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落ちた男の奇妙な運命  作者: 六等星の鷲座
王国ラムライズ編
19/23

想い

またしても遅れました...

でも、あと1話〜2話で終わります。

最終話を楽しみにしていてください!

あと、アクセスありがとうございます!

また遅れるかもしれませんが、必ず書き終えてみせます!

「やっと神殿についたねー!」

カーラは目的地が見えると、途端に元気になる。

それはそれでいいんだが、こっちは...なんというか、かなり具合が悪い。

神聖な場所による影響には違いない。

「大丈夫か?」

と、マスカルは肩を支えてくれた。

あれ以来、何処と無く触れる事が多くなった気がする...

でも、触れられた事を気にしてられないほどキツかった。

「ラク、平気?」

カーラもこちらに近づいてきた。

「大丈夫...とりあえず神殿の中へ入ろう」

僕は絞り出すように声を出した。



中に入ると、そこは意外にも狭かった。

いや、広いってことは広いんだけど、神殿の外見と中が一致してないようにも感じた。

「やっときたか」

と、しわがれた声で何者かが語りかけてきた。

「誰だ?」

僕は短剣の柄に手をかけて警戒する。

「まあまあ落ち着け、わしはお前さんたちの味方だ」

気がつけば、そこに人が立っていた。

「味方?」

僕は警戒をとき、老人に話しかけた。

「わしを覚えていないか?」

「おじいさんを?えーっと...」

カーラはうーんと唸った。

「だめだ、覚えてないや」

「それじゃあ、この格好だと見覚えがあるじゃろ?」

というと、何やらお面のようなものを被った。

「あーーっ!!」

すると、カーラは大声で言った。

「剣術披露大会の!」

剣術披露大会?

僕はあの日のことを思い出した...



そういえばあの時、カーラが唐揚げを頬張りながら

「ねぇねぇラク、あの人すごいよ」

と言ってきた気がする...

「あの人?」

「うん、あの変な狐のお面付けてる人」

「そんな事言ったって、目が見えないんだから分からないよ...」

「多分あの人がノーマルクラス優勝するね、唐揚げ賭けてもいいよ」

「無料で貰ってきたものを賭けられても...」




と、そんな会話があった気がする。

「確か名前は...」

「「コンコンマル」」

おじいさんとカーラの声が重なった。

「いい名前じゃろ?一晩考えたんじゃ!」

と、得意げな声でいい、鼻を鳴らした。

ここでマスカルが話をきりだした。

「何故ここに...えっと、コンコン...」

マスカルが言葉に詰まる。

「コンコンマルじゃ」

「...コンコンマルさんが?」

自分もカーラも、多分それが気になっていたと思う。

「ふふ、何を隠そうこのわしが、魔王の気配に気付いたのじゃ」

「魔王の気配に?」

魔王のことを知っているのは王様や僕達だけだったと思うが...

