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落ちた男の奇妙な運命  作者: 六等星の鷲座
王国ラムライズ編
15/23

静かなる闇

なんとなく週一で落ち着きそうです。

アクセス、ありがとうございます。

...なぜ夜中に書くのかなぁ...?

「とうちゃーく!」

僕達はクロマの町にたどり着いた。

皆が度重なる野宿で疲労している中、異常に力が漲っていた。

この前再構成した足腰は、以前のものよりも強靭になったらしい。

「な...なんなのよ、その力は何処からでるの?」

カチュはへとへとになっている。

ほかの仲間よりも体力がないせいか、杖に支えられているような姿勢になっている。

「それに、あの町で武器を作ったのはいいものの、長剣3本って、全部同じ形じゃない!おかげで不慣れな武器を使う羽目に...」

「まぁまぁ、これも経験だと思って...ひとつの武器に絞っていては、いつまでも強くなれないと思うけどね、リーダー」

と、マスカルがまだ文句をいいたげなカチュを制止した。

「とにかく、クロマに入ろうよー」

カーラも疲労しているみたいだ。

「今回はカチュの家におじゃまするから宿代が浮いて助かるよ」

「ええ、1度決めたことですもの、しっかりとおもてなしさせていただくわ」

僕達はやっと人工物に泊まれることに歓喜した。




「...ねぇねぇ」

「...なに?」

カーラがこそこそと耳のそばで話してきた。

「なんかさ、視線感じない?」

確かに、町の人から妙に視線を感じる。

この短剣が珍しいから?

いや、視線は短剣の方に向いていない気がする。

僕を見ているような...

「...とにかく、カチュの家にいこうか。なんだか嫌な視線だ...」

僕達は視線が刺さる中、急いでカチュの家に向かった...




「だめよ」

カチュの母親ははっきりと言った。

「マ...お母さん!どうして!?」

「その男からは闇を感じるわ。そんな奴を家に入れる、ましてや止めるなんて言語道断よ」

「そんな...」

カチュは落胆した。

「...わかりました、今すぐに町を出ます」

「...え?」

「出るのは僕だけでいい。君達はここに泊まれると思う」

「ラク...」

「大丈夫大丈夫、僕は頑丈だからさ、辛くないって」

僕はそういって、カチュの家を去ろうとした。

「ちょっとまってよ!」

カーラが引き止めた。

「ラクだけ外で寝て、私たちは家に泊まるなんてできないよ!ラクがでていくなら、私もついてく!」

カーラは僕についていくと決めたらしい。

「私も同意見だ、リーダーが外で寝るなんて、仲間として恥ずかしいね」

マスカルも付いてきてくれるみたいだ。

「母さんがこんなにひどい人だとは思わなかったわ!私もラクについていくわよ!」

「カチュ!これはそんな単純な話じゃないわよ!この男についていったら、確実に死ぬわよ!」

「それでも構わないわママ!私の事は私が決めるの!」

「...後悔するわよ、絶対に」






カチュも付いてきて、結局皆で町のそばで野宿するという不思議な光景ができた。

「それにしても、カチュがママって...ふふふ、見かけによらないね」

「べ、別にいいじゃない...!」

カチュは手をぶんぶん振った。

「カチュ、なんかあった時よりもすこし柔らかくなったね」

カーラが言った。

「...そう?あまり実感はないけど...」

そんな話をして、時間はどんどん過ぎていった...



ふと思い出した。

「ねぇ、僕から邪気を感じるっていってたけどさ」

「あぁ、私の母さんが?」

「もう母さんって言わなくてもいいのに」

「うう...!それで!それがどうかしたの!?」

カチュはやはり恥ずかしいのか、すこし口調が強くなった。

「いや、君も僕の邪気を感じるのかなって思ってさ。もしかしたら、僕の事があんまり好ましくないから、嘘言ったのかも」

「...ママは嘘をつかないわよ。ママは町の中でもかなり優秀な魔法使いなんだから」

とすると、僕の中にはなにか闇の力があるに違いない。

だが、闇の力...?なぜ?今まで感じた事はないのに...

「...実際、私も感じるわよ、貴方から黒い何かを」

「黒い何か...」

僕は考えた。

もしかすると、この前再構成した体に関係するのでは...?

「ねぇカチュ」

「何?」

僕はカチュに質問した。

「魔法の使い方を教えてくれないかな」






「具体的には、力を出すというより、自然に体から出ていく感じね、呼吸と似てるわ」

「呼吸...」

僕は体の中にある闇をイメージした。

すると、いともあっさりと魔法を出すことができた。

ただしそれは、教えてくれた火の魔法なんかじゃない。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だった。

「えっ...?」

そばにいた仲間達は皆唖然とした。

矢印は手のひらでクルクルと回り、再び体の中に消えた。

「...今のは...?」

仲間たちから感じる明らかな恐怖。

「なんだこれ...?」

自分自身なにがなんだか分かっていなかった。

ただ一つ確信したことがある。

自分は()()()()()()()()()()()

黒の中にいる。

それだけがわかった。






「ついに開花したな...」

魔王は遠くから魔法を通して見ていた。

「いかが致しましょうか?」

側近は静かに伺った。

「やつに、()()()をくれてやれ」

「御意...」

側近は闇の中に消えた。

「ククク...ここからが正念場だ...」






「はぁっ、はぁっ...」

気がつくと走っていた。

僕が仲間の近くにいると、いつの日か絶対に危険な目に合わせてしまうだろう。

仲間達に迷惑をかけることはできない。

このまま消えてしまおうか...

