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第3話 初クエストだぜ!妹よ!

この話はいつもより長いです。確か1万字超えています。1万千くらいだったと思います。


この日は、妹の誠奈との楽しく。楽な。なんの危険もない初クエスト......の、はずだった......


 


全ては、俺が金をケチったことがいけなかった。あの時俺がケチらないで大人しく誠奈の言うことを聞いていればこんな事にはならなかったかもしれない。


 


今俺たちのいる場所は領地からそんなに遠くない森の中。簡単なゴブリン討伐の初級クエストだった。


 


それ故に俺はこのクエストを、いや、この森を舐めていた。見誤っていた。異世界を、この現実を甘く見ていた。


 


夕暮れ時、無事にゴブリンを討伐し、クエスト達成条件であるゴブリンの牙をギルドへ持ち帰っていた時だった。


 


「誠...奈...逃げ......ろ...」


 


俺は森の大樹に身体を打ち付けうつ伏せに倒れていた。


頭から流れる生暖かく赤・い・液・体・が俺の視界を遮る。


 


「逃げ......ろ...」


 


身体全体が悲鳴をあげる中大・き・な・魔・物・に怖気付き、尻もちをついて涙目になっている誠奈に向けて手を伸ばす。


だか、今の俺は無力そのもの、大切な妹すらも守ることの出来ない、無力な手を伸ばしてなんになる。


 


「グルルルル...」


「ひっ...」


 


その大きな魔物はデッカイ大剣を上へ振り上げる。


俺は自分の弱さを、自分の愚かさを呪った。


だが誠奈は...


 


「お兄ちゃん...ありがとう...ごめんね」


 


誠奈は恐怖で涙目になりながらも無理矢理笑顔を作り、震えた声で言った。


 


魔物はその大剣を容赦なく誠奈の頭へ振り下ろした。


 


「...さようなら」


「やぁめろぉぉぉおおおぉ!」


 


そして、赤い鮮血が飛び散り、1つの命が散った。


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


~遡ること昨日~


 


無事、ギルドカードを発行してもらった俺たち二人はギルド内の初級クエスト掲示板を二人揃って眺めていた。


 


「さぁーて...初めてのクエストだしまずは楽で安全なクエストにしよーぜ。」


 


俺は隣で立てた人差し指を顎に当てて悩む誠奈に言う。


 


「うーん...それもそうだねー。でもやっぱり魔物との対戦は経験にもなるしやっておきたいかな、ちゃんと装備を整えてからなら雑魚程度は大丈夫でしょ?」


 


指を顎に当てたまま上目遣いで行ってくる。


 


「そだな、じゃあ装備を整えるとして、討伐対象は...ゴブリンとかが無難だな。」


「そうだね、じゃあ...」


 


と、誠奈は今もまだ指を顎に当てたまま歩き、その顎に当てていた指をとあるクエスト発注用紙に当てる。


 


「これなんかどーかな?」


 


そのクエストはこの領地(アルバナと言うらしい)からそんなに遠くない森に生息するゴブリンの討伐クエストだった。


報酬は銀貨3枚。


 


「お、なかなか手頃なのがあったな、よし、それにしよう。」


 


俺もそのクエストを受けることに賛成する。


 


「オッケーじゃあこれで決まりね。さ、早く提出しに行こ!」


 


誠奈はクエスト発注用紙をぺリッと剥がし、俺の腕に左腕を組んで初級クエスト発注、申請窓口へと歩き出す。


 


おい、ちょっと待て。


 


「なんでいちいち腕を組むんだよ!」


 


と、慌てて誠奈を引き剥がす。


 


なんか...顔が熱い。鏡を見なくても自分が赤面しているとわかる。


 


(クソ...なんで赤くなってんだ?...相手は誠奈だぞ?妹だぞ?ありえねーだろ...それになんか鼓動が高まってやがるし...妹を意識するとか兄貴として最低だろ。)


 


こんな最低な兄貴に対して嫌われていないかと恐る恐る誠奈を見やると...


