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たまおの不幸な卒業文集  作者: 花南
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11/06

「最近英田もクラスにくるようになったな」

 何も知らない山田が弁当を食べながら暢気に言った。

「モテるのな、篠宮」

「うらやましいか山田! わはは、英田のくれたプリッツは一本もやらんからな」

「奪わないっての。お前のケチなところ知ってるし」

 篠宮さんはなんでそういう風に人の厚意を踏みにじるような言い方しかできないんだろう。そのうち君みたいな人は見捨てられちゃうんじゃあないかと思うよ。

 僕らが君に善意で施しているとでも思うのか、恨まれたくないんだよ。君が死んだときに僕たちの前に亡霊のように現れてこないように僕たちはお線香のかわりにプリッツを差し出したってことを少しは自覚してくれないかな。

「三芳、プリッツほしいの?」

「いらない」

「やるよ。あんたはいつもジュースくれるし」

「いら――」

「受け取れよ三芳、恨まれるぜ?」

 英田が隣からそう言った。お前は今僕を脅して動かしたね。しぶしぶ一本齧る僕とばくばく食べている篠宮さん。

「いやーそれにしても、最近寒くなってきたな。篠宮セーター着ないの?」

「ああ? あんたほどヤワな躰してないんだよ、山田」

「篠宮セーター持ってないのか?」

 英田は探り方が下手すぎる。山田が隣から爆笑しながら英田を叩いた。

「篠宮は本当に風邪ひかねぇんだよ。さみーさみーと言いながら風邪ひかねぇの、小学校時代からずっと皆勤賞」

「さみーもんは寒いって言っていいでしょ。悪いのか?」

「いや悪くないけど『寒い』って普通儚い響きのはずなのにお前の場合全然儚さを感じないからさ!」

 そういえば寒いって儚い響きかもしれないね。そして篠宮さんは儚さから一番遠い死に方をしそうな気がする。いや……そうであってほしいだけで、篠宮さんは今すぐでも死んじゃうんじゃあないかって思うくらい儚いんじゃあないかともたまに思う。死にかけの蝶が震えるようにはばたく、その羽の動きみたいな、幽かな生命なんじゃあないかって気が、たまにだけどするんだ。それを忘れさせるほどの豪快さがあるけれどもモスラのように強いような気がしない。

「篠宮さんセーター小さくなったのでよけりゃああげようか?」

「マジでくれんの? 三芳」

「古着屋に回そうと思っていたんだけど、男物でよければあげる」

「お前三芳に愛されまくってるなー! 篠宮」

「山田生徒会長、これはあれですね。卒業式の日に体育館裏の約束の木の下でお待ちしておりますというやつですね!」

「篠宮会計係、これは千載一遇のチャンスですぞ。雪見だいふくから発展した愛ですな!」

 そういえば雪見だいふくから発展したような気もしなくもない。餅が歯にくっついて僕は嫌いだったけれども、篠宮さんは雪見だいふく大好きみたい。ふたつとも篠宮さんが食べればよかったのに。

 君が僕にいたずらにほどこしたりしなければ、僕は君にこんなにあれこれあげなくたってすんだのに。

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