第三章 IV 彼女とデートのGW3日目 後編
さて前編に引き続き柚月とデートの茜。
そんな中茜は突然3人の女性にナンパをされてしまいます。
断ろうとする茜に迫る女性たちさてどうなるでしょうか?
柚月の3人を見る目というは、凍てつく氷のように冷たく、そしてとてつもない殺気が込められていた。
そして彼女の発した言葉は、到底女性とは思えないような低くそして怒気のこもったものであった。
そんな柚月を見ていた女性3人は恐怖に身体を縛りつけられてしまった。しかし、そんな恐怖に耐えて1人が重々しい口を開いた。
「あ、あんたこの子の彼女なの?」
「えぇ、私の彼氏ですよ。だから……その穢らわしい手で触れるな!!」
「「「ひっ!」」」
そんな柚月の言葉を聞いた彼女たちは身体がさらに震え上がった。まるで、我が子をいじめられて激怒するライオンのような雄叫びに震えて動けなくなったハイエナのようであった。
思わず、茜の身体に指し伸ばしていた手を引っ込めてしまった。しかし、そんなことをしたからと言って柚月の怒りが収まる訳では無い。
問題なのは、自分の所有物に近づき、触れたことそのものである。
「責任を取ってもらうしかないようね…。茜に触れたその腕、すべて切り落とそうかしら?」
柚月の口からとんでもないことが口から出た。というよりも正気ではなかった。彼女たちは、唖然としていた。いや、柚月の言った言葉を理解出来なかったのだ。あまりにも現実離れで。
だが、柚月は本気で実行しようとする目をしていた。狂気に満ちた目は女性3人の身体の自由を奪った。
3人に1歩ずつ近づいていく。だが彼女たちは、逃げられない。柚月の目が逃げるなと、そう言っているのだ。
「いや…いや!!やめて来ないで!!」
「お、お願い!謝るから!」
「そうよ!あなたの彼氏にやったこと、すべて謝るからどうか助けてください!!!」
彼女たちはそれぞれ違った言い訳をして、柚月を宥めようとした。だが、それはかえって彼女の怒りの炎に油を注ぐだけであった。
「謝る…?その程度で許される思ってるの?笑えるわね…。人のものを穢しておいて。あんまりふざけているようだと、本当に…こ・ろ・すから?」
柚月の光のない冷たい目は彼女たちを捉えた。そして3人のうちひとりの持っていた果物ナイフを取り上げ、それを突き刺そうと振りかぶった時に、声が響いた。
「やめろ柚月!!!」
「黙ってなさい茜!!!私は私の茜に手を出したこいつらを殺さないと気が済まないわ!!」
未だ震えの止まらない茜はなんとか声を絞り出し柚月を静止しようとした。それでもやめようとしない柚月は止めたりしなかった。
しかし……。
「お願いだ柚月…。俺のせいで犯罪者なんかにならないでくれ……。」
茜は悲しそうな眼差しを柚月に送った。最初こそ殺気を出していた柚月も少しずつ落ち着きを取り戻し、ナイフをおろした。
3人は腰が抜けたようにその場に倒れた。冷や汗が溢れており、相当恐怖をおぼえていたのだと分かった。
「はぁ…。分かったわ。茜がそこまで言うならやめてあげる…。」
「ありがとう…柚月…。」
身体の震えがまだ残っている茜は必死に笑顔をつくり柚月を安心させた。その笑顔に柚月は少し顔を赤らめて、ぷいっと顔を背けた。
そして、再び彼女たちを見た柚月は一言言った。
「よかったわね。茜が優しくて…。今回は特別に見逃してあげる。でも、次に茜にちょっかいかけたら……どうなっても知らないわよ…?」
「「「も、申し訳ございません!!!」」」
柚月の殺気の篭った冷ややかな眼差しを見た彼女たちは今度は身体に自由がきいたのか、恐怖のあまりに一目散に退散をした。
そして、彼女たちが去ったこの場には茜と柚月、2人だけが空間を支配していた。
「茜…。大丈夫?何もされてないよね?」
「あぁ、柚月のおかげでなんとか…。」
柚月は心配そうに茜を見つめていた。それに対して、笑顔で答えた。さっきまで張り詰めていた空気は元に戻り、またいつものようになった。柚月の顔は茜に近づくと顔が少し歪み不機嫌な顔をしていた。
