落ちた男との出会い
「うわぁ...凄いことになってる...」
カーラは森の中に入っていく。
いや、森といってもいいのだろうか?
落ちたものの衝撃により周辺の木々は折れ、魔物や動物の残骸がそこらじゅうに落ちている。
「これで獣肉には困らないね...って何言ってんだか」
カーラは1人でぼやきながらクレーターに向かった。
「えっ...?あれって...人!?」
クレーターの中心地には男が倒れていた。
全裸で。
「えっ!?なんで服着てないの!?衝撃でなくなっちゃった!?どうしよう!?」
まさか人が倒れているだなんて思いもしなかったので、非常に困惑していた。
「うーん...とりあえず助けてから考えよう...っていってもどうやって助けよう?まず生きてるのかな...?」
空から落ちてきて、無傷で済むはずがない。
いや、服の話じゃなくて。
普通森が森でなくなるぐらいの衝撃で落ちてきたんだからきっと死んでるにちがいない。
「うん!死んでる!だから見なかったことに...」
「う...」
呻いた。今呻いた。絶対。
「まさか生きてるの...?」
カーラは近くにいって確かめてみた。
息がある。
「だ、大丈夫ですか...?」
とりあえず声をかけてみる。
「だいじょばないです...」
普通に応答してきた。
「えっと...服の方は...?」
「服...?わっ!」
服がないことに気付いて、男は恥ずかしがっている。
「あっ、ごめんなさい!」
カーラは反射的に謝ってしまった。
「あーっと...とりあえずなんか代わりになるものを...」
「代わりに...?あっ、これとかどうですか?」
カーラは自分のつけてるマントを差し出した。
まさか格好つけの為に買ったマントがこんな事に使われるとは思ってもみなかった...。
「とりあえずこれで体は隠せそうです」
「それならよかった...って、あれ?」
なんだか色々と聞きたい事があるが、この出来事で頭がいっぱいになっていて何故生きているのか聞くことさえ忘れていた。
今思っていることは、服をどうにかする、ということである。
いつまでもマントじゃ、もし風でマントがあおられようものなら、兵士に捕らわれるに違いない。
「えっと...私は服を買ってくるので、あなたは門の外で待っててもらえますか?」
「えっ、見ず知らずの僕の為に服を買ってくれるんですか!?」
「えぇ、だってそのままじゃただの変態でしょ?」
「ありがとうございます!えっと...お名前は?」
「私はカーラ、あなたは?」
「僕は...僕は...あれ?」
「どうしたの?」
「えっと...ごめんなさい、記憶がないです...」
「え?」
「いや、えっと、多分、僕の記憶がなくなっちゃいました」
一瞬、頭が真っ白になった
「記憶がなくなった?あの記憶?名前とか思い出とかの?」
「はい...なくなっちゃいました...」
「えぇーー!?」
一体この男はどんな男なんだろうか...
カーラは驚きと共に、この男に対して少し興味が湧き始めた。