 


誠奈も同じく赤面しながら下を向いていた。だがその表情には少し残念そうな、寂しそうな感じも見て取れた。


 


(え?...なんか、残念そう。いやいやいやいや!自意識過剰だなー俺!誠奈が俺に対して何か特別な感情を抱くとでも思ってんのか?ばっかじゃねーの?頭ん中年中お花畑かよ)


 


「どーした誠奈?気分わりーか?」


 


自分に無理矢理言い聞かせ、誠奈に声をかける。ほんとに具合が悪かったら困るからな。


 


「ううん。大丈夫だよ。さ、行こ?」


 


誠奈はいつもの向日葵のように明るい笑顔を見せる。


大丈夫そうだ。ただの杞憂だったらしい。


 


「おう。いこーぜ」


 


誠奈と窓口へ行き、クエスト発注用紙を誠奈が提出する。


 


「あの、これお願いします。」


 


誠奈が提出すると


 


「はい。かしこまりました。」


 


受付嬢のお姉さんが用紙を受け取る。


 


「コチラのクエストはクエスト達成条件が「ゴブリンの牙」3本となっております。この森にはゴブリンの他にも魔物は何種類か生息していますが全て下級魔物です。危険度は低いでしょう。ですがゴブリンは基本群れで行動します。その群れにも大小様々な群れがありますので大きい群れの場合はいくら弱い下級魔物でも数の暴力ならば多勢に無勢です。お気をつけ下さい。注意事項は以上ですが何かご質問はございますか?」


 


注意事項の説明のあとここでも質問ができるようなのでせっかくだし聞いとく。


 


「制限時間などはありますか?」


「いいえ、このクエストにはありませんので焦らずゆっくりと行おこなってください。ご質問は以上でしょうか?」


 


よし、どうやら制限時間などは無いようだ。


 


「はい。以上です。」


「では、クエストの達成条件などの詳細が記載されてあるクエスト用紙をお渡ししますのでクエスト達成条件とご一緒にこの窓口へ提出してください。また、万が一のことを考え、クエストに行く場合ギルド側が救難要請信号弾をお渡しする決まりになっております。こちらもクエスト用紙とご一緒に返却してください。こちらをどうぞ。」


 


と、お姉さんから拳銃と信号弾と思わしき弾が3発渡された。


 


「この信号弾は赤色の煙を発生させますのでもし命の危険に陥った場合上空に向かって発砲してください。この信号弾を発見した人がすぐに駆けつけてくれます。」


 


へぇー考えてあるなー。


 


「分かりました。」


「ご武運を。」


 


 


 


 


 


ギルドを出た俺たちは商店区の武器屋を目指した。装備を備えるためだ。


 


「お兄ちゃん!あそこだよ!」


「走ると転ぶそー?」


 


武器屋を見つけるやいなや一目散に駆けていく誠奈の背に声をかける。


 


誠奈に遅れて武器屋に入ると戸棚に剣や槍、薙刀に盾といった様々な武器が戸棚どころか壁にも一面に展示されていた。


 


俺たちは武器しか持っていないし、ここは防具だな。


 


「らっしゃい! いい物ばかりだせ?さぁどれにする?」


 


と、ガタイのいいおっちゃんが言ってきた。


 


「装備を備えたいんだが?」


「装備か、武器は持っているようだから防具だよな?予算はどのくらいだ?」


 


あ、考えてなかった。予算か、んー、どうしよう。今の全財産は金貨3枚と銀貨7枚。1人1式分を金貨1枚で済ませたいな。


 


「1式分を金貨1枚。2式分欲しいから金貨2枚なんだが?」


「ん、2式分を金貨2枚だな、じゃあまずねーちゃん、あんたジョブはなんだ?」


 


おっちゃんが誠奈に声をかけた、なるほど、ジョブでそのジョブに似合った装備にするのか。


 


「私?マジシャンだよ」


「マジシャンだな、んー...」


 


暫くちょび髭の顎に拳を添えて考えたあと、


 


「ならねーちゃんはこれなんかどーだ?そんなに高くねーしちょいと重いがマジシャンならそんなに敵に近づくことはねーだろう。どうだ?」


 