「ねぇ、茜。さっきの女たちにも身体触られてたでしょ?」
「…うん…。」
「そう…。ちょっとこっち来て。」
先ほど茜は彼女たちに襲われていたときに、身体中至る所を触られていた。それはもう舐めまわすように。そのことについて柚月に質問された茜は、少し控えめがちに答えた。
少し顔が不機嫌になっている柚月だったが、何かを考えついた彼女は、茜をどこかに連れていこうとした。
「どこに行くんだよ?柚月。」
「いいからついてきて。」
茜の手を引っ張りどこか違うところに連れていこうとした。
そしてついた場所というのは、アトラクションの建物の影であった。ここは死角になっており、ほかの観光客には見えないようになっていた。
そんなところに茜を連れてきた柚月は、茜を自分の顔の正面に向かせた。
「今からあの女たちに穢されたところをぜ〜んぶ綺麗にしてあげる。」
「え!?な、何言ってるんだよ!?俺はどこも穢されてないぞ!?」
突然おかしなことを言ってきた柚月に思わず目が点になってしまった。確かに先ほど、彼女たち身体を触られたものの、どこも穢されてなどいない。それを説明しようとするものの、柚月は聞く耳を持たなかった。
「クンクン…。茜からあの女たちの匂いが…。消毒しないと……。」
「ゆ、柚月!?」
柚月は茜の身体にひっつくとクンクンと匂い嗅いでいた。その匂いは茜の普段の匂いに先ほどの逆ナンパをした3人の女性の匂いまでついていた。
自分の彼氏である茜にほかの女の匂いがついたことが許せない柚月は茜の服を無理やり剥ぎ取り茜の身体を舌で舐めてきた。
「茜からほかの女の匂いがするなんていや……。ぺろ……ちゅぱっ……はむ…ちゅ ……はぁ……ぺろ……ちゅ……ぷはぁ…。」
「だ、だめ!柚月!こんなところでしちゃ!あっ……やめ……あぁ……。」
柚月は茜の身体の上半身を隅々まで舐めたりキスをした。そんな柚月の猛攻に耐えられず思わず茜は倒れてしまった。
しかしそれでも柚月はやめようとはせずにむしろ激しくして言った。
「茜は私のもの……ぺろ……ちゅ……はぁ…誰にも……はむ……ちゅぱっ…ぺろ……渡さない……。」
「あっあっ……。だめ…そんなに激しくしないで…柚月…。頭がおかしくなる…!」
柚月はさっき茜がナンパされた時に、彼女たちが茜の身体を触っていたの見ていた。自分のものを貪るように触っていた彼女たち。とにかく許せなかった。
そして、彼女たちは柚月を侮辱するような発言をした。それは当然本人にも聞こえており、ますます怒りが湧き上がってきた。
だが、そんな柚月よりも茜は怒っていた。そして
「あいつは俺を支えてくれた!!だから今の俺がいる。」
そう言ってくれたのだ。柚月は改めて茜という男を好きになってよかった思った。自分ことを大切に思ってくれているからこそ出てきた言葉である。
だから、そんな好きな人が他人に触られて、そして穢されていくのがとにかく許せなかった。今やっている行動はお前は私のものであると認識させるためのものでもあった。
柚月は茜をすべて自分色に染めたい。そう思っている。彼女自身抑えられないのだ。溢れ出るその感情が今のこの行動に繋がっている。
「茜…。私から離れちゃ…いや……。」
「柚月……。」
柚月の声はどことなく悲しそうであった。なぜだろうか?今日の柚月は少し変である。いつものように楽しげにするのではなく何かを必死に求めていた。
そんな柚月を見た茜は柚月を怒る気にはなれなかったのだ。そして柚月が満足をするまで決してやめたりはしなかった。例え茜が静止しても、柚月は茜を求め続けた。
やがて茜の方も諦めて身を捧げることにした。
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2人が行為を終えた頃にはあたりは少し夕暮れ時になっており、そろそろ帰る時間になっていた。