「...待て」

「誰だッ!」

僕は短剣を抜いた。

「ふふ...落ち着け。私はお前の味方だ」

男は明らかに僕の矢印と同じような気を放っていた。

「その様子だと、お前は目覚めたようだな」

「目覚めた...?」

「そうだ、お前は闇の力を()()()()()取り戻したのだ」

「自らの...?」

「そうだ、お前は人間じゃない。我々と同類...いや...」

男は口を濁した。

「何が言いたいんだ?」

「単刀直入に言おう。お前には仲間がいるだろう?」

「あぁ...それがどうした?」

「そいつらを裏切れ」

「裏切る...?」

裏切る、という言葉に、僕は何かを感じた。

凄まじい嫌悪感を...

「お前に断る権利はない。お前が私と話している間に、魔物の軍勢があの町を襲っている」

「なっ...!?」

「そこでだ。お前が仲間を裏切れば、魔物の軍勢を引かせてやろう」

仲間か、町の人々か...

「くっ...」

「さぁどうする?といっても、選択肢はないがな...」






「くそ...リーダーがいなくなってから、突然魔物が...!」

マスカル達は魔物と戦っていた。

勿論町の人々も戦ったが、なんにせよ数が数倍は違う。

明らかに劣勢だった。

皆疲労していた。町の人々も半ば諦めていた。

「...おい!あれをみろ!」

町人のひとりが叫んだ。

「...あれは...ラク?」

すると、魔物は皆一斉に攻撃をやめ、距離を取った。

そこには、道化師の格好をしたひょろ長い男と、ラクがいた。

「ラク...?」

「...皆」

ラクは静かに語り始めた。

「僕は人間なんかじゃない。こいつらと同じ、魔物らしい。その証拠に...」

ラクは手のひらから矢印をだした。

矢印は黒く光を放っていた。

「おい...あれは...」

「間違いない...あれは闇魔法...!」

町の人々は皆どよめいていた。

「これでわかったろう。僕はここにいちゃいけない。皆を危険な目に合わせるだけだ」

「そうだ、だからこいつは危険な目に会う前にお前らを殺すそうだ」

ラクは相変わらず暗い顔をしていた。

「...しっかりしてよ!」

突然、カーラは大声で怒鳴った。

「ここにいちゃいけない?誰がここに居るなっていったの?危険な目にあう?もう危険な目にあってるよ!でも、ラクのせいじゃないよ。そいつが呼び寄せたんでしょう?」

「...」

「ねぇラク...私はね、あなたにあってから、人生が大きく変わったんだよ。色んな人に出会って、笑って、泣いて...全部ラクのおかげなんだよ!」

「...!」

「そんな人が、私たちを苦しめる訳ないよ!闇魔法を使おうが、魔物だろうが、ラクはラクだよ!」

「カーラ...」

「ふん、遺言はそこまでだ。おい、さっさとやれ!裏切れ!」

「僕は...僕は!」

ラクはもう迷わなかった。

たとえ黒の中にいようと関係ない。

仲間と共にいく。

力が張る...

「オオオオオォォォォォ!!!」

思い切り手のひらを地面に当てた。

すると、魔物の軍勢の真下から、巨大な矢印が飛び出した。

まるで巨大な槍のように...

凄まじい威力をもつ矢印が複数も地面から飛び出した。

魔物の軍勢は一瞬にして全滅した。

「これが...ラクの力...」

皆が圧倒された。

邪悪な存在のはずの闇魔法。

それが、人々を助けた。

「貴様ぁぁぁ!」

道化師の男が怒るのは当然だ。

一瞬にして自分のもつ軍勢がやられたのだから。

「僕は、もう迷わない。これが答えだ」

ラクは左手で短剣を抜き、男の喉笛を切り裂いた。

「がひゅっ...」

そういって男は倒れた。

と、同時にラクも倒れた。

巨大な矢印をいくつも召喚すれば、倒れるのも無理はない。

「ラクっ!」

カーラはラクに駆け寄った...







「ん...」

僕は眠っていたらしい。

「あっ!やっと起きた!」

カーラはずっと見ていた。

「ここは...?」

「カチュの家だよ」

「なぜ...?」

「皆、ラクのこと見直したってさ」

「そうか...ところで2人は?」

「買い出し。ラクのために色々作ってあげるんだってー」

カーラは自分も作りたかった、とボソッと言った。

...カーラが関わってなくてよかった。





「またいつでも来てくださいね」

「ええ、魔王を倒したら、また来ますよ」

僕達はカチュの母親に挨拶をし、町を出た。

「さてリーダー、次の町はどこにする?」

マスカルが訊ねてきた。

「そうだね...次は...チピとか?」

「チピか...別段何か有名なものはないな...」

「なぁんだ...残念」

カーラは心底残念、といったジェスチャーをした。

「おいおい、さっきの買い出しでゴールドが少ないんだ。ムダ使いはなるべくしないように」

...所持金は聞かないことにしよう。うん。

「さて、それじゃ...」

「しゅっぱーつ!...ふふっこれ言ってみたかったのよね」

カチュに言われてしまった。

...まぁ、いいか...







「何?カクルムが?」

「えぇ、少なくとも町のひとつは楽々滅ぼせる程の軍勢を渡しましたが、全滅致しました」

側近は静かに答えた。

「...そうか」

魔王はニヤリと笑った。

「我のもとに来る時が待ち遠しいぞ...ククク...」

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