勧められたのは胴体を銅で覆い、腕は細い鉄線を編んで作ったネットをはめ、肘から拳までを鉄の小手でガードし、肘から肩までを同じく小手でガードする。肘の部分だけは鉄線のネットになっているがコレは仕方が無い。ここを覆ってしまうと腕を曲げることが出来なくなるからな。そのために鉄線のネットをはめているのだろう。下半身は胴体と同じく銅でできたスカートで覆い、その下に腕と同じく鉄線でできたスパッツを穿き、鉄製の脛当てでガードする。太腿も鉄製の脛当てのようなものだ。下半身も同じく膝は鉄線だけだ理由はさっき肘で言ったとーり。


 


値札を見ると価格は銀貨8枚と銅貨7枚だ。うん。1式にしては安いな。


 


「お兄ちゃん。私これでいいよ」


 


こう、誠奈も言っているので誠奈はこれで決まりだな。


 


「ひとまずこれをくれ。」


「まいど!」


 


それじゃあ次は俺だな。


 


「兄ちゃん、ジョブは?」


 


誠奈と同じく問われる。


 


「ファイターだ。魔法はからっきしでな。」


「ハハハッ俺もだ!男なら魔法なんかに頼らず物理攻撃だぜ!」


 


お、仲間だ!


 


「ファイターなら偏らずバランスのいい武具がいいよな、んー、」


 


またちょび髭に拳を添えてしばらくし...


 


「これだな、全部鉄で出来ているから機動力に長ける。」


 


それは誠奈とそんなに変わらず、変わるのは胴体と下半身が鉄製で機動力を上げたものだ。銅は丈夫だがわりと重いからな。


 


価格は銀貨9枚。よし、これに決めた。


 


「じゃあこれも頼む。」


「まいどありぃ!」


 


所持金残り金貨1枚、銀貨9枚、銅貨3枚。日本円に直すと1万9300円だ。


 


防具を2式分買い、武器屋の更衣室で装備する。


装備し終わり更衣室から出ると既に誠奈は着替え終わり武器を眺めていた。


 


「ん?どうした?なんか気になるものでもあったか?」


 


声をかけると、


 


「うーん、私たちの武器って刃の部分は鉄で出来ているけど柄の部分は木製じゃない?強い衝撃を受けると折れちゃうと思うんだ。」


 


あぁ。そういうことか。


 


「大丈夫じゃねーの?相手はゴブリンだぜ?それにお姉さんが言ってたけどあの森には下級魔物しか出ないらしいじゃねーか」


「うーん、そうだけど...やっぱり心配だよ。武器もちゃんとしたのを買っとこう?」


 


誠奈の言うことも一理あるが...


 


「いや、今は金が少ねぇ、それに今回はゴブリンが相手だ危険は少ないだろう。」


 


今は金が少ない。ここは我慢だ。


 


「んー、心配だなー。」


「きっと大丈夫さ!」


 


心配性の誠奈に言い聞かせる。


 


(ま、一応見とくだけ見とくかな)


 


「なぁ、おっちゃん。俺は槍が得意なんだがいいものあるか?軽さ重視で。」


「ん?軽さ重視だな、それなら...」


 


と、おっちゃんが壁側まで歩き...


 


「これなんかどうだ?」


 


とある槍を指さした。


 


その槍は柄の部分が鉄で出来ており硬い、たが中は鉄パイプのように空洞になっている上鎌十文字槍あがりがまじゅうもんじやり(刃の部分が十字架の様になっている槍)だった。俺の持つ直槍すやり(刃の部分が一直線になっている槍)に比べて十字架の部分で敵の攻撃などを受け止めることが出来る。こっちの方が断然いい。


だが問題は値段だ。金貨1枚と銀貨3枚。俺たちの全財産は金貨1枚と銀貨9枚、銅貨3枚だ。これを買ってしまうと残りが銀貨6枚と銅貨3枚になってしまう。日本円に直すと6300円。


 


(...ダメだな。他にも安いのはあるが俺が今持っている木製の武器や、直槍だけだ、誠奈の双剣は手が出せるほどの価格があったが...)


 


「わりぃおっちゃん。財布が寒くてな、また今度にするぜ」


「おう!待ってるぜ!」


 


やめとくことにした。食料も買わなくちゃいけねーしな。


 


「ほら誠奈、置いてくぞ?」


「あ、待ってよ!お兄ちゃん!置いてかないでー!」


 


武器屋を出ると既に日が落ち、暗くなっていた。


 


「わぁ、もう暗い。」


「そだな、さっさと飯かって帰るぞ。」


 


日が落ちた今でも賑わう商店区を歩き、噴水広場まで来ると...


