第一章Ⅴ 良いこと言っても結局お仕置き
1時間目の体育が終わると男子は再び更衣室へと向かっていた。
その途中茜は、ふと誰かに声をかけられた。それもどこかで聞いたことのあるような声をしていた。
「加賀美くん!ちょっといい?」
茜が振り返ると、そこには昨日茜に中庭で告白をした松枝里緒がいた。
これには茜も驚いてしまった。まさか、彼女の方から自分の元へ来てくれるとは思わなかったのである。
「松枝さん?あ、昨日は本当にごめん!」
「あ、いいのいいの。あれは加賀美君が悪いわけじゃないし…」
やはり昨日のことがあっただけあって、とても気まずかった。
昨日の告白の返事を言っておこうと思い茜が口を開こうとした時里緒続けて言ってきた。
「あのね……昨日の告白の返事のことなんだけどね?
昼休みに屋上に来てほしいの。ダメかな?」
そう言うと茜に対して里緒は猫が餌をねだる時のような目をして見てきた。
茜はその可愛さに不覚にもドキッとしてしまった。
「え?あぁ、俺は構わないよ?」
「本当!?よかった〜。じゃあ昼休みになったらすぐに来てね?」
「うん。わかったよ。」
昼休みに屋上へ行くことを約束して2人はその場を立ち去った。
因みに、このあと茜は制服を着替えるのが遅れてしまい、森本先生にこっぴどく叱られるはめとなった。
2時間目授業の終了後、今度は柚月に話しかけられた。
「ねぇ〜?茜お昼一緒に食べようよ〜?」
「あぁ、悪い俺他の奴と食べるんだ。今日はごめんな?」
今回も茜は柚月に嘘をついてしまった。ばれればこの前の以上のお仕置きがあるはずだろうに。
しかし、昨日は酷いことをしてしまったので、里緒との約束を守るべきだと茜は考えていた。
「え?どういうことよ……?もしかして……他の女に誘われたりしてないわよね?」ギロッ
鋭い目付きで茜の方を睨んだ。それだけでなく、柚月にほぼ言い当てられたことにビクッ!としてしまった。
「ち、違うよ!今日は部活の仲間と食べる約束していたんだよ?」
「それ…本当…?」
まだ疑り深く聞いてくる。しかし、ここで動揺してしまえば嘘だとバレてしまう。とにかく平静を保っていた。
「本当だよ?柚月?」
「わかったわ。貴方のその目に免じて許すけど……もし他の違う奴…とくに女だったら承知しないから?」
「わかった!わかった!」
そう言われると茜はブンブン首を振って頷いた。
これはなんとしてもバレるわけにはいかない。バレたら昨日の比じゃないくらいのお仕置きが……
そう考えると身体全身が震えてきた。
どうにか柚月を説得した後自分の席へと戻っていった。
「あーあ…折角弁当作ったのに……茜のばか……」
柚月は、茜に対して少し憤りを感じていた。それからある一つのことを思っていた。
「まさか…あの女が何かたくらんでるじゃないかしら?」
あの女……おそらく昨日茜に告白した里緒のことだろう。
昨日は柚月がいきなり割ってはいりめちゃくちゃにしたが。
「怪しいわね……」
柚月は違和感を感じ取り何か行動を起こそうと考えていた。
昼休みにになり、茜は一目散に教室を出ていった。
当然、柚月は見つからないように後を追っていった。その尾行のうまさは忍者顔負けであった。
屋上に着くと、そこには里緒がもう既に来ていたのだ。
「こんにちわ。加賀美くん。」
「こんにちわ。松枝さん。俺あの…!」
「まって。まずはお昼食べましょ?」
2人は挨拶をかわした。そして屋上にあるベンチに腰掛けて昼食をとりあえず食べることにした。
「加賀美くんはお弁当持ってきてるの?」
「いや、持ってきてないよ。」
茜は弁当がなかった。茜の家では姉の翠が朝早く仕事へ行くため、作る人がいないのだ。
だから、大抵は柚月に作ってもらっている。しかし今日は里緒のところへ行くなど言えなかったため、もらい損ねたのだ。
「だったら、私のお弁当一緒に食べよ?」
「え?でも悪いし…」
「いいの、少し作りすぎちゃったの。だから遠慮しないで?」
まるで重箱のようなお弁当箱であった。
確かにお弁当は女子が食べるにしてはあまりにも大きすぎるように感じた。もしかして、いつもこの量を食べているのか?
