新たなる邂逅
やっとルビや傍点の使い方がわかりました...
あ、今これを読んでる人、ありがとうございます!
更新ペースが落ちてきてる...
何とか上げなくては...
「うへぇ...こんなの毎日するのぉ?」
日が落ちるまでひたすらに木刀を振り続けたカーラが、へとへとになりながら言った。
「カーラは武器の扱いが分かってない分皆よりも頑張って覚える必要があるんだよ」
「ひぃぃん...」
カーラは情けない声をあげていた。
「...ね、カチュ?」
僕は木に隠れているカチュに話しかけた。
「貴方って、とても勘がいいのね...それとも、警戒心が高いってことかしら」
カチュがふう、と息を吐いてこちらに向かってきた。
「カチュ!?何時から見てたの!?」
「多分、酒場から出た時から付いてきたと思うよ」
僕はカチュが付いてきているのに気付いていた。
やはり、カチュの方がカーラと比べてはっきり見える。
トロルの時は、周りの水晶よりもぼんやり見えたから気付かなかった。
何となくだけど...おそらく、魔力を持っているものははっきりと見えて、魔力がないものはぼんやり見えるのだろう。
はっきり、といっても輪郭の話だけど。
顔とかが見えるわけじゃない。
「...どうかしたの?」
カチュがこちらに話しかけてきた。
「あぁ、ちょっとね」
僕はなんとなくそう答えてから、カチュに質問した。
「...なんで付いてきたの?」
「貴方達の試合とやら少々気になったものですから」
「ふぅーん...」
どことなくカーラが不満げに答えた。
「そういうあなただって、大会に出るんでしょ?」
「えぇ、そうよ。私はベテランクラスに出るわ」
カチュは剣術披露大会に出るらしい。
...えっ?剣術披露だよね?
「ね、ねぇカチュ、君は魔法使いじゃないのか?」
「は?何故そう仰るの?」
「だって、君の背中にあるのは杖じゃないのか?」
僕は輪郭でしか分からないが、カチュの背中に背負っているのはどう見ても杖にしか見えない。
「...そういえば貴方、ずっと目を閉じていますが...?」
僕はカチュに、「見えないが見える」事を伝えた。
「...よく分からないけど、つまり見えるってことね?」
そういうとカチュは、杖を手に取った。
すると、杖がまるで剣のような形に変形した。
「私は只の魔法使いじゃないわ。魔法と剣術を扱う、魔法剣士なのよ」
カチュは誇らしげに言った。
「へぇー!かっこいいー!」
カーラは興奮気味に叫んだ。
「カーラ...と言いましたわね?貴女」
「そうだけど...」
カチュは名前を確認すると、カーラの喉元に剣を突きつけた。
「えっ...」
「ふふふ...」
困惑しているであろうカーラを気にせず、カチュは僕に言った。
「貴方はこういう時、どう行動するかしら?」
もし仮に敵に味方を人質に取られた時、どう対処するか...という事を僕に聞きたいらしい。
...なぜこんなことしたのかわかんないがよく考えてみよう。
もし下手に動けば敵は人質を殺してしまうかもしれない。
かといって、動かなければ味方を助ける事ができない。
ということは、敵の不意をついて、何かしら敵が行動するまでの時間を伸ばす必要がある。
どうすれば...
自分は足元を見た。
...閃いた!
「これだぁ!」
僕は思い切り地面を蹴って、相手の目に土を掛けた。
「くっ...」
「うえっぺっぺっ!口に砂が...」
動揺するカチュの剣を奪って、カーラを引き寄せた後、剣をカチュに突きつけた。
「ふふっ、流石ね...」
カチュはお手上げ、という感じて両手をあげた。
「...」
...どうしたんだろう、カーラは黙っている。
いつもは、「凄い」とか「ひえぇ」とか言いそうなのに。
「貴方達随分と仲が宜しいのね」
カチュがそう言って初めて気付いた。
僕はカーラを引き寄せた、というよりは、抱き寄せていたらしい。
ピッタリとくっついている。
「あっ、ご、ごめんね!」
カーラがパッと離れた。
と、同時に頭痛がした。
あの時と同じだ...
