第二章Ⅴ割と地獄な土曜日曜part4
今回は日曜日ネザーモールにあるショッピングモールにて。
なんとあの娘が出てきます。
それではお楽しみに!!
さっそくショッピングモールの方へと足を運んでいった加賀美姉弟まず最初に今日特売日の食材の調達であった。
2人しかいないとは言え無駄遣いはできない。安く買えるものは安く買ったほうがいいという翠の考えで特売日の時はよく買い物に付き合わされている茜であった。
「茜。準備はいい?これから辛く険しい戦いになるけど、生きて帰ってきてね?」
「うん、またこの場所で会おう、姉さん。」
茜は翠に向かってサムズアップをしてこれから向かう特売日売り場という名の戦場へと向かって行った。
翠も同じようにそれぞれの売り場へと足を向けていった。
「さぁ!やるぞ!全部俺がとってやる!!」
茜はそう意気込んで特売品売り場へといき、その始まりを待っていた。
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「ふぅ、まさかおばさま達から譲ってもらうなんて…。驚いたな。」
そう、特売品セールで茜はある出来事があった。それは特売品売り場において、茜が戦場に赴いた時に、そこにいたおば様たちから気に入られて、物を譲ってもらったのだ。
またそれだけでなく、道をゆずってもらい、よりいいものを手に入れることができた。おば様たちはみんな乙女な顔をしていたのだ。まぁ、茜は元から顔が整っており、背も高いため俳優のような雰囲気を出していたのだ。
多分こんなところを柚月に見られたらやばいことになるかもしれないが…。
「ふぅ、まだ集合まで時間あるし、どっかぶらぶらしてよっかな?」
翠との集合時間はまだまだであり、特にすることもなかったので、モール内を荷物を持ちつつぶらぶらしていった。
「やっぱり加賀美くんだわ。あと付けてよかった!それに柚月さんもいなし。」
茜をずっとつけていたこの女性。先週、茜に告白してきた松枝里緒その人であった。
美しい黒髪のハーフアップに清潔の感じのある白のワンピースに黒のカーディガンというファッションであった。化粧も薄いがそれが飾りすぎてなくとても可愛らしかった。
現在彼女は茜のあとを約5m後ろから尾行していた。その姿はなんともシュールである。だが、彼女にとってはそんなことはどうでも良かった。想い人である茜に会えたそれだけで充分であるのだ。
「どこ見るんだろう?加賀美くん後ろ姿もかっこいいなぁ〜。」
茜の後ろ姿をつけている里緒は、その後ろ姿だけでも満足していた。高い身長に服の上からでもわかる鍛え上げられた身体。そして、服のファッション、里緒からしてみれば全てがかっこよく見えるのだ。
同じ学校の同級生が自分をストーキ……後をつけていることを知らない茜は、本屋や服屋など自分の興味のあるところを趣き暇をつぶしていた。
それでもまだ集合時間にならないので、ぶらぶらしていた。
そこで、茜はふとある店で足を止めた。その店というのは、動物のぬいぐるみの売っている店であった。
「柚月ぬいぐるみ好きだもんな。何か買っていこうかな。」
そう言うとぬいぐるみ屋へと足を進めていった。もちろん、後をつけていた里緒も茜と同じようにぬいぐるみ屋で足を止めた。
「ぬいぐるみ屋さんって…もしかして加賀美くんってこういうの好きなのかな!?」
※茜ではなく柚月です。
いつもキリッとしていてかっこいい茜がぬいぐるみ好きというギャップを感じたのか、里緒は1人で興奮していた。
ただ彼女の想像は残念ながら間違っており、ぬいぐるみが好きなのは茜の彼女柚月であった。
「よし!私も入ってみよう!加賀美くんがどんなの好きなのか知っておきたいし。」
店の中へと入っていった茜を追いかけるように、里緒も茜にバレないように入っていった。
