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俺は彼女たちから逃げられない。  作者: 石田未来
第三章 GWは人々の心を踊らせる
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第三章 Ⅱ 部活ありのGW 2日目

今回はGW2日目の話です。


あの娘も出てきます。


ではどうぞ!

 GW2日目。この日、茜は部活があった。GWという休みの期間にも関わらず学校へ行くのはいささかノイローゼになる。

 当然、今の茜もそれと同じような状態であった。



「あぁ……。夜更かししたせいか身体が重い……。あと普通にきつい…。」



 昨日の夜、茜は柚月を送っていった後に本屋へ足を運んだのだ。そこでどうやら面白い小説を見つけて買って帰り一晩中読んでいたのだ。

 つまり完全な寝不足状態なので、集中なんてできるはずもない。それに加えて中途半端な睡眠をしたため余計にきついのだ。茜の顔には隈が出来ておりなんとも不健康な顔であった。

 現在、アーチェリー場で練習をしていた。そこには男女部員もいて矢が的に当たる音以外静寂に包まれていた。既に友人の渋木もアーチェリー場におり練習をしていた。



「やぁ、壮一。調子はどうだ?」



 茜は残心ざんしんをし終わったあとの渋木に話しかけた。その声に気づいた渋木は茜の方へと振り返った。



「お、茜か?まぁまぁだな。でも本調子ではないかな。」


 壮一の放った位置の的を見ると、的の端に3、中心付近に2、中心には0であった。普段の壮一はもう少し中心近くに当たるのだが、今回は調子が悪いそうだ。中心に当たっていない。

 少し悔しそうな表情を壮一は滲ませていた。



「お前GWだからってたるんでるじゃないか?」



 茜は調子の悪い壮一に意地悪な質問を投げかけた。その言葉に壮一は少しムッとしたものの、今度は茜に対して悪戯をしそうな顔で見て言った。



「お前の方こそ、彼女とイチャイチャしすぎて腕落ちたんじゃないか?」


 その言葉を聞いて少しドキッとした。なぜなら、最近は色々ありすぎたせいでろくに部活に行けなかった。というか柚月に行かせてもらえなかったのだ。

 そのため、筋トレやランニング以外に特に矢を放つ練習はしなかった。だが、茜にはインターハイベスト4というプライドがあった。そのプライドは壮一の言葉を決してゆるそうとはせず、逆に闘志を燃え上がらせた。



「いいだろ!勝負だ!俺が全部的付近に射てやるよ!」



 茜は闘志の炎が燃え上がった顔をしていた。彼らのやり取りを見ていた。その他の部員、とくに女子部員たちはキャアキャア言って2人を見ていた。



「加賀美先輩と渋木先輩が勝負するわらしいわよ!?」


「え!ほんと!?」


「私加賀美先輩を応援する!!やっぱりあの長身と優しい顔、私の好み!」


「うーん、私は渋木先輩かなぁ〜。やっぱりあの凛々しい顔素敵だもん!」


「というよりもどっちもかっこいいでしょ!?なんたってうちの部ダブルエースなんだから!!」



 後半の女子部員たちのボルテージが上がっていた。彼女達は茜と壮一のファン達であり、部活に入ったのもこの2人がいるのが大きいのだ。

 そんな二枚看板の2人が対決するということになると、部員は自然と注目することとなった。男子部員たちはと言うと、そんな2人を嫉妬の眼差しで見ていた。

「いいなぁ、あいつらばっかり」、「加賀美なんてかわいい彼女いるだろ!?」、「リア充爆発しろこの野郎!!」そんな罵声が2人、特に茜に浴びせられた。

 しかし既に集中モードに入っている茜はそんな言葉など気にもとめなかった。



「ちょっと!!あなたたち!騒いでないで部活しなさいよ!!」



 勝負をするためにポジションにつこうとしていた茜を突然引き止める声がどこからともなく聞こえた。流石に大きな声で響いたのか、集中モードに入っていた茜もハッと気づいてその声がした方向を見た。

 そこには、黒い髪をポニーテールでまとめた、表現するなら巴御前ともえごぜんのような男らしく凛々しいが、女性のような美しさを持つような女性に見えた。また口当たりにホクロがあり、妙色っぽかった。

 彼女の名前は北条凛ほうじょうりん2年4組所属の生徒だ。




「茜くん。前にも言ったよね?勝負はダメだって。ねぇ?」



 ゆっくりと茜の方に詰め寄ってきた。かなりお怒りのようで、茜は苦笑いすることしか出来なかった。何とかして言い訳をしようと言葉を考えた。その間に茜と距離が15cmものさしくらいの長さしかないほどよっていた。



「あはは、やぁ北条さん……。げ、元気?」


「ええ、元気よ。誰かさんの勝手な行為で血圧は上がっているとお・も・う・け・ど?」



 茜はなんとか彼女をなだめようと搾り取った苦し紛れの一言を、彼女は拾ってそして脅しをかけて返してきた。

 茜は冷や汗が半端ではなかった。彼女のアーチェリーの矢のように的を貫く瞳は茜を追い詰めていった。茜はなんとか助けてもらおうとほかの部員を見るものの、さっきまでの騒ぎが嘘のように皆練習に励んでいた。