そんなことを、茜は思っていた。
結局、茜はお言葉に甘えて食べることにした。
「うん!美味しいよ!この玉子焼き!」
茜は玉子焼きから手を出していた。その玉子焼きは金色に輝いており宝石のようであった。
「本当?どんどん食べてね?」ニコッ
美味しいそうに食べているの茜に里緒は微笑んだ。
茜もその笑顔に癒されていた。
「(ちょっと……どういうことよ!なんであの女の料理を食べてるの?ていうかあの弁当箱何よ!大きすぎじゃない!?)」
屋上の扉から2人を覗いている柚月がいた。
楽しそうに食べているの茜を見て柚月はどんどん、イライラしてきた。
「(これは…重罪ね……私に嘘つくだけでなく他の女の料理を食べているなんて……ふふふ…ふふふふふ……)」
柚月は不気味に笑っていた。昨日とは比べものにならないほどのその怒気は、あたり一面を黒く染めていった。
そんなことも知らずに2人は笑って食事をしていた。
「(あの女……殺す……)」
ありったけの殺意を込めて里緒を見ていた。
これが女の嫉妬というものか……なんとも恐ろしい……
2人は昼食を食べ終わり本題へと入っていった。
「それでね?昨日のことなんだけど……」
「あぁ、そうだね…。松枝さんには悪いけど、
俺には…柚月がいるんだ。だからごめん!」
茜は精一杯の謝罪の気持ちを込めていった。
「柚月って昨日のあの娘のこと?」
「そうだよ。」
意外にも告白の返事を受けても冷静にしていた。いや冷静に見えているだけであってショックを受けていた。
「ねぇ?加賀美くん、あの娘のどこがいいの?昨日のあの行動を見ている限りいいところが見えないのだけど?」
口調が少しお固くなっており、恐怖を少し感じていた。
「確かに、ああいうところもあるけど……優しいんだよ。とても…」
茜は落ち着いた様子で喋った。
茜の言う通り、柚月は嫉妬深いところがあり大変なところも沢山あるが、それ以上にいいところもある。
あの事件…あの時支えてくれたのは紛れもない、柚月であった。だから今の自分がいる。
茜はそう思っていたのだ。
「茜…。」
扉の向こうにいた柚月にもその言葉ははっきり聞こえていた。
柚月はその言葉を聞いた時顔が赤くなっていた。
「そうなんですか…。やはり優しいですね。そういうところも私は好きですよ?」
「でも俺は無理って言ったけど?」
「何言っているのですか?私は一言も諦める…なんて言ってませんよ?」ニコッ
え?一体どういうことだ?と茜は思っていた。
確かに、今の彼女を降ったはずだが、それを彼女は納得していない。
「あ、あの…俺、彼女が…」
「だから、彼女から奪えばいいんですよ?簡単な話でしょ?」ニコッ
なんと…あまりにぶっ飛んだ言動に茜は全くついていけなかった。
いや、誰もついていけないだろう。普通、彼女のいる男性を奪うなんてまず考えられない。
そんなものは小説の中の略奪愛のようなものだ。
「えぇぇぇ!?ちょっと、それは…」
困惑しつつも、なんとか里緒の行動をやめさせようとした。
しかし彼女は留まることを知らない。
「私だって、並大抵の理由で加賀美くんを好きになったんじゃないんです。」
少しずつ茜の方に寄っていき上目遣いで茜を見ていた。
その姿に茜の胸の動悸は激しくなっていった。
それにこれでは収拾がつかなくなってしまう。茜は困り果てていた。
まさか彼女がここまでグイグイ来るとは思わなかったのである。
すると扉が物凄く音を立てて開いた。
ドゴーン!!!!
「私の茜に手をだすなんていい度胸じゃない?殺されたいの?」
扉を開けたのは、さっきまで隠れていた柚月であった。
当然、茜は柚月がいることを驚き、また嘘がバレてしまった…と悔やんでいた。今日もお仕置きか……茜はそう覚悟をしていた。
「こんにちわ。加賀美くんの彼女さん。貴女には悪いけれど、加賀美くんは私がいただきますから…」
里緒は柚月を挑発してきた。しかし柚月の方も一旦冷静になり
里緒と向かい合っていた。
「ゆ、柚月……」
恐る恐る彼女の方を茜は見ていた。対する柚月は笑った顔で茜を見てきた。目以外だが…
「あら?茜。どうしてここにいるのかしら〜?」
「あ、あのですね…」
「帰ったらお仕置き決定!!」ギロッ
「はい……」
もう茜には逃げ場がなくなってしまった。家に帰れば地獄が待っている。
だが今の状況も充分地獄であった。2人に挟まれるような形でいる茜がなんとも弱々しく見えた。
「そんなことしてたらいつか、愛想つかされますよ?
