第一章 Ⅰ 彼女は前触れもなくやってくる
この小説は基本三人称視点からの地の文になっております。
また、話によっては一人称視点になったりするためご注意ください。
なるべく会話を多くしたいと思い地の文がスッカスカになる時があるため、気になる方はご指摘してください。
それでは、俺は彼女たちから逃げられない。どうぞ!!
はじめに言っておく。特に男子の諸君だ。
女子は顔が命だ!顔さえよければなんでもいい!なんて思っていないか?
そいつは大きな間違えだ。なぜそう言えるかって?
それは俺がそのことを身を持って経験しているからだ。
女の怖さってやつをね。
だから彼女探しは真剣にやれよ!!!
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「あぁ、学校なんて行きたくないな………」
朝からそんなネガティブなことを言っているこの男、
名前は加賀美茜高校2年生だ。
彼にはどうしても学校に行きたくない理由があった……それは……
ピンポーン!!
家のチャイムがなった。現在、家には茜しかおらず出る人は誰もいなかった。
「茜!!いるんでしょ!?開けなさいよ!!」
ドアをドンドン!と叩いており、開けろと催促してきた。
「ひぃ!まさか、もう家の前に!?」
茜はインターホンを押した主に怯えていた。それは茜が最も会いたくない存在であった。
「ねぇ…どうして開けてくれないの?はやく開けないと、どうなっても知らないわよ……?」
さっきまでの五月蝿い声とは違い女性とは思えないほど低い声で呼びかけてきた。これには茜も命の危機を感じたようで急いで玄関までいき、鍵を開けた。
ガチャ…
「おはよう……柚月?」
茜の正面にいる少女の名前を呼んだ。
その姿は、高校生にしては少し大人びており、髪の毛は栗毛で肩に少しかかるくらい長さだった。
この少女の名前は、皆守柚月茜の幼馴染であり、実は彼女でもある。
「ねぇ?なんではやく開けなかったの?
私って気づいてたでしょ?」ギロッ
柚月は茜に対して強気で聞いてきており、茜を鋭く睨んでいた。
「ご、ごめん!目が覚めなくて!その、ほんとごめん!」
茜は柚月に深々と頭を下げて謝っていた。
しかし、実際のところ最初のインターホンで目は覚めていた。だが、そんなことをいえばますます柚月はヒートアップするだろう。そう考えて少し嘘をついた。
「ふーん、そうなんだ。まぁ今回は許すけど
次やったら、許さないから?」
「わ、わかったよ。約束する。」
柚月の放った最後の一言に悪寒を感じた。まだ暖かい春にも関わらず。それほど茜は柚月を恐れていた。
「じゃあ、さっさと支度して学校行くわよ?」
柚月はさっきまでの態度とは変わり穏やかになった。
茜にとっては学校に行くのは拷問よりもよっぽどいやなことであった。
なぜ?そこまでいやがるのか?それは学校についてからのお楽しみだ。
さて、制服に着替えて支度が終わった茜は柚月と一緒に学校に行った。
「ねぇ?茜いつも言っている事だけど、他の女と仲良くするの禁止ね?したら許さないから…」
「わ、わかってるよ。」
そう彼女はとても嫉妬深く、独占欲が強いのである。自分の彼氏である茜が他の女と話しているだけでイライラや嫌悪感が止まらないのである。
柚月と茜は中学の2年から付き合っているが、茜が他の女子生徒と話をしていただけで怒り、問題を起こしたこともある。
それゆえ茜は周りに人一倍気を使っているのだ。
そんなこんなで学校についた。
茜たちの通う学校は私立 高楼館学園高等学校
地元ではマンモス校として知られており、学力やスポーツにおいて優秀な成績を毎年おさめている。
一学年8クラスもあるのだ。
1、2組は特別進学科3、4、5、6組は普通科7、8組は体育科である
茜と柚月は同じ2年3組のクラスであった。
本来柚月の学力的には特別進学科なのだが断っている。
理由は簡単だ。茜と離れないためだ。
「おはよう、大輔」
「おう!おはよう茜と柚月ちゃん今日も熱いねぇ!」
大輔と呼ばれた人物は茜と柚月に挨拶をしてさっそく冷やかしてきた。彼の名前は堂本大輔茜とは中学からの付き合いである。
「やめてくれよ。恥ずかしいから。」
本当は、そんなこと茜は思っていないのだが、柚月がいるためそんなことは言えなかった。
席につくと隣の女子生徒に話しかけられた。
「おはよう、加賀美」
「あぁ、おはよう内海」
茜に挨拶をしてきた女性、内海葵
ボブカットの黒い髪で女子にしては背が高い。
授業中も静かであまり人と喋らないが、茜とは話をしたりする。
もっとも、それは柚月がいない時の話だが………彼女はテニス部に所属しており特待生や先輩もいる中レギュラーを勝ち取っている。すごい努力家だ。
「そういえば、ノートありがとうな。見せてもらって」
「いいよ、よく授業中寝てるの知ってるから」
昨日の物理の時間は寝てたためノートはほとんど書いてなかった。しかし内海は茜にノートをみせてていたのだ。
ノートを本人に返すと、鞄から荷物を取り出して机の引き出しに入れようとした。
しかし何かに引っかかった。
「なんだ?これは……手紙?」
引き出しには手紙が入っていた。中身を見ると丁寧な字でこう書いてあった。
加賀美くんへ
あなたに伝えたいことがあります。
放課後中庭に来てください。
と書かれていた。これは恐らくラブレターであろう。
読み終えると茜は胸がドキドキしていた。
「ラブレターなんてはじめてもらったぞ。
ど、どうしよう……行ったほうがいいよな…でも。」
普通なら行くべきである。しかし、このことが柚月に知れたらとんでもないことになる。
それだけは避けないと…そう考えて読み終えた手紙を素早く鞄に入れた。
(よし、多分柚月には見られてないはず…)
チラッと柚月のほうを見ていると、他の女子と話をしていた。これで一安心だと思った……
しかし、茜はまだ気づいてはいなかった。
自分の彼女がずっと自分のことを見ていたことに………
「嘘つき………約束、もう破るなんて……
約束を破った茜には罰を与えないとね?………」ニヤ
そう言うと柚月はまるで悪魔のように不気味に笑っていた。
勿論、鞄の中に入れた例のモノもバッチリと見ていたのだ。