 因みに壮一も横で人知れず、練習をしており、誰ひとりとして助けてはくれなかった。


「う、裏切り者ーーー!!!!!」



 自分を見捨てた者達に己の感情を込めて叫んだ。



「覚悟はいいわね?あ・か・ね・く・ん?」


 彼女の目は獲物を狩る虎の目をしており、茜を完全にロックオンしていた。もう茜は逃げることなんてできやしない。ただ自分の死を刻一刻と迫っていた…………。


「俺……。死ぬのかなぁ?あはは……。」




 ―――――――――――――――――――――



 北条のきつーいお仕置きをくらった茜はヘトヘトに疲れていた。そしてそんな部活も終わり今から帰るところであった。



「あぁ……。怖かった…。殺されるかと思った…。」


 茜にはさっきのお仕置きというものが、あまりにも衝撃的すぎて軽くトラウマになっていた。現在は部室の隅っこで体操座りをしており、ぶるぶる震えていた。


「ドンマイ、北条を怒らせたお前が悪い。」


 茜の肩をトントンと叩いて軽く労いの言葉をかけた壮一である。壮一も茜との勝負の原因を作ったにも関わらず北条のお仕置きを喰らわなかったことに茜は納得がいかなかった。

 そんな壮一に信じられないような顔をしていた。


「なんで俺だけ北条のお仕置き喰らわないといけないんだよ!?お前も共犯者だろ!?」



「共犯者とは失敬だな!お前が持ちかけてきたんだろ?それにやるとは言ってないぞ?」



 そんなことを言われた茜はさっきまでのことを頭の中で回想していた。確かにその時茜は壮一に勝負を持ちかけた。だが、壮一はやるとは一言も言ってはいない。

 というよりも勝手に茜がはじめているだけであった。


「そうだった〜〜。俺が自分でやっただけじゃないか〜〜!!」



 回想をした瞬間に一気に後悔の念が押し寄せてきた。自分の愚かさに気づいたのか、壁にずっと頭を打ち付けていた。


「じゃあ俺は帰るからな?またな。茜〜。」


 そう言うと渋木は部室を後にしていった。1人部室に取り残された茜は少しため息をついて、自も家に帰ることに決めた。

 アーチェリー部の部室を後にした茜は校門まで校舎を通って歩いて言った。まだほかの部活もやっており、どこにも熱が入っていた。テニス部を見れば内海葵がノックを受けており、その顔は真剣そのものであった。茜はそのストイックさに素直に感心した。



「あれ?加賀美くん?加賀美くーん。」


 誰かから自分の名前を呼ばれた。しかし初めて聞いた声ではなくなんとなく聞き覚えのある綺麗で透き通った声であった。

 声の方を振り返ると、柚月より大きな胸をもつ大和撫子な雰囲気をもつ女性。つまり松枝里緒まつえだりおである。



「松枝さん?どうして学校に?」


「私、茶道部に所属しているの。今日は部活だったけど終わったからもう帰るの。加賀美くんも帰り?」



 想い人である茜を前にして里緒の表情はとても明るくなっていた。そしてこの時里緒はある機会を伺っていた。

 それは茜と一緒に帰るという、彼女からしてみれば最高のイベントのチャンスである。この前のネザーモールでの一件以来前にもまして茜のことを好きになった里緒は何とかして茜にくっつけるような方法を考えていた。

 そしてそのチャンスが今やってきたのだ。



「うん、今から帰るところだよ。」


「じゃあ、せっかくだから一緒に帰りませんか?」



 ここぞとばかりに、茜に提案をした。幸い今は茜の彼女で里緒にとって天敵の柚月もいない。完璧なシチュエーションである。ここを逃すほど里緒は甘い女ではなかった。

 もちろん茜のほうはと言うと、別に断る理由もなかったので三つ返事で返した。

 こうして、学校からの帰路を茜と里緒は帰ることにした。



「松枝さんの家ってこっち方面なの?」


「うんそうだよ!私の家旅館を経営してるの。知ってる?松枝旅館って。ここら辺では割と有名だし、テレビにも出たことあるよ?」



 帰り道2人は他愛もない世間話をしていた。その中で里緒の家は旅館を経営していることを聞いた。

 松枝旅館は結構な老舗であるらしく、たまに有名人がきたりだとか、しているとのことだ。そんなすごいところの家の人だと想像もつかなかった。だが、彼女の佇まいや雰囲気からなんとなく、想像は出来ていた。

 それに里緒から以前もらったあの重箱のような弁当のおかずもどれも上品で素朴な美味しさがあった。だから彼女が旅館の娘ということは不思議でもない。



「へぇ〜、旅館かぁ。いいなぁ、今度行ってみてもいいかな?」



「うん!全然構わないよ!むしろ嬉しいよ!?」



 茜が旅館に興味を持ってくれたことに里緒はとても嬉しくかったのだ。もともと彼女は今のように大声を出したりする人ではなく、も少し控えめにわらったりするような生徒であるのだ。