「大会が終わったあと、わしは王に伝えた。『おぞましき魔の気を感じる』とな」

「魔の気...ですか」

「わしはその後、魔王城のありか、そして、大会で優勝した者に魔王を討伐させるようにと王に伝えた」

「なぜ優勝した者に討伐させようと思ったんですか?」

と、素朴な疑問を投げかけた。

王がその気になれば、国同士で結託し、最強クラスの傭兵、冒険者等などを集める事が出来るはずだ。

「理由は簡単、お前さんが優勝したからじゃ」

と、当たり前かのように言った。

「え?」

「...お前さん、人間じゃないじゃろ?」

このおじいさんは僕の正体を知っているかのようだった。

「僕が何者か知っているんですか!?」

と、ついまくし立てるような言い方でおじいさんに詰め寄ってしまった。

「まあまあ落ち着け、お前さんの容態をみりゃすぐ分かる、尋常じゃないくらいキツそうな顔してるからのぅ」

と言われて、今自分が神聖な場所の中にいるということを思い出した。

「そこに座ってなさい、今必要なものを持ってくる」

といって、おじいさんは奥に消えていった。




少しして、おじいさんが何かひし形の石を持ってきた。

僕がそれの気を感じとるや否や、身体中がこの石を否定するかのような感覚に陥った。

「やはり、お前さんは魔の者か...」

と、おじいさんは言った。

「待って!ラクは魔物だけど、悪い人じゃないんだよ!」

と、カーラは僕を守ってくれた。

それにマスカルも便乗し、

「リーダーがいなければ私達はここまで来れなかったし、私も悲惨な目にあっていたんだ、信じてくれ!」

と、珍しく熱の篭った感じで擁護してくれた。

「わかっとるわかっとる、こやつが悪ではないとは()()()()よ」

()()()()?」

僕はその言葉に引っかかった。

「お前さんは悪じゃない。だが、善ともいいきれないのじゃ」

僕はよく分からなかった。

「それはどういう意味で...?」

「それはすぐに分かるじゃろうて、ほれ、お前さんの代わりに、そこのお嬢さんが受け取ってくれ」

と、ひし形の石をカーラに渡した。

「何?この石...なんていうか...暖かい感じがする」

「それは純潔の秘石、魔王城の結界を壊すための道具じゃ」

「なんでおじいさんが...?」

カーラは不思議そうに言った。

「わしは、この神殿の管理を任されている預言者じゃ。来るべき時に、来るべき者に渡すためだけにここに住んでおった。何世代もな...」

と、どこか憂いをもった声で言った。

「何世代も...」

「じゃあ、これを渡した今、おじいさんはどうするんですか?」

「そうじゃな...」

と、少し考えて、

「とりあえず色んな国に遊びにでも行こうかのぅ」

と、のんきに答えた。






おじいさんのご好意により、ご飯を食べさせてもらい、ここで明日に備えることにした。

「今日はここで寝なさい、ここにいるのが辛いのであれば野宿でも構わんが...」

「いえ、ここで寝ます。どうぞおかまいなく」

と言ったものの、キツいのは確かだ。

「そうか...わかった」

といって、おじいさんは部屋から出ていった。

「ラク、本当に大丈夫なの?」

「きつかったらすぐに言ってくれよ」

と、2人は心配してくれているようだった。

「大丈夫、おやすみカーラ、マスカル」

「おやすみなさい...」

「ああ、おやすみ」

あとは寝るだけだ...






目を(つむ)ればなんとか眠れると思っていた自分が馬鹿だった。

やっぱり体がこの場所を拒んでいた。

何故だろう...?

自分が魔物だから、というのもあるが、それ以上に何か理由があるはず...

僕はふらふらと神殿を出て、そこにあるであろう夜空を見上げた。

すると、ぼんやりと記憶が戻ってきた...





「トドメだぁぁぁぁ!!!」

僕の短剣が敵の体に突き刺さる。

「やったな!相棒!」

相棒が歓喜の声を上げる。

「貴様ら...我無くしてこの世はなりたたぬぞ...」

敵が声を上げる。

「残念、僕達はお前を必要とせずに、この世界を生きていくから安心して消滅しろ」

といって、短剣を縦に引き抜いた。

叫び声と共に、敵は光になって消えた。

「ふぅ...終わったなあいぼ―――おわっ!」

僕は相棒に抱きつかれた。

戦いの連続で汗が染みているはずなのに、何処と無くいい匂いがした。

「やっと終わったんだね!相棒ー!」

「おごぉぉぉぉ、全身砕ける勢いで抱きつかないでくれぇぇぇぇ」

僕の言い分を聞かずに、むしろ力が入った抱擁を、僕は必死に受け止めた。

「はぁ...はぁ...嬉しくてつい...」

「死ぬかと思った...」

と、安堵し、相棒の顔を見ようとした、その時

「我がこの世を治めるのだァァァァ!!!」

と、相棒の体に、光だけになった敵が槍となって突き刺さった。

槍は相棒の体を容易に貫き、体の中に入っていった。

「相棒ッ!!!」

僕は入り込む光を掴もうとするが、遅かった。

「う、ううう...相棒...」

「おい、しっかりしろ!」

相棒はその場に膝をついた。

「くくく...この体さえあれば、我はまだこの世を...」

「うう...相棒...」

どうやら相棒は、敵に体を乗っ取られる寸前で留まっているらしい。

「おい!相棒!クソっ、どうしたら...」

と言ったところで、相棒はフッと笑い、

「相棒...約束、守れなくなっちゃったよ」

「はぁ!?約束!?今はそんな事...」

というと、相棒は自らの手で、自分の胸に手を突っ込み、力を込めた。

「...おい、まさか!やめろ!」

「貴様、何をする!自らの魂を砕く気か!?」

「へへへ...私とこいつは同化してる。だから、私が死ねば...」

「待て、他に何か方法が...」

僕は必死で相棒を止めようとした。だが...