先ほどまであんなことをやっていた2人だったが、あまりに気にせずにしていた。
「柚月。そろそろ帰るか?」
「そうだね。もう少しジェットコースター乗りたかったな〜。」
「おいおい、もう勘弁してくれよ。」
2人は笑顔で話していた。先ほどのことがまるでなかったかのように。だが、柚月は少し顔を赤らめて恥ずかしそうにしていた。
ついさっきの行為は柚月によれば無意識でやってしまったらしく気づいた時にはいろいろと大変だった。なぜあんなことをしてしまったのか?思い出すたび恥ずかしさがにじみ出てきた。
「柚月。顔赤いぞ?」
「な、なんでもない!そんなことよりはやく帰ろ?」
柚月は茜の手を引っ張って気を紛らわした。そして、退場ゲートをくぐり今日のデートは終了した。お土産が変えなかったことが少し心残りであるがある意味、心に残ったデートになった。
帰りの揺れる電車の中で茜は先ほどのナンパについていろいろと聴取されていた。
「茜、あの女たちにナンパされた時に少し嬉しかったでしょ?」
「いやいや、そんなことないって!」
「ちょっとくらい思ったでしょ?例えば…胸なんか押し付けられたしてね。」
「うっ!!」
吊革に掴まり話していた柚月はジト目で茜を見ていた。そんな柚月の目に冷や汗をたらたらこぼす茜であった。
確かに、身体に胸を押し付けられた時に、柔らかい弾力が身体から伝わってきてとても気持ちがよかった。それについては認める。
だがやっぱり彼女がいるとはいえ、男の本能が身体で反応してしまうのだ。
「この浮気者。今度から離れないように首輪でもつけとこうかしら?」
「いやいや、俺は浮気なんてしてない!ていうか首輪ってなんだよ!?俺は犬じゃねぇぞ!」
悪戯に笑う柚月にやられっぱなしの茜であった。
やがて、人も少なくなってきており、椅子に座れるようになった。空いた席に座った2人はあることについて話した。
「ねぇ、刃物突きつけられた時震えてたけど……。やっぱりあの時のトラウマが…?」
ナンパされた際に脅しをかけるように女性は果物ナイフを茜に突きつけてきた。その感触を感じた茜は突如として力が抜けるように経たり込み、身体が震えていた。
それは、茜が先端恐怖症であるからだった。それも包丁系統のものの。ただ初めからそうだった訳ではない。
すべては中学2年のあの時の出来事からであった。それ以降、茜は包丁はおろか、食事に使うナイフすら使えなくなってしまったのだ。
茜は重たげな表情をしていた。
「あぁ…。あの時のナイフを突きつけられた時に、あの時のことを思い出したんだ…。そしたら身体が動かなくなって……。」
「やっぱりね……。あの震え方は異常だったもの。」
柚月も知っていた。助けに来た時のあの普段からは想像もつかない弱々しい茜の姿。あんなふうになるのは限られた理由しかなかった。
「大丈夫よ。もうあいつはいないから…。それに私があなたを守るから…。だから、心配しないで?」
暗い顔をしている茜にそっと寄り添った。柚月にとっても消したい過去であるものの前に向かねばならなかった。
過去のトラウマで不安定になる茜を支えられるのは柚月だけである。だからこそ、彼女はこうして茜の近くに寄り添い生きている。
「ありがとう。お前には助けてられてばかりだな……。ごめんな…。」
「もう!そんな顔をしないでよ!こっちまで暗くなるから!もっと明るく、明るく!!」
曇った表情になってしまう茜に柚月は元気をだして、晴れやかにしようとした。柚月のその言葉に茜は笑顔を見せ、柚月を見つめた。
そして駅についた2人は改札口をでて、手を繋いですっかり暗くなってしまった夜道を仲良く歩いて帰った。
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柚月を家まで送っていった茜はようやく我が家にたどり着いた。
「ただいま〜。」
