ディケイド
この作品で扱う「クロスオーバー」、「異世界」などと言ったキーワードや、劇中における表現や空気感で連想した方もいらっしゃるかも知れませんが、まずW×Wという作品を語る上でどうしても仮面ライダーディケイドの存在を切り離すことが出来ません。というのも私自身仮面ライダー、特に平成以降の作品には大きな影響を受けており、W×Wを読了された方や他の作品を読まれた方々の中には私が仮面ライダーから非常に強い影響を受けている、というのがご理解いただけるのではないかと思います。
まずこの仮面ライダーディケイドがどういった作品なのか簡単に説明させていただきますと、ディケイドはその直訳「十年」から察せられる通り平成仮面ライダーの十周年記念作品です。ディケイドは、今までの十年間の仮面ライダーの姿に変身する力を持ち、今までの仮面ライダーのいる世界を巡りながら旅をする、という物語です。ここまででもう察していただけたかと思いますが、言ってしまえばW×Wは私にとっての仮面ライダーディケイドということになります。実際どうしようもない程に強い影響を受けており、共通点はいくつも存在します。盗作、というわけではありませんがディケイドを切り離して語ることは少し難しいのではないかなと。
しかしこの仮面ライダーディケイドという作品、非常に惜しい作品でありました。今までの仮面ライダーに変身する、今までの仮面ライダーが登場する、他にも斬新な要素の多い作品で、放送当時は毎週とても楽しみに見ておりました。そもそもこのディケイドの影響で他の平成ライダーを見てしまったようなものですので、私の中の一つの原点とも言えました。ですが、仮面ライダーディケイドという物語は実質的な「未完の作品」だと考えています。本編で張られた伏線を回収しないまま、話はどんどん昭和ライダーや当時の戦隊ヒーローを交えての「お祭り騒ぎ」と化していき、そのまま物語はテレビ放映では完結せず「劇場版へ続く」と発表された衝撃は今でも忘れません。その上テレビで流された劇場版への期待を煽るシーンのほとんどが映画本編では使用されておらず、あろうことか「ディケイドに物語はありません」という爆弾発言を落としてからお祭り騒ぎのまま仮面ライダーディケイドという作品は終了する形となりました。
当時、これには非常にガッカリしたものです。アレで良い、別に構わないという方には私の文面は少し癇に触る文章になっているかと思います。申し訳ありません。
仮面ライダーディケイドが本当に大好きだったからこそ、ああいった形で終わってほしくなかった、という気持ちが強く、怒るようなことはなかったものの今でもしこりのように残っています。他の特撮ファンの方々にもそういう気持ちの方は多いのか、ディケイドを望んだ形で完結させた二次創作小説等も拝読いたしました。
W×Wは、私の中で仮面ライダーディケイドに対して出した一つの答えなのではないかなと思います。
ディケイドに憧れ、影響された私の中でディケイドは大きな存在です。だからこそ、あのような形で終わったことは非常に口惜しく感じています。その結果として、私はW×Wを完結させることには強くこだわっていた気もします。私にとっての十番目、クロスオーバー、ディケイド。W×Wを完結させることで、私の中でディケイドを終わらせることになったのかも知れません。決してそんなことを最初から考えていたとは思いませんが。
実際完結して見れば、W×Wはディケイドには遠く及びません。色々な意味でディケイドの背中は遠く感じますが、ディケイドの背中を追い続けることにあまり意味はないのかなと今は思います。
結局W×Wは、過去作とのクロスオーバーによるお祭り騒ぎにもなり切れず、新規読者の方々にも広く読んでいただける形にもなれませんでした。過去作との繋がりをなるべく切るようにしているようでいて、どこまでも切り離せていない。特に「落ちていた魔導書。」（以下落ち魔）が良い例で、落ち魔に登場する主人公である桧山英輔は必要以上の待遇を受けていたとさえ感じます。
桧山英輔はレギュラーキャラとして参加後、本編以上に強化され、本編以上に激しく戦い、本来の主人公である坂崎永久を食ってしまうような場面も多々あったかと思われます。本編第三章にあたる落ち魔編では本編であやふやなままだった部分を掘り下げ、他の作品がパラレルワールド扱いだったのに対してオリジナルの世界観で語られており、シナリオ構成も永久以上に英輔ばかりを立てる形になっています。更に最終章では落ち魔のキャラクターが他の作品以上に登場しており、やはり落ち魔は他の作品に比べてW×W内では優遇されていました。こういった落ち魔既読向け（既読であればその部分を違和感なく読めるわけでもありませんが）要素を知らず知らずの内に強く押し出してしまっており、そういう意味で新規読者を意識出来ていない作品となってしまっています。