「もうだめだよ、相棒...」

と、悲しい顔をした相棒をみて、僕は力なく膝をついた。

「そんな顔しないで、相棒」

と、もう片方の手で僕の顔に触れた。

「大丈夫、もし私が死んでも...」





「ラク?ラク、ねぇ起きてよ」

「ん...?」

どうやら、記憶を辿っているうちに気を失っていたらしい。

「もう朝...?」

「いや、まだ夜だよ」

気を失っていたのは短い時間だったようだ。

「ふらふらと出ていくのを見かけて、追いかけたら急に...」

カーラは心配してくれた。

「ごめんカーラ、心配してくれてありがとう」

と、お礼の言葉を言った。

少しの間沈黙が続いて、気まずくなったのか、カーラは唐突に僕達が出会った時のことを話した。

「あの時私はさ、『空から依頼書でも降ってくればいいのにな』なんて言ってたら、あなたが空から降ってきてさ」

「その時は僕、裸だったよね」

「うんうん、びっくりしたよー」

「その後、スライムを討伐して、ゴブリンを討伐して、トロルを討伐して...」

「剣術披露大会にでて、ラクが優勝して、魔王討伐を頼まれて...」

「なんだかんだで、ここまで来たね...」

「うん...」

「...よし、明日の為に、もう寝ようか」

「...いや、もう寝る必要は無いよ」

と、カーラは静かに言った。

「どうして?」

「ほら、見えないと思うけど、日の出だよ」

カーラが指を指した方向には、太陽が登り始めていた。

太陽にも魔力があるからか、自分の目でもはっきりと太陽が見えた。

ぼんやりしているのではなく、はっきりとした形で。

「あーあ、大変な一日になるのに、夜更かししちゃったなぁ」

と、僕は頭を掻きながら言った。





「さて、もうそろそろ行かないとね」

僕は皆に出発する旨を伝えた。

「でも、魔王城は南にあるんでしょ?まだ元の道を辿るの?」

とカーラが指摘する。

「いや、そんな事はしなくてもいい」

と、おじいさんの声が聞こえた。

「「どういう事ですか?」」

と、マスカルと僕は声が重なってしまった。

どうやら、マスカルも同じ事を考えていたみたいだ。

そりゃそうだろう、仮に元来た道を辿れば、あの町にたどり着いてしまうのだから。南下するルートは考えてはいたが、かなり時間が掛かるルートだった。

「そんなことせんでも...ほれ」

と、おじいさんは何かを差し出した。

「これは...フルート?」

「そう、聖なる鳥を呼ぶフルートだ。鳴らせば文字通り飛んでくるじゃろうて」

と、一通りいうとどこかへと去っていった。

「魔王を討ち滅ぼし、世界に平和を...」

という声を最後に、おじいさんの声は聞こえなくなった。

「ありがとうおじいさん!...ところで、ラク、このフルートを吹いても大丈夫?」

僕に吹いても大丈夫か聞くのは、恐らく聖なる鳥がくる音色も神聖なものだから、苦しむかもしれない、という事を暗に伝えていたのだ。

「僕は大丈夫だから、吹いてみせてよ」

と、カーラにフルートを吹かせた。

とても心地よい音がなった。

どうやら音色は大丈夫なようだ。

すると、どこからがけたたましい鳴き声が聞こえた。

フルートを吹いてから1分も経たずに、巨大な鳥がやってきた。

大きさは、大体あの時戦ったトロルと同じぐらいか...

カーラが乗り、マスカルが乗り、最後に僕が乗ろうとするも、聖なる鳥は僕が乗ってくるのを嫌がった。

「...しかたない、僕も後々ついていくよ」

と、矢印で翼を作ると、聖なる鳥は飛び立って行った。







は、速い...!

翼が大きいからか、進むのがかなり早かった。

それとも、まだ飛ぶことに慣れてないからか...

僕はたちまち遅れてしまった...

「待ってぇー...」













「魔王様、奴らが来ます」

「門の前に『雷楽(らいらく)のシウ』を置いておけ」

「ですが、シウは...」

「それとも、お前が出るか?」

「...い、いえ」

「ならばシウに伝えろ、門の前で待ち、奴らを殺せと」

「御意...」

「ククク...遂に来るか、我が力よ」

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