中に入っていくと茜は、うさぎのぬいぐるみをしみじみと眺めていた。そんな姿を見ている里緒はうさぎのぬいぐるみを持っている茜を見てさらにときめいていた。
「加賀美くんが、うさぎのぬいぐるみを持ってる…。うさぎのぬいぐるみが好きなんだ!」
※茜ではなく柚月です。
普段見られない茜の一面を見られた里緒はもうお腹一杯であった。
一方、茜の方はうさぎのぬいぐるみを見て柚月が好きなものなのか吟味していた。うさぎの耳から足の裏まで、柚月が気に入るか、入念に調べた結果、買うことに決めた。
そのうさぎのぬいぐるみをレジへと持っていき、お金を払った。そして店を出ていき、姉の翠との約束の場所へと向かっていった。
「今度はどこいくんだろう?」
先程からずっと茜の後をつけている里緒。既に今日ここにきた目的など忘れてしまっており、茜のストーキングに熱中していた。
茜の後をずっとつけていた里緒。しかし突如誰かに止められた。
「ねぇねぇ、そこの君〜。可愛いね〜俺たちと〜遊ばないかい〜?」
いかにもチャラい男3人に絡まれてしまった。1人は、やたらチェーンを身体に巻き付けており、1人はピアスをやたらつけている男、そしてもうひとりは髪の毛を虹色に染めており正直気持ちが悪かった。
里緒はチャラい人間というのが心底嫌いなので、丁重に断ることにした。
「私、友達と待ち合わせしてるので。」
里緒は嘘をついたが、その場を凌ぐためであり、いい判断であった。しかし男達も諦めようとはせず、ぐいぐいと里緒に迫ってきた。
「じゃあいいじゃん。その子も入れて一緒に俺たち遊ぼうよ〜。」
「あの本当待たせるといけないんで。」
里緒は男達を心底うざったいと思っていた。このままでは茜を見失ってしまう。その場から立ち去ろうとすると、チェーン男が里緒手を掴んで離そうとしなかった。
「おいおい〜、つれないな。いいから一緒に遊ぼうぜ。」
「離してください!あなた達とは遊びません!」
必死に腕を降って振り話そうとするが、そこは男女の筋力の差があり、全く振りほどくことができなかった。
無理やり連れていかれようとして誰か助けを求めていたが、見事に死角になっており人目につかなかった。
「いや!いやだ!」
「いいから、来いっての!この女!」
嫌がる里緒を無理矢理でも連れていこうとしている男達、するとチェーン男が誰かから肩をトントンっと叩かれた。
「なんだよ!?邪魔すんじゃ……ぐほっ!!」
チェーン男は後ろを振り返り肩を叩いた本人に向かいキレようとしたしかし、その言葉を発するより前に肩を叩かれた男に顔を思いっきり殴られた。殴られたチェーン男は地面に勢いよく倒れ込んだ。
「おい!てめぇ!なにもんだよ?」
「俺はその人の友達だ。」
虹色髪男に向かってそう言葉を発した男。なんと、さっきまで里緒がストーキングをしていた想い人である加賀美茜その人であった。
茜を顔を見た里緒はあまりにも驚いて、言葉が出てこなかった。
いや、そこにいる茜は自分の願望が見せている錯覚だと感じていた。
これは幻想だ。そう思って目を閉じてもう1度見るがやはりあの茜であった。
「加賀美くん?」
「やぁ、松枝さん。もう大丈夫だよ。今助けるから。」
茜は捕まっていた里緒にニッコリと安心させるように微笑みかけた。自分を助けるという言葉に、心を打たれてさらに自分を安心させようとニッコリと微笑んだ茜に里緒の顔は真っ赤に染まった。
好きな人が自分を助けようと必死に戦ってくれる。そんな漫画のような出来事に、彼女は茜という人間を好きになってよかったと改めて認識させられた。
「この野郎!邪魔すんじゃねぇよ!」
さっきまで倒れていたチェーン男が立ち上がり茜に殴りかかろうとしていた。また正面からも茜を殴ろうとピアス男が殴りかかってきたが、アーチェリーをやっているその抜きん出た視力は彼らのストロークなど遅く見えていた。
