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俺は彼女たちから逃げられない。  作者: 石田未来
第三章 GWは人々の心を踊らせる
17/40

第三章Ⅰ 実はやることのないGW1日目

今回は少し飛びますがGWからの話になります。

1日目のGW一体何か起こるでしょうか?


ではどうぞ!

 4月も終わり5月が始まった。そして今日からはGW。そうみんな大好き金の週間だ。今年は五連休という大型連休でもちろん海外に行ったりする人間もいるだろう。

 しかし彼だけは少し違っていた。


 ピーピーピー………


「ふぁ〜、まだ眠い…よし寝よう…。」


 まだGWは始まったばかり、そして学校もなければ部活もないので1日のんびり過ごすことができる、いつも早起が苦手な茜にとってこれほど幸福な時間はなかった。

 しかし……


 ピーンポーン


 家のインタホーンが鳴り響いた。折角ゆっくり寝れていたのに、少し不機嫌になりながらもドアの方まで重い足取りで行った。

 そしてドアを開けると、私服姿の柚月がそこには立っていた。



「あれ?柚月?どうしたの?」



 自分の彼女がまだGWの早い時間帯に茜の家に来ていた。特に昨日約束していたわけではなかったため思わず面食らった。

 柚月は白のノースリーブに黒のスカートそしてスプリングコートを来ていた。そして彼女の特徴的な栗毛のセミロングという自分の彼女ながら綺麗だと思えるような美しさであった。



「柚月。とっても似合ってるよ。」


「本当?嬉しいなぁ。」


 彼氏である茜に褒められて頬を赤く染めて照れていた。あの黒い部分さえなければ柚月は言うことのない素晴らしい彼女なのだが…。茜はそう思ってはいるもののさすがに本人の前では言えなかった。


「柚月、家に上がる?」


「ええ、もちろんよ。今日はそのために来たもの。」



 そう言うと茜は柚月を家に上げてリビングに連れていった。今日は姉である翠は仕事であり、家には居なかった。

 ということは、今この加賀美家にいるのは茜と柚月だけであった。

 柚月はリビングに着くやいなやカバンからエプロンを取り出してキッチンへと向かった。


「茜まだご飯食べてないでしょ?私が作るね。」


「え?いいの?じゃあ、お願いするよ。」



 柚月は茜ににっこり笑った。茜はその顔を見て、柚月の言葉に甘えて朝ごはんを作ってもらうことした。まぁ、その間の時間特にやることも無かったのでテレビをつけることにした。

 朝であるため、ニュース番組が多く殆どGWについてものばかりであった。


「あぁ…。GWか。とは言っても特にすることないからな〜。」



 茜はソファに気だるそう座り天井の方を見ていた。GWとはいえども旅行に行ったりするお金もなければ、家族だって姉の翠しかおらず、翠も仕事で忙しい。正直ダラダラ過ごすだけであった。

 そんなことを思っている茜に柚月はちょっと不満そうな顔をしてきた。


「ちょっと〜、彼女が家にご飯に作りに来てるんだから、いいじゃない。こんなに可愛い彼女なのに…。」



「いや、自分で可愛いって言うなよ。まぁ事実なんだけどさ。」



 茜はちょっと不満そうにしてきた柚月をなだめように言った。傍から見ればただのバカップルにも見えるのだが恐らく憧れるようなものだろう。

 そして、朝ごはんができると茜はテーブルの方へ行きイスに座った。2人は対面して座ると思いきや、まさか横に座ったのだ。


「あれ?こっちに座らなくていいの?」



 おどろいた茜は正面の席を指さしたが、柚月は首を横にふった。


「だってこっちの方が、茜のすぐ近くいれるもん。」



 そんなことを言われた茜は恥ずかしくなり少し頬をポリポリかいていた。そんな姿を見て柚月はちょっと悪戯がしたくなり、どんどん茜の方へと近づいていった。そして茜の右手をしっかりホールドし自分の首を茜の肩に置いた。