 


「...ッ!?」


 


とある人物を見つけ、立ち止まる。


 


ドンッ


「あぅっ」


 


俺が急に立ち止まったため、後ろをついてきていた誠奈が俺の背中にぶつかる。


 


「あいたたた...もうお兄ちゃんなんで急に止まるの?」


 


俺は1度誠奈に目をやってからそのとある人物に向けて顎で指す。


 


「ほら、あそこ」


「ん?...あ。」


 


とある人物とは銀をメインに青の装飾が施された西洋の鎧を纏い、兜を被った女性の横顔に1本の槍が描かれたマークのある青いマント羽織り、長い水色の髪、ブルーの瞳、目算163cmの美女がいた。確か...ヴァルキリー騎士団副団長アンナ・ヴァトルフだ。それと同じく銀に青の装飾が施された鎧を纏い、アンナさん同じマントを羽織った男女が10名ほど居た。


 


「これにて今日は解散だ。皆よく戦ってくれた。今日はもうゆっくり休め。」


「「「了解です。」」」


 


アンナさんの言葉に全員が返事をし、解散となる。やっぱり偉いんだなアンナさんって。


 


「いこーぜ?」


「お兄ちゃんが見てたんでしょ」


「うっせ」


 


そして俺たちは改めて晩飯を買いに商店区の人混みへと紛れて行った。


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


~翌朝~


 


翌朝俺たちは宿を出ると商店区で、いつもの店で朝ごはんを済ませる。


 


「おばちゃん、パン2つちょーだい。」


「あいよ、誠奈ちゃん、今日も可愛いねぇー。2つで銅貨2枚だよ。」


「可愛いだなんてやめてくださいよ!はい、お駄賃です。」


 


と言う、いつもの会話をする誠奈。すると...


 


「あら?そう言えば今日はやけに重装備だねぇ、クエストにでも行くのかい?」


 


おばちゃんが変化に気づいた。まぁ気づくわな。


 


「はい、初めてのクエストなんですよ。」


「あらまぁ、頑張るんだよ?あ!そうだ!おばちゃんがいいこと教えてあげる!」


 


と、おばちゃんが人差し指を立てて語り始める。


いつも何かしら語るしそれも結構役に立つ情報ばかりだ。なんでも夫婦で営業してるこのパン屋は昔夫婦で結構腕のたつ俺らと同じでクエストをこなして生活する冒険者だったらしい。なので戦う時の立ち回りやらこの世界の情報はここでほとんど分かっちまう。ありがてぇ。


 


「確か誠奈ちゃんはマジシャンだったわよね?実際に魔法を使ったことがあるかい?」


「いえ、まだ1度もありません。使い方がわからないので...」


 


あぁ。そーいや、誠奈はまだ1度も魔法を使ったことがないな。


 


「もったいないわよ!トータルマジシャンがまだ1度も魔法を使ったことがないだなんてただの宝の持ち腐れよ!」


「は、はぁ...」


「いい?魔法はね、気で打つの、あとはイメージが大事よ、」


「イメージ、ですか?」


 


ほほう、コレは俺も聞いてて損は無いな。


 


「そうよ、例えば火属性魔法のファイヤーボールなんてすごく簡単よ?いいかい?まずは目を瞑って手を前に出すの、で、イメージするのよ、火の玉を思い描くの。あとはファイヤーボールって唱えれば発動するわ。ほかの魔法もだいたい一緒よ、あと、唱える言葉だけど別に違くてもいいからね?イメージしやすいように名前を付けるだけだから。いい?これだけは忘れちゃダメ、1番大切なのはイメージよ?」


「は、はい!頑張ります!」


 


へ、へーためになったな。


 


「おし、森に行く途中の草原で少し魔法の練習をしてみるか?」


「うん!やろう!」


「おばちゃん!ありがとね!頑張る!」


 


俺たちはパン屋を飛び出し草原へと向かった。


 


 


 


 


 


草原につくと的となる木を前に早速練習を始める。


 


「えぇーっと...イメージだったわよね?イメージ...イメージ...」


 


誠奈は目を瞑り右手を木に向かって前に突き出す。


 


すると、誠奈の胴体に中に浮かぶように水平に赤い魔法陣が展開された。それと同時に誠奈のツインテールが靡く。


 


「ファイヤーボール!」


 


ボウッ!!