 ただ、好きな人を前にすると、気分が高揚してつい動作などが大きくなったりしてしまうのだ。

 恋する乙女というのはなんとも面白い。


 里緒の方も茜に質問をしてきた。


「あ、あのね…茜くん。今度のGWのどこかの日空いてないかな?この前のお礼がしたいんだけど……。ダメ?」



 里緒はその場に立ち止まってデート?のお誘いをした。頬は赤らめており、上目遣いで茜を見てきた。

 茜のほうはと言うと、そんな里緒の姿にドキッと思わずしてしまった。だがこんなことを柚月にバレてしまえば、お仕置きなどの問題ですむのであろうか?いや、すまない。すむわけがない。

 きっと殺されるだろうと茜は感じた。怖気ついた茜は里緒の誘いを断ろうとするが、その破壊力のある表情により、無理だとは言えなかった。

 結局、茜は己の未熟さを嘆くきっかけとなってしまった。


「明日は柚月とデートだから…。明後日で大丈夫?」


「うん、大丈夫だよ。」


 茜の提案にニッコリと笑って承諾した。しかし、茜の言った言葉の中に出てきた人物を名前聞いた一瞬、殺意を抱いた表情へと変わった。



「あの女……。茜くんとデートするのか……。そんな楽しんでいられるのも今のうちよ……。皆守柚月。あなたは私が必ず……。」



 1人茜には聞こえない声でブツブツと呟いていた。そんな里緒の行動に少し驚いた茜は里緒に恐る恐る話しかけた。



「おーい、松枝さん?大丈夫?」


「ねぇ、加賀美くん。今度から下の名前で呼んでいい?」



 このままの状況では柚月《あの女》に勝てないと悟った里緒は、苗字というよそよそしい呼び方をやめることにして下の名前で呼ぼうと考えた。

 もちろん茜のほうは、別に構わないわけで うん と2つ返事をした。ただ、自分だけが下の名前を呼ぶだけにはいかないので、茜にも自分のことを下の名前をで呼ぶようにと提案してきた。



「私のことも里緒って呼んでいいよ?」


「じゃあ、その、り、里緒?」



 少し気恥しいかったがせっかく呼んでいいと言ってもらっているので、下の名前で呼ぶことにした。

 茜が里緒を下の名前で呼ぶと、彼女は今までとは考えられないほどの悦に浸っていた。自分の下の名前で好きな人が呼んでくれる。言ってて良かったと里緒は心底思ったのだ。

 そして里緒の方も茜と同じく下の名前で呼ぶことした。



「なぁに?あ・か・ね?」



 ただ下の名前を言っても面白くないと思った里緒は一つ一つの言葉に区切りをつけて茜のことを呼んだ。その破壊力は絶大であり、並の男子生徒ならまず里緒に心を奪われているはずだ。

 いや、彼女持ちの男であっても、里緒になびいていくかもしれないそれほど、可愛いかったのだ。

 茜は照れくさかったのか、凛々しい顔を赤らめて恥ずかしそうにして下を向いていた。





 しばらくは、里緒にペースを握られてしまっていた茜だったが、やがて、別れ道がやってきた。



「それじゃあ俺はこっちだからね。また明後日ね。里緒。」


「うん、あ、まって。肩にゴミがついてるよ?ほら。」



 そう言って茜の制服からゴミらしきものを払い落とした。


「ありがとう。じゃあまたね。」


「うん、またね茜。」



 2人は別れの挨拶を交わして、それぞれの帰路へと進んでいった。



 しばらく茜は歩いていくと家についた。翠の車はないところを見るとまだ帰ってきてないとわかった。

 ドアノブ手をかけてもあかなかったので、柚月によるピッキングはなかったとわかった。そうして、一安心をしたところでドアの鍵を開けて家の中へと入っていった。




 一方松枝家では……。


「ふふふ、これでほぼ毎日茜の声が聞こえるわ。」



 一体どういう意味なのか?それは彼女が茜に行ったある動作によるものであった。



「結構高かったのよ。あの盗聴器。小型で高性能。そして、正確に声を聞き取ることの出来る技術。これで毎日茜の声が…。ふふふ、ふふふ…。」




 彼女が行ったことはあまりにも衝撃的なことであった。その答えは言わずと皆わかるだろう。

 一つ言えることは松枝里緒まつえだりおは彼女である柚月から茜を略奪しようと宣戦布告してきた。つまり想い人を手に入れりためならばどんな手段でもとる女性。




 彼女が普通の恋をする女の子ではないということがなんとなくわかりますよ……ね?



「茜…。好き…。大好き……。貴方がほしい………。」



 この時、茜はまだ里緒りおという女の異常さを本当の怖さを理解出来ていなかった。いや、彼女がそうはさせなかった…………。

里緒の異常さが少しずつ現れていますね。茜は一体どうなるのでしょうか?また次をお楽しみください。



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