「ち、ちょっと、柚月食べづらいよ?」


「大丈夫よ?貴方、左利きじゃない?」


「いや、そうは言ってもね…。」


 茜の前にはオムライスが置いてある。そして、ケチャップで「茜love」と書いてあった。これに関しては少し痛いと感じている。いや、嬉しいのだが……。

 茜の腕をホールドしている柚月だが、茜には少しドキッとすることもある。それは柚月の胸の柔らかさが腕を通して伝わっている事だ。

 柚月がスリスリしてくる度その果実は茜にイケナイ誘惑をしているようである。情熱を持て余す茜は必死に理性を保ち茜は眼の前のオムライスを食し始めた。

 だが、またしても柚月は茜を止めた。


「待って茜。せっかくだから…。私が…アーンしてあげる!」


「え?ア、アーン?」



 思わず拍子抜けしてしまった。まさかのアーンに驚いた。いや、いつもは学校で弁当を作ってきてくれる柚月がやってくれるのだが最近では、里緒が昼休み来るように、柚月とよく茜と食べるか食べないかの喧嘩をする。

 そして結局3人で食べるという状況になっていたためご無沙汰であった。



「そうよ、最近あいつ(・・・)のせいで全然やってないから……。ダメ?」


 ホールドした腕をギュッとして上目遣いで茜を見てきた。茜は今大声で叫びたい。

「俺の彼女は世界一可愛い!(ある一部を除き)」と。流石に本人のいる目の前ではいうことができなかったが、はっきり言ってきた心を奪われるようであった。

 整った顔に抜群のスタイル。彼女は学校でも茜と同じようにモテる。だが当の本人は茜のことしか眼中になく断っている。



「う、うん。じゃあお願いするよ。」



 茜は少し躊躇いがちに言うが、本心ではとてもやってほしいのである。だがそんなのを柚月に見せるのが恥ずかしかったので、あくまで堂々として言った。

 そして彼女はスプーンを手に取り1杯掬って茜の口の前に持っていった。


「はい、茜。ア〜ン。」



 色っぽい声で柚月はスプーンを持ってきた。それをゆっくり口に運んで食べた。

 口には卵とケチャップご飯の旨味が広がりそこには柚月の愛も込められてまさに美味であった。そもそも、柚月は料理が得意であり、どんな料理も美味しいのだが、彼女のオムライスはその中でも特に美味しい。そのうまさは本当に店を出せるのではないかと思うほどだ。



「うん!やっぱり美味しいね。さすが俺の彼女だよ。」


 誇らしげな顔をして柚月を見た。その言葉に柚月は頬を紅く染めて照れていた。それが恥ずかしいのか、柚月は顔を茜の肩に埋めて見せないようにしていた。


「もぅ〜照れるからやめてよ。バカ…。」


「まったく、可愛いな!柚月。」



 顔を埋めた柚月の頭を優しく撫でた。普段学校ではこういうことは控えているが、たまにはいいと思う。

 茜にとって柚月は優しくて可愛い彼女なのだ。まぁかなり嫉妬深い部分もあるかもしれないが、それは誤差の範囲内である。



 そんなイチャラブをして朝ごはんを食べて終わったあとはリビングのソファで2人はくつろいでいた。



「今日は暇だね。何かゲームでもする?」


 今日はGWと言っても特に何もすることはなかった。そもそも、今日柚月が来ることも想定外なので何も計画はしていない。

 そこで暇を潰すためにゲームをしようと提案をした。そしてそれに応えるように柚月は茜の方を見てにっこり笑った。



「いいわよ。でもさ、ただやってもつまらないからさ…。負けたら罰ゲームってことにしない?」



 訂正だ。その笑顔は天使の微笑みというよりも悪魔の微笑みに近かった。まぁ、茜もゲームをしようと言った手前引くに引けなかったため、その条件を呑むことにした。


「いいだろう!じゃあ罰ゲームをかけて戦うゲームはこれだ!」



 茜は高らかに手を挙げて指を指したゲームは大〇闘スマッ〇ュブラ〇ザーズであった。今回は2人しかいないのでストック3のタイマン勝負である。当然スマッ〇ュボー〇は出すようにする。これで三戦して勝ち星が多い方が負けた方に罰ゲームをできるというものだ。



「いくら茜相手でも容赦しないから?」


「それはこっちのセリフだよ?柚月。」


「「いざ、勝負!!!」」



 どこからともなく勝負のゴングの鐘がなった。罰ゲームをかけて茜と柚月は仁義無き戦いをはじめた。

 さて、2人の使用キャラを見ていこう。今回は大乱〇シリーズのXである。茜の使用キャラはキャ〇テン・ファ〇コン。そうあの代名詞ファル〇ンパンチ!でおなじみの、対して柚月の使用キャラはカー〇イである。吸い込めばコピー能力のピンクの怪物。



 どちらが勝つのか!