撃てた!撃てたが...


 


ヒョロヒョロ~~~ポフッ...


 


小さい火の玉は木にあたり力なく消え失せた。


 


「も、もう1回!」


 


と、もう一度やるが...


 


ヒョロヒョロ~~~ポフッ...


 


結果は同じく、上手くいかない。


 


「もーなんでよ!」


「もう1回!」


 


再び挑戦する。


 


「ファイヤーボール!!」


ゴウッ!!


 


「おぉ!」


 


今度は直径1mほどの炎の塊ができた。そしてその塊は...


 


ボンッ!


っと木に当たると同時に爆発した。


 


(なるほど、火属性魔法は爆発するんだな、火だもんな。火薬が爆発したら火が出るし別におかしくはねーか。)


 


パチパチパチ


 


ん?


 


メキメキメキッ


 


んん?


 


って、


 


「おいおいおいおいおい!燃えてるって火事だよ火事!早く消せ!」


 


誠奈のファイヤーボールが強すぎて木がまるごと燃え始めた。このままじゃ周りの木にも燃え移って大火事になりかねん!


 


「け、消せって言われても...どうすればいいか...」


「水属性魔法使えよ!」


「まだ使えないよーー」


「なにぃーーー!?」


 


わああああああ


火事になるー!!


 


 


 


 


 


 


 


 


 


数十分後、ようやく鎮火した、燃え尽きた木々は全部で10本程、ちよっとした火事だ。


あのあと二人がかりでなんとか火を消そうとしたが俺は水属性魔法が使えないため誠奈頼り。


まぁ消火作業のうちに水属性魔法と風属性魔法を組み合わせた水の竜巻のようなものが使えるようになった。名前をそのまんまにウォータートルネードと言うらしい。他にも水の壁を作り出すウォーターウォールや、それを元に火の壁を作り出すファイヤーウォールなども使えるようになった誠奈であった。


 


 


 


 


 


 


 


 


わりと消火作業でヘトヘトな誠奈をおんぶで森まで運んだ俺は森に着き、誠奈を下ろす。


おんぶ状態で魔物に襲われたらたまったもんじゃないからな。


 


「おし、着いたぞ。」


「あ、ありがとう。」


「このくらい楽だぜ!」


 


誠奈は少し顔を赤らめているが...さっきの火で顔が火照ったのか?


 


「なぁ誠奈、なんか顔が赤いがどーした?気分悪いのか?」


 


と、誠奈に声をかけると、


 


「ち、違うよ!そんなんじゃないから大丈夫だよ!」


「そっか?気分悪くなったら言えよ?」


「う、うん。」


 


なぁーんか誤魔化されてる気がするけど深くは考えないどこ。


 


「ほいじゃ!ゴブリン討伐へレッツゴー!」


「お、おー!」


 


動物などの鳴き声でうるさい森の道へと足を運んだ。


 


「あ、蛇。」


「きゃあっ!嘘っ!?どこどこ!?蛇は無理なのーーー!」


「嘘だよ。ばーか。」


「はぁー?こんにゃろーーー!」


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


~かなり進んだ森の奥~


 


俺たちは倒れていた木に腰掛け、持参していた妹お手製の昼食をとっていた。


 


「いないね、ゴブリン。」


「ああ、いねーな。」


 


あれから俺たちはかなり奥まできたが未だに1匹もゴブリンを見つけていないのだ。


ほかのオークとか言う魔物は見つかるんだけどな。


 


「ふー、腹もふくれたし。ゴブリン捜索の続きと行きますか。」


 


俺は立ち上がり背伸びをする。


 


「そうだね、続けようか。」


「おう。」


 


と、ゴブリン捜索を再開しようとした時。


 


「キエェエエエエェェ!!」


 


と、言う何かの動物の悲鳴が聞こえた。


 


「何?今の声。」


「なにかの悲鳴のようだな。行ってみるぞ。」


 


