プロローグ
どうすれば彼女のことを忘れられるのか、そればかり考えていた。
「あんまり引きずるなよ。誰でも一度は通る道なんだからさ」
「新しい出会いとか、何かキッカケがあればすぐに気持ちも変わるって」
クラスメイトたちからのフォローはありがたかったけれど、俺の心にはまるで響かなかった。
中学三年の夏、俺はフラれた。
失恋なんて生まれて初めてだった。
今まで女の子に告白なんてしたこともなかったし、何より、その子以外を好きになったことなんてなかったから。
正直なところ、そこそこ自信はあったんだ。
彼女とは小さい頃から二人でよく遊んでいたし、そりゃまあケンカもすることはあったけれど、それでもずっと一緒だったから。
だから、断られたときは素直に受け入れることができなかった。
今までの思い出はすべて夢か幻だったのではないかとさえ思った。
――ごめんね。旭くんのことは好きだよ。でも……。
彼女は言っていた。
――私たちは多分、このままの方がいいんだと思う。
友達から恋人に変わってしまうのが怖い、と彼女は言っていた。
大切な人だからこそ、今の関係を壊したくないのだと。
彼女は時々難しいことを言う。
俺にはわからなかった。
俺は彼女が好きだから、付き合いたいと思った。
だから告白した。
けれど彼女は、好きだからこそ、俺の申し出を断ったのだという。
なら、俺は一体どうすれば良かったのだろう?
彼女を好きになるべきではなかったのか。
最初から仲良くなんてしなければ、認めてもらうことができたのか?
わからない。
考えれば考えるほど、彼女の心がわからなくなっていく。
それでも俺は彼女のことが──日和のことが好きだったんだ。