茜は2人の攻撃をひらりと交わすと、殴りかかってきた2人はお互いを殴ってしまい、ダウンしてしまった。
「こいつ、生意気な!」
今度は虹色髪男が、茜に向かって殴りかかってきた。今度はさっきの2人とは違い、実に鋭いパンチがきた。
流石に余計れないと思ったのか、右ストレートを自分の右手で受け止めた。そして自分の体を横にひねって、左肘で男の背中を思いっきり殴った。
当たりどころが悪かったのか虹色髪男はその場に膝をつき悶絶していた。
そして茜は男達を強く睨み一言言った。
「次彼女に手を出したら、お前ら…ただじゃすまないからな?」
「「「す、すいませんでした!!」」」
茜の激情した表情を見て怖気付いたのか、そそくさとその場を立ち去っていった。
そして茜と里緒2人だけがその場に取り残されていた。
「松枝さん。怖かったよね?もう大丈夫だよ」
茜はさっきと同じように、里緒を安心させるためにニッコリと微笑んだ。里緒も流石に男達に無理やり連れていかれようとしたことが怖かっただろうが、茜のその表情を見た瞬間に思わず泣いて茜の胸に飛び込んできた。
「ううっ…。怖かったよ〜!!!!加賀美くんが来てくれなかったら私…。」
茜に抱きついた里緒茜の胸の中で泣いていた。茜は本当のところ抱きしめたかったのだが、一瞬柚月のことが頭をよぎり抱きしめ返すことはできなかった。
その代わりに、里緒の頭を落ち着くまでずっと撫でていた。
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そんなこともあったが、買い物も終わり、里緒と一緒に翠のところまで行くことにした。また、さっきみたいなナンパ野郎に会わないようにと茜なりの気遣いであった。
まぁ茜は予定時間をオーバーし、それだけでなく、里緒を連れていたことから翠から激しく詰め寄られてしまった。
なんとか必死に説明をした茜は、お咎めは受けずに終わることが出来た。
もう日もだいぶ傾いてきており、そろそろ茜たちは帰ることにした。ちなみに里緒は電車で来ていたらしいので、せっかくだからといって翠が里緒も乗せて帰ることにした。
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里緒の自宅にて
里緒は今日の出来事を思い出していた。茜の意外な一面や(実際はぬいぐるみ好きなのは柚月)茜にナンパから助けてもらったこと、いろんなことがあった。
「加賀美くんかっこよかったなぁ。あのナンパから私を守ってくれたし。」
好きな人から守ってもらうというたまらない出来事の余韻に里緒は浸っていた。そして茜になでてもらった頭。今考えても顔が真っ赤になりそうであった。
「でも友達か……。」
茜に助けてもらう際、あのナンパ3人組に向かって言った言葉。実際のところは俺の彼女だ。なんてことを言って欲しかったのだが、今回は助けてもらったためそんなわがままは言えない。
しかし、今から、茜に俺の彼女だと言われるようにしていけばいい話なのである。
「やっぱり加賀美くんを私のものにしたい。あの女から奪い取りたい。今度はもっと撫でて欲しい。加賀美くんにもっと近づきたい。」
彼女は茜を自分のものにしたいという独占欲に駆られてきた。ぬいぐるみを見て買った茜。自分に優しくしてくれた茜。助けてくれた茜。
いろんな茜を自分だけのものにしたい。先週した告白の時では、ただ単純に好きな人の彼女になりたい。そう思っていただけだったのだが、この時から彼女の中の茜への思いが少しずつ形を変えていった。
「はぁ、はぁ、茜くん……大好きだよ……。」
里緒の中での茜というものが少しずつ変わっていきます。さぁ一体茜はどうなっていくのでしょうか?
次もお楽しみください。
 