暗い玄関で、挨拶をした。すると知らない人間の靴が置いてあった。リビングのほうから明かりが輝いており、姉がいるのが分かった。しかし、こちらに気づいていないのか、ドアを開ける気配すらなかった。
「あれ?姉さんいるのかな?」
不思議に思った茜は靴をぬいでリビングをドアを開けた。
リビングのなかは異様な匂いが漂っており、その匂いというのはアルコールであった。
ソファの方を見るとテレビをつけてビールを片手に爆笑している2人の大人を見つけた。
「あら!おかえり〜!茜く〜ん!!」
「なんだ、遅かったじゃないか茜〜。こんな時間まで何やってたの〜?」
そこにいた大人2人というのは茜の姉翠と茜クラスの担任で翠の親友の森本玲であった。2人は酔っ払っており、服もはだけて、いろいろと見えそうになっていた。
「2人とも飲みすぎだよ。限度があるだろ?」
「なーに言ってんの!!宴はこれからだぁ〜い!!」
「そうだそうだ!!飲まないとやってられないのよ〜〜!!!」
いつもの2人とは違いいろんなものがハッチャケてしまっていた。これ以上何を言っても無駄だと悟った茜は自分の部屋へと行くことにした。
「茜も飲みなさいよ〜!!」
「そうだよ!!これは先生からの命令よ!飲みなさい茜くん!!!」
「おい!何を代の大人が未成年に酒勧めてるんだよ!?森本先生は教師だろ!?」
酔いが回って思考がおぼつかなくなっている2人は法に触れるようなことを平気でやっていた。玲に至っては教師という立場にも関わらず。呆れた茜は2人を無視してそそくさと自分の部屋へといった。
「全く…。ほどほどにしろって言ってるのに…。」
部屋についた茜は翠と玲の不満をこぼしていた。すっかり疲れきった茜はベッドに倒れ込みおもむろにスマホを取り出した。
その中には柚月からLI○Eが来ており、15件と溜まっていた。
急いで返そうとした茜だったが、留守電があることに気づいた。先にそちらを優先させて、電話をすることにした。
番号は見たことないものであり、誰だろうか?と気になりつつもさっそく通話をした。
プルルルル……プルル……ガチャ……
「もしもし、加賀美ですけど?」
「あ、茜?」
「その声は……里緒?」
なんと電話をかけてきた人間というのは松枝里緒であった。しかしなぜ、茜の番号を知っていたのだろうか?おそらく茜から番号は教えていないはずなので、わからないはずだが…。
そんなことを思いつつも今は電話に集中した。
「明日、のことなんだけど……。楠公園ってわかる?」
「楠公園か……。うん、知ってるよ。」
「それなら、明日9時にそこに来て欲しいの。いいかしら?」
「うん、構わないよ?9時だね?」
「そうそう、それならまた明日ね?おやすみなさい。」
「おやすみ〜。」
ブチ…。里緒との電話での会話の内容というのは、一昨日約束したことについてであった。なんでも、ネザーモールで助けてもらったお礼がしたいとのことだ。
デートならさすがにいけないが、お礼をしたいと言うのなら、いいかもしれないと思い承諾した。一体とどんなお礼をしてくれるのだろう?いろんなことを想像した。里緒が綺麗だからといって少しいけない妄想までしてしまった。
「あれ?ところでなんで里緒は俺の番号知っていだんだ??」
あまりに気になってはいなかったが、よくよく考えてみるとなぜ番号を知っているのか?そんな疑問をずっと考えることになった。
「ふふふ。茜の声がよく聞こえるわ…。はぁ…。癒される……。
どうして番号を知っているかだって?ふふ。 ヒ・ミ・ツ。」
里緒はヘッドフォンを耳にセットして盗聴器で茜の声を聞いていた。そんなことを全く知らない茜は、部屋で素の自分というものを出していた。
さて、茜は自分の声が他人に聞かれているということにいつ気づくのだろうか?
こうして、柚月との波乱のデート GW3日目は終わりを迎えた。
今回はとても長くなりました!
なかなか入れたい内容が多すぎてかなり長くなってしまいしたが、どうか読んでもらえたら嬉しいです。
感想などお待ちしております。