悲鳴が聞こえた場所に行ってみると。


 


「?...!?...シッ......ビンゴだ。」


 


行ってみるとそこには木がなく、ちょっとした広間が広がっていた。


そしてそこには足を怪我した鹿を囲うようにゴブリンたちが5匹居た。


俺は口に人差し指を当て静かにするように促す。


 


「ほんとだ...でも5匹だよ?私たちは3匹倒しちゃえばそれでいいんだけど」


 


誠奈が小声で喋る。


 


「馬鹿か、あまりの2匹も倒して牙を売って金にするんだよ。はした金くらいにはなるだろ。」


 


その頃ゴブリン立ちは鹿を仕留め5匹仲良くお食事中。食事中は両手が塞がる。狙うなら今だ。


 


「誠奈、俺が反対側に回り込んで、奇襲する。誠奈は逃げてきたゴブリン達をファイヤーウォールで囲んでくれ。あとは逃げ道のなくなったゴブリン達を俺が討ち取る。」


 


作戦内容を誠奈に伝える。


頼むからしくじらないでくれよ。もし逃がしたら捕まえるの面倒だから。


 


「うん。わかった。」


 


俺は気づかれないように反対側に周り、木の裏に隠れた。それから誠奈に見えるように少しだけ手を出し、五本の指を5、4、3...と、カウントダウンしていく...そして、2、1...GO!


 


バッと、飛び出し、まずはこちらに背を向けているゴブリンの頭に槍をぶん投げ、絶命させる。ゴブリン達はパニック状態。その間に槍を引き抜き、その槍を引き抜き際にターンのように回転しながら隣にいたゴブリンの頭と胴体をお別れさせるように薙ぎ払う。


 


ズバッ!


 


(よし、いけるぞ!あとは逃げ出したゴブリン達を誠奈が魔法で...)


 


ようやく状況を理解しだした残りの3匹は案の定誠奈のいる方へと逃げ出す。


 


(馬鹿め、そこは誠奈が魔法で塞ぐんだy...)


 


「きゃー蜘蛛は無理なのー!」


 


だよ、と、心の中で呟こうとした時誠奈の叫び声、蜘蛛ごときで叫ぶなよ...


 


「ギギッ!?」


 


ダッ!


 


あーあ違う方向に逃げ出したよ。ゴブリンさんや、お待ちになって。


 


「おい!誠奈!何悲鳴あげてんだよ!逃げ出したじゃねーか!」


 


誠奈へと叫ぶ。


当の本人は...


 


「だって怖かったんだもん」


 


目をうるうるさせながら言ってるよ。


 


「うっせ!お前は右に逃げ出した1匹を追え!俺は左に逃げ出した2匹を追う!仕留めたらまたここに戻ってこい!」


 


即座に指示を出し、俺は左へ駆ける。


 


「わ、わかった!」


 


誠奈も右に駆け出した。


 


追いかけること数十秒俺の槍投げの射程圏内に1匹入った。


 


「オラァっ!」


 


俺はそのゴブリンに向かって直槍をぶん投げた。その槍は狙い通りに頭に突き刺さり、槍の中間地点にゴブリンの頭が来たところで停止する。


俺は槍を持ち上げ前方10mほど前を走るゴブリンに向けて槍に突き刺さったゴブリンを遠心力も加えて後ろから前へと思い切り振るった。


 


「フンっ!」


 


遠心力と俺の腕力で投げ飛ばされたゴブリンは前方を走るゴブリンの上に墜落。


 


「ギ...ギギ?...ギィ!?」


 


走りながら振り返ったゴブリンは仲間が降ってきたのに驚きながら潰された。そのゴブリンはジタバタジタバタ暴れている。


 


そのゴブリンに追いついた俺はゴブリンの喉笛に槍を突き刺した。


 


「これで、しまいだっ!」


 


ズドッ!


