第一章Ⅲ 姉の追求そして後悔
茜の姉翠がでてきます。
タイトルの意味なども考えて読んでいってください!!!
「茜…あなたもしかして……あの女……柚月ちゃんのところに行ってたでしょ?」
姉から的確に答えられてしまった。途中の部分はうまく聞き取ることが出来なかったが、今言ったように
茜は柚月の家にいた。
「何してたの?そんなにシャツにシワが入っているし……それに、貴方とは違う匂いがするわね。」
なんと…翠はシャツのシワや匂いから異変を読み取った。恐るべき洞察力…。
しかし、茜は茜でここで素直に今日の出来事いうわけにはいかなかった。
なぜか? そんなの簡単な話だ。 姉にどんなお仕置きをされるか分からないからだ!!
ただでさえ、先程の柚月からの仕打ちで疲れてしまったのに。姉のお仕置きなんてくらえば、加賀美茜という人間は終わりを迎えてしまう。
「別に何もしてないよ!それよりご飯食べよ?
姉さんの料理はやく食べたいなー?」
茜はなんとか姉をこの話題から逸らさせようとした。
とりあえず、ここを耐え忍ぶしか道は残されていない………ここは晩御飯で…
「それもそうね。茜が私の晩御飯楽しみにしてるし、とりあえず……あとで聞くから?」
なんとかその場は凌いだものの、ただ執行猶予があるにすぎない。また後で何か言い訳を言わないとな……
と心の中で茜は思っていた……
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テーブルには料理が並べられていた。今日の献立は
白飯 サラダ ビーフシチュー 唐揚げ というものであった。
どれも見た目から食欲が湧き上がり本当に美味しそうだ!
「いただきます!」
「いただきます。」
2人揃って手を合わせて挨拶をした。
あの時の行為により疲れていた茜はお腹をすかせており、料理にガッツいていた。
「ちゃんと噛まないとダメよ?」
翠は優しく茜に注意をした。
先程から気になっていたのは、この家には茜と翠以外家族がいないことだ。
なぜいないのか?それについてはまた次の機会に…………
「ご馳走様」
「お粗末様」
さっきと同じように2人で手を合わせて挨拶をした。
「さて、ご飯も食べ終わったことだし………続き話してもらおっかな〜〜〜???」
翠の顔は笑顔ではあるものの目は笑ってはおらず、恐怖を感じるものであった。
それにその表情は今日の柚月に似ている……
茜の身体は必死に 逃げろ!! と危険を知らせている。ここはなんとしても逃げなければ………
明日は来ない!!
「お、俺風呂に入ってくるよ!!!!」
思っていたよりも大きな声が出てしまった。往生際が悪いかもしれないが、仕方のないことである。
「こら!まちなさい!茜!」
茜は風呂場へと一目散に行ってしまった。リビングには食べ終わった料理の食器と翠だけがいた。
「茜……………お姉ちゃんに隠し事をして………
ただで済むとは思わないでよね………………」
翠は茜と自分の皿を洗って片付けた。そしてそれが終わると彼女は自分の部屋へと向かった。
「そもそも……あの女はなんなの?私の茜につきまとって……ほんと、殺したくなるわね。」
自分の部屋に入ったからというもの。彼女がいつも茜に見せている姿とは全く違った姿が見えていた。
「はぁ……茜……私の可愛い弟。あなたは私だけのものよ。あの女にも他の女にも渡さない………」
翠は置いてあった写真立ての茜を見ていた。
高校の入学式の時の写真であった。左には茜、右には翠が写っていた。
加賀美翠はどうやら茜に対して弟以上の感情を抱いていた。
しかしそれは恋とは少し違う歪んだものであった。
幼い頃から茜の面倒を見てきた。
はじめのうちは弟として見ていたが…年を重ねるごとにそれは違うものへと変わっていった。
「きっと最後には私を選んでくれるわ。
もし選んでくれなかったなら……………」ニャ
不気味な笑みを浮かべていた翠……
そんな一面があるということを茜はまだしらない………
一方茜は風呂に入っていた。本来ならば風呂に入っていた気持ちよくなるはずであろう。
しかし、自分の身体を見て、そうは感じることができなかった。
「柚月の奴…こんなにつけやがって…
こんなの姉さんにも誰にも見られたくないよ……」
鏡で見る自分の姿。上半身に赤いものがいくつもあった。そしてもう一つ。
左のお腹にある傷。これはあの時の事件のものであった。それは茜にとって触れられたくないものである。
そして今日一日中のことを思い返していた。
「松枝里緒さんか……可愛い人だったな……」
今日、茜に告白してきた女性 松枝里緒今どき珍しい古風で素朴な子であった。
きっと性格もいいのだろうな……
そんなことを茜は思っていた。でも柚月もあの嫉妬深さがなければとても素晴らしい彼女である。
「結局、返事してないや……明日謝りに行こう…
それに返事も…」
あの時の告白。見事に柚月が入ったおかげでまともな返事もしていなかった。
恐らく彼女は傷ついているかもしれない…
茜は後悔の念を抱いた。
やがて風呂からあがり自分の部屋へと行った。
今日はもう疲れており勉強する気分ではなかった。
ベッドへと飛び込みそのまま眠ってしまった。
「すぅ……すぅ…………すぅ…」
寝息をたてており、心地よく眠っていた。
ガチャ………
ドアノブの開く音がした。一体誰が入ってきたのだろうか。だが普通に考えてそれができるのは1人しかいなかった。
「よく眠ってるわね……。寝顔も可愛いわ…」
ちゅ………
軽く茜の頰にキスをした。これは翠のいつもの日課らしいのだ。これをしなければ眠ることはできないとのことだ。
「私にとって…この子がすべて……」
翠はそれだけ言うと自分の部屋へと戻っていった。