私にとってはそっちが都合いいですけどね。」
里緒は笑って柚月に対して言ってきた。このままじゃヒートアップしてしまい余計に収拾がつかなくなるだろう。
だが、茜には今の状況をどうにか出来るほどの力は持っていなかった。
時計を見るともうすぐ昼休みが終わってしまう時間となっていた。
「そろそろ時間ですね?私はクラスに戻らないといけませんね。
最後に一つ貴女によろしいですか?」
「何よ?」
「私はどんな手を使ってもあなたから加賀美くんを奪います。
いわゆる宣戦布告です!」ニコッ
それだけいうと、里緒は重箱のような弁当箱をもって屋上を後にした。そこに残っていたのは、茜と柚月だけであった。
「茜………」ギロッ
「な、なんでしよう!?」
「放課後、貴方の家行くから……覚悟しなさいね?」ニヤ
「わかりました………」
これほどまでに怒っている柚月を見るのは久しぶりであろうか。
今日はもしかしたら死ぬかもしれない。そう覚悟をしていた茜であった。
学校も終わり部活は休んで家へ帰ることにした。
柚月と茜は一緒帰ったもののほぼ一言も喋らずに帰った。
やがて茜の家について、部屋へと行くことにした。柚月の顔がすごく怖い。見たら殺されそうな勢いだった。まさか、二日連続お仕置きをくらうと思わなかった。
「茜…ベッドに寝なさい…」
「わかりました…」
そう言うと茜は特に抵抗もせずに言われた通りに行なった。
そうすると柚月はブレザーを脱いでリボンをはずしなんとも色っぽい姿で茜にはいよってきた。
「また嘘ついたわね?たっぷり可愛がってあげるわ」
そうい言うと、柚月の顔がどんどん近づいてきた。
「ねぇ?茜は私のこと好き?」
「もちろんさ。だから付き合っているんだろ?」
「/////」
その言葉を聞くと柚月の顔は真っ赤になっていた。しかし茜は、当然のことを言ったのだ。そうでなければ付き合っているはずがない。
茜が返事をするとキスをしてきた。
「ふぁ……ちゅ…れろ……はぁはぁ……ちゅ………」
「うぅっっ!?柚月?」
かなり情熱的なキスをしてきた。舌まで使って深く熱くキスをしていた。昨日とは比べものにならないくらいである。
それは、まるで何かを必死に求めているようだった。
「貴方は私のものよ…誰にもあげない………あの女にも……私だけのものなの。」
「柚月?」
柚月は低い声でそう呟いていた。
それには茜もとても驚いた。
それと同時に今度は、昨日と同じように首あたりを甘嚙みしてきた。
「うっっ!柚月!そこは……ダメ!……」
しかし、全く柚月はやめる気配がなかった。それどころかますますその行為が酷くなっていった。
「ぺろっ………ふぁ…はぁ……ちゅ……ぺろ……はぁはぁ……」
「お願い!やめて柚月!おかしくなっちゃうよ!!」
「いやよ?これはまた私に嘘ついた罰と、他の女とご飯を食べた罰よ?」ニヤ
柚月は茜の恥ずかしがる反応に喜んでおり、ますます過激になっていった。
もう、茜は抵抗しなくなり、なすがままだった。
するとドアの開く音がした。
おそらく翠が帰ってきたのであろう。
「ゆ、柚月本当にやめて!今はまずいって!」
必死に茜が柚月伝えるものの、全く聞こうとはしていなかった。
「茜〜?帰ってきてるの〜?」
翠が1階あたりでそう言うと、階段を登ってきた。
このままでは姉である翠にこの行為が見られてしまう。
そうなれば、翠にもお仕置きを受ける羽目になる。それだけは避けたかった。
そこで柚月を引き離そうとするがなかなか離れず続けていた。
トントン…
ドアをノックしてきた。
「茜いるの?」
翠が聞いてきた。
「うん、いるよ!」
なんとか平静を装った。しかし、茜は致命的なミスを犯していた。
それは玄関に柚月の靴をそのままにしていたことだった。
「柚月ちゃんもいるんでしょ?」
「え?いないよ。」
柚月のことを隠していた。なぜなら、バレると後々面倒になるからだ。
だが、さっきも言ったように翠には柚月がいることはバレている。
ただの悪あがきなのだ。
ガチャ……
突然扉は開いた。
「あんたたち………なにしてるの!?」
そこにはまるで般若のお面のように怒っている姉翠の顔がそこにはあった。
あーあ、終わった……
心の中で茜は泣いていた。
因みに言うと、茜と柚月はいつも
このようなお仕置きをしているわけではありません。
今回はたまたま柚月を怒らせてしまったことが、原因なのでそこはご了承ください。
まぁスキンシップは適度にしていらっしいますけどね(笑)