 


 


 


 


 


 


 


 


広場まで戻ると丁度誠奈も戻ってきた所らしくその右手には誠奈の魔法で黒焦げになったゴブリンが引きずられていた。


俺は仕留めた2匹のゴブリンを焼き鳥ならぬ焼きゴブリンのように突き刺して運んできていたため、その2体を槍から引き抜く。


 


「はぁ...疲れた。」


「ごめんねお兄ちゃん。私が声出しちゃったから...」


 


落ち込む誠奈にはこれ以上の説教は無用だと思い、逆にフォローしとく。


 


「いんや、誰にだって苦手なものの一つや二つある。それが誠奈は蜘蛛だったってだけだ。次からは気をつけよーな?」


 


俺はスマイルで言う。


すると誠奈は...


 


「う、うん!気をつけるよ。」


 


落ち込む顔からいつもの向日葵の様な笑顔に変わった。ほんと、笑うと可愛いんだよなぁ。


 


 


一息つき、次はゴブリンの牙を持ち帰らなければならない。


さっさと抜き取って帰ろう。


 


「よし、あとはこのゴブリンの牙をとるぞ。じきに日が暮れる。夜の森は危険だからさっさと取って早く帰ろう。」


 


夜は魔物が活発に行動する。それにここは森の奥だ。証明なんかない。夜になると闇の中だぞ。


 


「そうだね、早く帰ろう。」


 


俺たちはゴブリンの牙を抜き取りポーチに入れて引き返し始めた。


 


帰り道の中、暇なので会話しながら帰る。


 


「今日の晩飯なんにする?」


「んー、ビーフシチューが良い。」


「無理だよ。この世界じゃない調味料がいるから。」


「チェッ。」


「拗ねても無理なものは無理ですー。」


「はいはい。」


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


しばらく歩き、あと1キロほどで森を抜けるところまで来た。


 


「でさぁ、その子猫がね...」


 


誠奈の話を聞きながら歩いてると...


 


バサバサバサバサッ!?


ギャーギャー!?


 


一瞬森の動物や魔物達が一際大きく騒ぎたしたと思ったら鳥達は逃げ惑い周りの動物達も逃げ出した。


そして、周りは沈黙へと堕ちる。


 


「な、なんだ?」


「急に動物達が騒ぎ出したと思った今度はみんなどこかへ行っちゃった。」


 


この動物達の妙な行動に眉を寄せていると...


 


 


 


 


メキメキメキ...ズシンッ


メキメキ...ズシンッ


 


この沈黙の中、木がなぎ倒される音が聞こえてきた。


 


それもその音はだんだんこちらに近ずいて来ている。


 


「なんか、やべーのが来たみたいだ、走るぞ!」


「う、うん!」


 


俺と誠奈は走るがどうやらこの木をなぎ倒しながら迫ってくる何かは俺たちより随分と速いらしく、音がどんどん近づいてくる。


 


「おい誠奈!もっと早く走れ!」


「わ、分かってるよっ!」


 


メキメキッ!ズシン!


メキメキメキ!ズズン!


 


俺たちの後ろをおってくるその()()俺たちのず後ろにある木々を一際大きな音を立ててなぎ倒し、姿を表した。


 


バキバキバキ・・・バゴンッ!


 


「グガアアアアアアァァアアァ!」


 


その何かは身長目算5mはある。上半身は人間の男性のような体つきをしており、下半身は熊のように黒い体毛で覆われていて、頭は人の顔、だが頭に2本の角がある化け物だった。


その化け物は幅は目算80cm縦2mの大剣を携えた鬼。まさに鬼そのものだった。


 


「ひっ!?」


 


誠奈は恐怖で動けない状態。その誠奈に喝を入れる。


 


「おい誠奈!何ビビってんだ!こいつはやべぇ!救難要請信号弾を撃て!」


 


ビビリまくっていた誠奈に叫び、信号弾を撃たせる。


ここからあと800mほど行けば森を抜ける。そしたら誰かこの信号弾に気づいて助けに来てくれたり、助けを読んできてくれたりするかもしれない!


 


「わ、わかった!」


 


ガタガタ震える手で信号弾に弾を装填し、上空に向かって撃つ。


 


バシュゥ!


という音とともに赤色の煙が上に立ち上る。


 


「ガアッ!」


 


魔物が動き、その馬鹿でかい大剣を振り下ろす。


 


ズドンッ


と言う、地響きがなる中、紙一重で躱した俺の髪が宙を舞う。


 


「誠奈!一旦下がってお前は俺の支援をしてくれ!」


 


誠奈指示するが誠奈は恐怖で動くことが出来ていない。


 


「クソ!」


 


俺は魔物の大剣を真上から突き刺して来る攻撃を躱し、腹へと槍を突き刺す。が、


 


「うぉらァ!」


 


ドス!


