来世まで恐怖しろ! 私の名は、日野ひの鎖巫女さみこだ!」

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