「よいしょっと、お前あったかいなぁー」
「ちょ、なに抱っこしてるんだ!離せ!」
「いだいいだい!離す、離すから殴るな...痛ったぁ!」
「あっごめん!ちょっとやり過ぎた...」
「しっかりしてくれよ...それでもお前...か?」
「大丈夫!?私が離れるのがそんなに嫌だった?」
「あらあら、まるでうら若き乙女と青年ね」
「お互いまだ若いわ!」
僕はまたあの時と同じように何かを見た。
僕の無くなった記憶なのだろうか...?
「ちょっと、大丈夫ー?」
「うん、平気だよ」
僕はカーラに笑って見せた。
「一体どうしたの?」
僕は2人になくなった記憶を見た事について話した。
「ということは、記憶がちょっと戻ったりした?」
「なくなった記憶って?貴方、一体何者なの...?」
「ちょっとちょっと、いっぺんに話しかけないでよ!」
僕はどう、なんて答えればいいのか分からなくなってしまった...
数日後、僕はカーラと一緒に酒場に行った。
「おう、カーラじゃねぇか。なんか変わったな」
「なんかじゃないでしょ!ここ数日間、みっちりしごかれたわよ...」
カーラは僕の特訓でしごかれたことをあることないこと言っている。
「へぇ、そうかい。まぁどうでもいいがよ」
「うぐぐ...さらっと流すなー!」
カーラは何がなんでも認められたいらしい。
「カーラはよくやったよ」
「しごいた張本人に言われてもなぁ...」
と、カーラはちょっとふくれていった。
「まぁいい、これがお前らのトーナメント表だ」
僕達は明日に来る大会のトーナメント表を貰いに酒場に来たことを忘れかけていた。
「あっそうだ!えーっと...」
僕はカーラにトーナメント表を読んでもらった。
「私は...ゲッ、何だか強そうなやつに当たっちゃったよ...」
カーラはがっくし、といった感じで言った。
「ラクは...まぁ、普通な相手じゃない?」
どうやら、そんなに強そうな感じじゃないらしい。
「はぁ...ま、明日にならないと相手はわかんないからね、今日はゆっくりしようか」
「...ここ最近はずっと剣を降りっぱなしだしね、明日に備えて休もうか」
やったー、とカーラは両手をあげて喜んでいた。
「...失礼するよ」
ある者はそういって僕の横を通った。
「おう、マスカルじゃねぇか」
マスカル、という者も大会に出るらしい。
「えぇ、優勝させてもらいますよ」
「ひひっ、ダークホースっていうのはお前の事を言うんだろうがな...最近来た奴もなかなか筋がいいんだ」
そういうと管理人は、僕を指さした。
「あいつだよ、なかなかすげぇんだぜ?」
「へぇ...」
そういうとマスカルは、握手を求めてきた。
「やぁ、僕はマスカル、ベテランで出る予定の者だ」
僕は握手を交わすと共に、マスカルに質問した。
「ベテランって事は、結構な実績があるという事ですね?」
「まぁね、僕は魔物を倒していただけだけどね」
マスカルはそう答えた。
「そいつはな、何ヶ月か前、ふらっとここにきて傭兵になったやつなんだ」
管理人は自慢げに話している。
「そいつは誰ともペアを組まずに、幾つもの高額依頼をやってのけた奴なんだ」
ペアを組まないという事は、常に1人で、そして高額依頼というのは、言い換えればとても危険な依頼という事...
そう考えてみると、傭兵になった期間が数ヶ月という短い期間であっても、ベテランクラスに出るのは案外妥当かもしれない。
「では僕は忙しいので、これで」
そういうとマスカルは、トーナメント表を受け取って行ってしまった。
「なんか仮面付けてて変なやつー」
カーラは小馬鹿にしたような声で言った。
仮面を付けているらしい...
「あぁ、だから噂によれば、仮面の貴公子...なんて言われてるらしいな」
管理人はそういいながらグラスを磨いていた。
仮面の貴公子マスカル...
この出会いでマスカルもまた、男の運命に絡まれていくのだった...