 ――――――――――――――――――――――



「バカな…。俺のファ〇コンが負けただと!?」


「ふふふ。残念ね茜!というか弱くない!?なんでストレート負けしてるの?持ち主のくせに。」



 言うまでもない、柚月の言った通りの結果である。茜は柚月にまさかのストレート負けを喫した。それだけでない。1度も柚月のストックを減らすことができなかったのだ。

 なんとも情けなかった。そんな結果に打ちひしがれていた茜に柚月はそろそろと近づいて俯いていた茜の顔をしたから覗き込むようにして言った。



「さて、約束を覚えているよね〜?あ・か・ね?」


「は、はい…。なんなりと……。」



 暗い顔をしている茜に対して柚月は悪魔のように微笑みどんな罰ゲームをするか考えていた。

 そして彼女は今がGWということを考えていたある一つのことを考えていた。



「そうね。今折角GWだからさ、どこかの日にデートしようよ〜?」



 柚月にしてはまともなものであったため驚いてしまった。というか、それは罰ゲームなのか?そんな考えを頭の中にあった。

 でも、罰ゲームとなった以上そのことに二言はなかった。茜はその意見を受け入れることにした。



「いいよ。でも明日は部活あるから明後日でいいかな?」


「ええ、いいわよ。やったね!茜とデートだよ〜!」



 柚月はガッツポーズをするくらい嬉しいようだ。最近はあまりデートなんてやっていなかったからではないかと思う。

 松枝里緒の告白や茜の姉翠によりなかなか2人の時間が得られなかったため、いい機会ではないかと思った。


 やがて時間もたち帰りは柚月を家まで送って行った。



 ―――――――――――――――――――――――


 皆守家にて…。



「やったよ!茜とデート、デート!!最近は全くできなかったし…。えへへ。」


 家についてもニヤニヤしている柚月であった。こういう時の柚月は本当に可愛い女の子である。茜のことをただ純粋に好きな女の子で少し嫉妬深いところがあるという欠点もあるがそれもいいのではないかと感じる。

 いや、やりすぎなところもあるけれど…。茜は今日貰ったうさぎのぬいぐるみを抱きしめてソファで寝返りをゴロゴロうっていた。



「お姉ちゃん嬉しそうだね。なんかあったの?」




 1人妄想の世界に入っていた柚月を現実に戻すような声がした。柚月はその方向を見ると、茜と同じ栗毛の髪のツインテールに高楼館学園の制服を着ていた。胸は柚月に比べ少し小さいが貧乳というわけでもない、丁度いい大きさの女の子が立っていた。



「なんだ、観月みずき?部活だったの?」



「そうだよ、楽しそうだね?もしかしてお兄さんのことで?」



 柚月に質問をしてきた女の子の名前は皆守観月みなもりみずき。高楼館学園高校1年生で彼女はテニス部所属であり内海葵うつみあおいの後輩にあたる。

 姉妹と言うだけで柚月と観月は顔が非常に似ている。髪型を同じにしたら、後は区別がつくといったら胸くらいであろう。

 もちろん、観月は姉の柚月の彼氏である加賀美茜かかみあかねのことを知っている。彼女も茜の幼馴染であるからだ。観月は茜のことを兄のように昔から慕っていたので今でもお兄さんと呼んでいる。



「ええ、今度デートに行くのよ。久しぶりだから嬉しいの!」


「いいなぁ。お姉ちゃんは彼氏がいて…私いないし…。」



 楽しそうにしている柚月とは裏腹羨ましそうな顔をして柚月を見ていた。彼女は部活であるテニスに打ち込みすぎて男の気配など全くなかった。

 彼女も年頃で彼氏が欲しいと思っているのだ。


「お兄さんが彼氏だったらな…………。」



 観月は柚月には聞こえないような小さな声でそう呟いた。彼女も実は茜のことが好きなのである。そこについてはまた次の回で話そう。





 まだまだ、色々とありそうなGW。今日はその1日目であった。







実は柚月に妹がいました。さてどんどん登場人物は増えていきますが、どうなってきますかね?


2016年での更新はこれが最後です。皆さん良いお年を!



次もお楽しみください!



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