と、突き刺したはずだが魔物のその強靭な肉体には歯が立たず少ししか刺さらない。


 


「チッ」


 


ヒュオッ!


と言う、風を切る音が聞こえ、咄嗟に槍の柄の部分でガードする。しかし。魔物のどでかい左拳が俺の槍をへし折り腹に直撃する。


 


バキッ!


 


「何!?ゴハッ」


 


数m吹き飛んだ俺は大樹に身体を打ち付け仰向けに倒れる。


 


頭がボーッとする中、俺の脳裏にある出来事が過ぎる。


 


『うーん、私たちの武器って刃の部分は鉄で出来ているけど柄の部分は木製じゃない?強い衝撃を受けると折れちゃうと思うんだ。 』


 


それは誠奈の言葉だ。


 


俺はこの魔物に一撃で伸されてしまった。


 


もしあの時誠奈の忠告を聞いていれば槍は折れずにまだ戦えていたかもしれない!


誠奈を守ることが出来たかもしれない!


 


(クソッタレ...)


 


薄れゆく意識の中、その鬼は俺を吹き飛ばしたあと。俺が戦闘不能だと判断し、誠奈の方へゆっくりと近寄っていく。


(クソ!俺のせいだ...俺のせいで誠奈がこんな目に...)


全ては、俺が金をケチったことがいけなかった。あの時俺がケチらないで大人しく誠奈の言うことを聞いていればこんな事にはならなかったかもしれない。


 


今俺たちのいる場所は領地からそんなに遠くない森の中。簡単なゴブリン討伐の初級クエストだった。


 


それ故に俺はこのクエストを、いや、この森を舐めていた。見誤っていた。異世界を、この現実を甘く見ていた。


 


夕暮れ時、無事にゴブリンを討伐し、クエスト達成条件であるゴブリンの牙をギルドへ持ち帰っていた時だった。


 


「誠...奈...逃げ......ろ...」


 


俺は森の大樹に身体を打ち付けうつ伏せに倒れていた。


頭から流れる生暖かく()()()()が俺の視界を遮る。


 


「逃げ......ろ...」


 


全身が酷く痛む中、魔物()に怖気付き、尻もちをついて涙目になっている誠奈に向けて手を伸ばす。


だか、今の俺は無力そのもの、大切な妹すらも守ることの出来ない、無力な手を伸ばしてなんになる。


 


「グルルルル...」


「ひっ...」


 


その大きな魔物はデッカイ大剣を上へ振り上げる。


俺は自分の弱さを、自分の愚かさを呪った。


 


 


 


だが誠奈は...


 


 


 


「お兄ちゃん...ありがとう...ごめんね」


 


誠奈は恐怖で涙目になりながらも無理矢理笑顔を作り、震えた声で言った。


 


魔物はその大剣を容赦なく誠奈の頭へ振り下ろした。


 


「...さようなら」


「やぁめろぉぉぉおおおぉ!」


 


そして、赤い鮮血が飛び散り、1つの命が散った。


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


そう。散ったのだ。


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


()()()()()


 


 


掠れた視界の中俺の目がとらえたものは。あまりに鋭い斬撃に頭から足の股まで綺麗に半分に切り裂かれた魔物と、その斬撃で生じた爆風によって暴れ回る水色の長髪が靡いていた姿だった。


 


 


薄れゆく意識の中、俺はある人の後ろ姿が目に入った。


 


青色のマントに兜を被った女性の横顔に1本の槍が描かれたマーク。


 


(あれは...確か...えっと...なんだっけ...)


 


どんどん意識が薄れてゆき...


 


そのマークを見てとらえたのを最期に...


 


 


 


(なんか...どこかで見たことのあるような...)


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


(あぁ。そうだ、ヴァルキリー騎士団の人達のマントあったマークだ...)


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


俺は意識を...


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


手放した。


 


お読みいただきありがとうございました!!!


次もすぐ出します!

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